軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第49話、露呈する問題

ヒュドラ退治で階下がお祭り騒ぎの中、エイブルの町の冒険者ギルド、そのギルド長執務室。銀の翼商会のソウヤ、Bランク冒険者のドレイク、そしてギルド長ガルモーニが、引き続き会談中。

「――ダンジョンで商売をする際のルールを、今のうちに作っておくべきかもしれんな」

ガルモーニは難しい顔で言った。ソウヤは片眉を吊り上げた。

「ダンジョンで商売するなら、冒険者ギルドに許可をとらないといけない、とか?」

「そうだな……。許可以前に、ダンジョン内で起こることについては、ギルドのほうで把握しておきたい、というのもある。冒険者が『中で商売してましたがいいんですか?』と問い合わせした時とか、こちらでどう答えるか、とかな」

「通報は勘弁ですね。悪いことをしているわけじゃないし」

「それも問題だ」

ガルモーニは続けた。

「ダンジョン内は、基本冒険者しかいない。それをいいことに、禁制品の取引とか、犯罪行為をされても困るからな」

しませんよ、そんなこと――ソウヤは思ったが、口に出したところで、それを信じてもらえるかどうかは別の問題だ。

ドレイクが口を開いた。

「ソウヤはアイテムボックスを持っているからな。入り口で荷物検査をしたところで無駄だろうし」

「そもそも、アイテムボックスのことを言ったら、他にも持っている者もいる。商人に限らず、そいつらだって犯罪行為をしようと思えばできる」

ガルモーニは、それとなくソウヤをフォローした。アイテムボックスがあるから、イコール犯罪ではない。

商人をやる上で最大の長所を潰されたら、もう話にならない。

「ただ、できれば扱う商品については、オープンにしてもらえるとありがたい。そもそも見つかってヤバイものは、銀の翼商会は扱っていないだろう?」

「少なくとも、犯罪に関するものはないですよ」

ダンジョンなどでの拾い物が中心ではあるが、これは冒険者ルールである拾ったモノは、拾った人間のモノからは外れていない。どう扱うかは拾った者次第であり、それを換金したり、自分で使うことは犯罪ではない。

「まあ、犯罪をしないなら、それでいいんだ。ソウヤたちは冒険者でもあるわけだから、ルールを逸脱しない限りは、冒険者ギルドで手助けできることがあるかもしれない」

それが冒険者ギルドである。

というわけで、さっそく、ソウヤは銀の翼商会が扱っている品について、ギルド長らに説明をした。ダンジョン内で提供した串焼き肉を、酒のつまみに、男三人で雑談感覚で、アイテムボックスから出した現物を確認していく。

拾い物武器や防具、ダンジョン内の魔石を中心にした鉱物、薬草、ポーション、料理などなど。プトーコス商会の家具や雑貨も出したら、ドレイクは苦笑していた。

「本当にアイテムボックスは何でも入るんだな」

「雑貨類はダンジョン向けではないですが、小集落を行商するんで、そっちで需要があるかな、と」

「実際のところ、何が売れているんだ?」

「今のところは、料理系ですね」

「ああ、この肉の味付け、焼き加減もいいな。……もっとがっつり食えるものはないのか?」

「うちは料理屋じゃないんで」

ソウヤは皮肉った。多少料理の心得はあっても、プロの料理人ではない。

ガルモーニが、机に置かれたポーションを指さした。

「ダンジョンで負傷者に与えたポーションは、とても効果が高かったが……普通のポーションと違うのか?」

実際にポーションの効果を見ていたギルド長である。ソウヤはどう答えたものか考え、そして言った。

「うちの商会のメンバーが作った自家製ポーションに、ちょっとしたレア素材を配合したものですね」

「レア素材とは?」

――はい、その質問、予想してました!

「企業秘密……と言いたいところですが、……他には言わないでくださいね」

そう前置きしておくソウヤ。

「ヤバイ薬品が入っていると誤解されると困るので、お二人には教えますが……実は、とある竜のウロコを手に入れまして、それを茹でて、染み出てきた液体をポーションに混ぜたんです」

ミストさんの残り湯――嘘はついていない。

ソウヤの言葉に、ギルド長とベテラン冒険者は、なるほどと唸った。

「ドラゴンか……上位のドラゴンの血には、すさまじい魔法効果があると聞く」

「なるほど、ドラゴンの鱗から抽出した成分が入っているのか。そりゃ効くかもしれんな」

と、すんなり納得してくれた。ドラゴン自体レアだが、伝説や噂については、それこそ色々あるので、割と適当なことを言っても信じられてしまう件。

「まあ、本当はドラゴンといっても眉唾なんだが、ソウヤなら……」

「ああ、ヒュドラを倒したのを目撃したからな。嘘ではないだろう」

先のヒュドラ退治の活躍が、ソウヤの話に信憑性を持たせたようだった。ガルモーニはポーションの瓶を手にとった。

「どれくらいあるんだ? できれば、こちらでもある程度、欲しいのだが……」

「俺も。非常時のために持っておきたい」

「……あまり多くないですね。まだしばらくは作れるのですが、鱗から成分が抽出できなきゃ終わりですから」

ソウヤは眉間にしわを寄せて、腕を組む。……調達自体は、ミストを風呂に入れれば手に入るので、実は楽に入手できる。

ポーションの生産自体は、セイジが手作業で行っているから、一度に大量に作れない。仮に大量に作れても、そうなるとポーション関係業界に多大な影響を与えてしまうことになるので、ソウヤは最低限、あるいは緊急事態の時を中心に限定するつもりだった。

という感じで、竜の成分入りポーションは限定販売と表明し、ガルモーニたちにも了承をとった。

そして話題は武器のレンタル話に。ミストが魔力生成で作ったブロードソードを試供品として彼らに見せる。

しげしげと物を確かめていたドレイクは眉をひそめた。

「綺麗過ぎるな。……これは本当に魔法なのか?」

「ええ、時間経過で消滅します。返却しなくても勝手に消えます。あくまでレンタルなので、安くできます」

「うーん……どう思うギルド長?」

「正直言うと、ルールをきちんと設けないと難しいと思うぞ」

ガルモーニは難しい顔。あまりこのレンタルには好意的ではなさそうだ。

冒険者ギルドでも初心者向けに武器レンタルをしているというが、それと競合するからだろうか。

「戻さなくていいし、時間制限があるのは、返却せずに懐に収める輩の対策になる。が、メリットは同時にデメリットにもなる」

「と、言いますと?」

「たとえば、君のところで借りた武器を、武器屋とか他の冒険者に転売して、金を得る詐欺だな。レンタル代より高値で売れれば、それで儲けだ。転売したレンタル武器は、時間経過で消えてしまうから始末が悪い」

「……それはマズいですね」

なんてこった――ソウヤは顔をしかめる。さっきドレイクが『綺麗過ぎる』と言った。正規の武器屋なら怪しむかもしれないが、冒険者とか素人に直接売る場合、詐欺に引っかかる可能性は高くなる。

「返却しなくていいから、その武器がどうなったか、ソウヤたちもわからないだろう?」

時間制限で消えたのか、なくなったのか、転売したか。……確かに指摘のとおり、ソウヤたち銀の翼商会にはわからない。

「……とてもよろしくないですね、これは」

「うん。まあ、そのあたりの対策を詰めてクリアしていけば、レンタル武器も悪くない」「その通りだソウヤ。ダンジョンで武器を失い、繋ぎとして必要とすることもあるからな。あれば助かる者もいるだろう」

ドレイクが好意的な発言をした。

この武器レンタルについては、再度検討が必要――ソウヤは少しがっかりした。割といいアイデアだと思っていたから。