軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第469話、ガーディアン戦隊、合流す

ソウヤたちはゴールデンウィング二世号に戻った。

「うーん、ちょっとやられたか?」

飛空艇の船体に、小さな焦げ跡がいくつか見えた。レーラが沈んだ顔するが、ジンは淡々と言う。

「大きな損傷はなさそうだな。表面が少し焦げた程度だ」

「防御障壁のおかげだな」

ゴールデンウィング号に搭載された魔法的防御装備がある。それがなければ、もっとひどいことになっていたに違いない。

「それにしても――」

メリンダが口を開いた。

「異様な光景ですね」

ゴールデンウィング号の周囲には、ジンが飛行船型ゴーレムと呼ぶ飛行物体が複数浮かんでいた。

浮遊ボートは甲板に到着する。イリクとセイジが待っていた。

「お帰りなさい。そちらも無事で何よりでした」

「大変だったな。被害は?」

「船体に軽微な損傷はありますが、ライヤーとフィーアの確認したところでは致命的な被害はありません」

イリクに続き、セイジが答えた。

「負傷者は数人でましたけど、ダルさんの魔法で回復しました」

「重傷者がいなくてホッとした」

ソウヤは正直だった。死者が出ていたらたまらない。イリクがソワソワしはじめた。

「それで、この周りの古い時代の飛空艇ですが――」

「先にも通信機で伝えた通り、このダンジョンの主が作り上げた防衛装置だよ」

ジンが答えた。

イリクが古い飛空艇と言ったのは、飛行船型だからだろう。

現状発掘されている飛空艇は飛行石を搭載し、プロペラを回して推進力を得るエンジンを有している。

ガス袋を備え、吊り下げられた船体――ゴンドラが小さめな型は、この時代の人間からみてもあまり馴染みがないのだろう。

「まあ、プロペラで推進力を得ているのはこれも同じだよ」

巨大なガス袋は飛行石の代わりである。乗員用の船体が小さいのも重量と浮力の兼ね合いだ。

「しかし、よく味方に引き入れましたね、ジン殿」

「なに、私は昔ここに来ているからね。装置の存在を知っていただけだ」

老魔術師が、いかにも年の功と言わんばかりの態度をとった。イリクは感心する。

「まったく興味深くはあります。それにあの飛竜に見えるもの……あれは、ガーゴイルですな?」

飛行船のガス袋の上面に行儀よく並んでいるガーゴイルたち。魔法生物とも人工物とも言われるそれは、一般的には悪魔や怪物をかたどった彫刻の姿をしている。

ファンタジーゲームなどでは侵入者を阻む石像。リアルな話をすれば雨どいであり、排水口である。この世界では、もちろん前者である。

「あれだけの数のガーゴイルを見るのは初めてです。もちろん、あの姿のも」

「ダンジョンの防衛用に作られたものだからね。人がいなくてもここを守れるように」

そう口にして、ジンは怖い顔になった。

「残念なことに、魔王軍の手の者がここに入り込み、城を作っている」

かつての弟子が作ったダンジョンである。その庭を荒らされて、お怒りのようだった。

「ソウヤ、私は魔王軍の拠点を潰したいと思う」

「それに同意するぜ、爺さん」

ソウヤは頷いた。

「魔族が人のこない場所で拠点を作るなんざ、何か悪い企みでもしているってことだ。捨て置けない」

「魔王軍の企みは阻止せねばなりません。むろん、私も攻撃に同意いたします」

イリクが賛意を示した。ミストがその後ろから現れる。

「ワタシも乗った! 吹き飛ばしてやりましょう!」

「やられっぱなしというのも面白くないですし」

セイジも力強く首肯した。

魔王軍の先制攻撃を受けた。船にいた面々も襲われたという事実を前に反撃を望んでいた。大半が戦闘員だから、怖じ気づくどころか戦意は旺盛だった。

大きな被害を出すことなく乗り切ったから、というのもあるだろうとソウヤは思った。これが多くの死傷者が出たり、船に大きな損傷を被っていたら、こうはならなかったに違いない。

そして魔王軍の大部隊の攻撃を受けてなお強気でいられるのは、ジンが起動させたダンジョンガーディアンが味方として存在していることもある。

ゴールデンウィング二世号の周りには、その全長の3倍はあろうかと思われる飛行船が9隻。さらに増えつつあった。

ちょっとした空中艦隊である。さらに艦載機としてプテラノドン型ガーゴイルが搭載されており、先ほど襲撃してきた敵を数で上回っていた。

「ようし、一丁、連中の拠点を叩きに行きますか!」

ソウヤは腕を打ち合わせた。――今度はこちらの番だ。

・ ・ ・

かくて銀の翼商会と飛行船型ゴーレムによるガーディアン戦隊は、ダンジョン内にある魔王軍拠点を目指した。

ダンジョン内だが広大な空間ゆえ、空を飛んでいるにも関わらず、目視できるまで少々時間がかかる。

――どれだけ広いんだ、このダンジョン!

ゴールデンウィング二世号を中心に、ガーディアンモンスターは航行する。ライヤーは口笛を吹いた。

「――へえ、あれゴーレムなのかよ、ジイさん」

イリクからもあれこれ質問をされたジンだったが、ライヤーもまた興味を持っていた。

「あんだけでかいのに無人なんだな」

「というか、乗る場所がないのだよ」

ジンはゴンドラ部分を指さした。

「あれがゴーレムの本体でね。ゴーレムのコアと電撃砲が積まれているのだ」

「へぇ……。ひょっとして、その砲座撤去して、人が乗れるようにすれば、普通に飛空艇としても使えるんじゃね?」

「使えるよ。要は、何を載せるかの違いだからね。もちろん、改造は必要だが」

「まったくもって素晴らしい!」

イリクが話に入ってきた。

「ゴーレムと言えば人型。それもまた思考が硬直していた! 何故、人型でないゴーレムという考えに至らなかったのか! 目から鱗が落ちました!」

興奮するイリクに、ライヤーとジンは顔を見合わせた。

「あの人はいつも楽しそうだな」

「そうだね」

和む雰囲気に、同じくブリッジにいたソウヤは苦笑した。そしてミストへと向き直る。

「で、魔王軍の動きは掴めそうか?」

「……いま、魔力眼で見てる」

ミストは瞳を閉じ、魔力の目で敵の城を探っていた。