軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第472話、水没した魔王軍の拠点

城攻めって何だっけ?――ソウヤは思った。

魔王軍が作った城は、ドラゴンという災厄の前に脆くも吹き飛ばされた。もはや、跡地というべきか。

ソウヤはゴールデンウィング号から降りて、城が建っていた場所に足をつける。地面が非常にぬかるんでいた。

「水が残っているな」

水溜まりが所々にある。エルフの治癒魔術師のダルがやってきた。

「しかしまあ、視界はとても開けていますね」

「まあな。ここに城が建っていたなんて、誰が信じる?」

構造物のほとんどが破壊されて流された。散らばった残骸の欠片や、一部地面に残っている基礎の部分はあるが、もはや城の体裁がない。

銀の翼商会の戦士や魔術師たちが数人ずつのグループに分かれて周囲を捜索する。上空にはガーディアン戦隊のゴーレム飛行船が浮いていて、地上に電撃砲を向けている。

しかし、今のところ魔王軍の反撃はなかった。

「ほぼ吹き飛ばされるか流されたのでしょうね」

ダルは心持ちか眉をひそめた。

「アクアドラゴン様のブレス……。水とはいえ城壁を砕く威力でしたから、生身の者もまず助からないでしょう」

「だろうな。……それにしても、アクアドラゴンがまさか加勢してくれるとはな」

「割と面倒くさがりですからね。あの方もクラウドドラゴン様ほとではないにしろ気まぐれですし……。まあ、今回はただストレス発散だったんでしょうね」

ダルが苦笑する。

「時々、物を壊しまくったり、大声で叫んでみたり……ドラゴンだってストレスは感じるでしょうし」

「オレたちとしては助かったけど、ストレスで吹っ飛ばされる方は気の毒にな」

八つ当たりも同然、もらい事故みたいなものだ。時々、ドラゴンが現れて破壊していくのも案外それなのかもしれない。

「あれだけの力で壊しまくったら、さぞ楽しいでしょうね」

エルフの治癒魔術師は微笑するのである。のほほんとして、物騒なことをいう。視線を向けるとカーシュがやってきた。

「一応、敵地なんだから気を抜くのはよくないぞ」

「わかっているよ」

生真面目な聖騎士殿は、こういう時でも手を抜かない。

「こういう、もう敵はいないだろうっというのが一番危ない」

「そうなんだけどさ……」

ソウヤはチラと残骸の上でそっぽを向いているミストを見やる。魔力察知で敵に人一倍敏感な彼女が仕事をしていないのは、危険がないのではないか。

「彼女、どうしたの?」

カーシュが不思議そうに聞いてきた。

「思う存分敵の城を破壊できると思ったら偉大な大先輩においしいところを全部持っていかれてご機嫌斜めなんだそうだ」

「ああそう」

アクアドラゴンが城を流してしまった。意気込んでいた分、拗ねてしまったわけだ。相手が相手だけに文句も言えない。

「魔王軍が作っていたという飛空艇を見に行こう。……来るか?」

ソウヤは、ダルとカーシュと共に城に隣接する飛空艇造船ドックへと向かう。

「空から見た時は、半分以上水没しているように見えた」

城よりも低地に位置していて、造船ドックはすり鉢状になっていた。城を吹き飛ばした水の余波が流れ込んで浸水させたのだ。

「……うわお」

見下ろせば、ドックは池になっていた。水面より下に船体の一部が見えていたが土砂が混ざり合って濁った水のせいで、深さなどがわからなかった。

先にドックを見にきていたジン、ライヤー、カマルがソウヤたちに気づいた。

「見ての通り、水をどうにかしないとどうにもならんぜ」

ライヤーが手を振った。

「どんな船を作っているのか、興味はあったんだがな」

「水は抜けないのか?」

「排水装置があれば抜けるだろうね」

老魔術師が肩をすくめる。

「もっとも、装置があったのかどうかさえわからないが」

「ここは人工的なダンジョンなんだろ?」

ソウヤは辺りを見渡した。

「ダンジョンの制御室で、操作できね?」

特に確証があるわけでもなく適当な調子のソウヤだったが、ジンは顎髭を撫でた。

「なるほど。その手があるか。試してみよう。ちょっと行ってくる」

「あ、おれも行っていいか、ジイさん?」

ライヤーが老魔術師の後に続き、カマルもそれについていった。諜報畑の人間は好奇心が旺盛なのだろう。ライヤーはまあ普通に古代文明研究家としての趣味だ。

ソウヤはダルとカーシュと顔を見合わせ、しばし水没した造船ドックを眺めた。

「魔王軍は飛空艇を作っていた。……ここだけだと思うか?」

「いいや」

カーシュが否定すると、ダルは天を仰いだ。

「ここだけだといいんですが」

「僕たちの知らないところで飛空艇を建造していたんだ。他にも同じような施設があってもおかしくない」

「空から魔王軍が攻めてくる……」

多数の飛空艇が空を埋め尽くす。地上からの迎撃の手が届かず、上空から一方的に攻撃を仕掛ける魔王軍。地上の都市や城を焼き尽くし、魔族兵が無人の野を進撃する……。

「今の人類にそれを阻止する力があるか……?」

自問するようにソウヤは言った。カーシュは口元を引き締めた。

「無理だね。もちろん船の数にもよるけど、人類の国家が保有する飛空艇をかき集めたとしても、魔王軍の飛空艇が大挙押し寄せてきたら対抗できるかどうか」

「そうでしょうか?」

ダルは疑問を口にした。

「飛空艇を飛ばすには飛行石の問題がありますよね? 魔王軍はその問題をクリアしたのでしょうか?」

つまり、飛行石を自力で作れる技術を得たのか否か。もし人類同様、発掘品頼りなら、悲観するほど多くの飛空艇を飛ばすことはできないのではないか。

「連中も人工的に飛行石を作る技術があるかもしれない。あるいは飛行石に頼らずとも飛ばす技術があるのかもな」

元の世界では飛行石などという魔法アイテムがなくても空を飛べる乗り物が存在していることを知るソウヤである。

魔王軍も何かしら、何か別の方法を発明したのかもしれない。

「そうなると、ますます沈んでいる魔王軍の飛空艇を調べる必要がありますね」

ダルは頷いた。

果たして、どういう構造をしているのか。こちらの知らない未知の技術が使われているのか。