軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第467話、VS、魔王軍飛行強襲連隊

圧倒的な光は装甲ワイバーンやグリフォンを数体、そして魔族兵たちを飲み込んだ。

慌てて回避したヴァトンは、同じく避けた味方を見やり、思わず歯噛みした。

「魔法だと……!」

注意せよ、と自ら呼びかけたヴァトンだったが、その威力についてはまだ過小評価をしていた。

巨大なトレントを倒す魔法といえど、せいぜい1回1体程度だろうと想像していたが、いまの一撃は、全体のおよそ5分の1を塵へと変えた。

警告していなければ、とっさの回避も間に合わずさらに犠牲が出ていたに違いない。

「まるでドラゴンブレスだ……!」

その威力に戦々恐々となるヴァトン。これほどの火力は今の自分の部隊は持ち合わせていない。

飛空艇のほうからさらに光がいくつか瞬いた。またも光の光線魔法が放たれたが、先ほどの一撃に比べて小さい。

グリフォンが一体、ハーピーが二、三体ほどやられたが、初発の災厄に比べれば微々たる損害である。

「各員、敵の大魔法に備え散開しつつ、目標を包囲、殲滅せよ!」

魔王軍飛行部隊は広がりながら、飛空艇に迫った。

・ ・ ・

「まあ、そうなるよな……」

ライヤーは、分散した敵の配置に思わず眉をひそめた。

最初の光の魔法はソフィアが放った。ドラゴンブレスを吐くことができる彼女が、それを魔法として撃ったその威力は凄まじかった。

しかし、それを以てしても、敵全体の4分の1ほどしか吹き飛ばせなかった。これが地上を進撃している部隊だったなら最低でも半数、4分の3は消滅させられたものを。

続いて、魔術師の数名がソフィアの光魔法に倣ったが、威力も範囲も遠く及ばない。やはり飛行する魔獣や魔族は空中での回避力が高い。魔力の消費に対して撃破効率が激悪だった。

「とはいえ、近づいてくればその分、命中もさせやすい」

カマルの発言に、ライヤーは口元をゆがめた。

「気休め言うな」

高速で突っ込んでくる敵に対する攻撃チャンスは、さほど多くない。一発はずしたら、あるいは倒しきれなかったらやられるのは自分だ、と銃を使う経験からライヤーは思った。

ゴールデンウィング二世号に搭載されている電撃砲が、対空戦闘を開始した。初手、反応できなかった有翼人が直撃をくらい墜落したが、それ以降は回避をとられて中々、命中させられない。

魔王軍もこれなら取り付けると思っただろう。四方八方から船を取り囲んで距離を詰めてきた。

だが、反撃は始まった。

「マストで見にくいと思った?」

クラウドドラゴンが腕を振るった。

「雷撃の渦」

風が巻き起こり、それはたちまち竜巻と化した。ハーピーやホークマンらが複数体、まとめて風の渦に巻き込まれ、さらに弾ける電撃に感電した。

アクアブレス――甲板上からアクアドラゴンが水流を発射して、接近した武装ワイバーンを流し、地面へと叩き落とした。

「失せろ、トカゲ風情が!」

魔術師たちもそれぞれの持ち場で対空戦闘を開始した。イリクがサンダーボルトでデーモンを貫けば、サジーたちもファイアランスやアイスブラストといった魔法を駆使して、敵の接近を阻んだ。

・ ・ ・

「何故、取り付けん!?」

ヴァトンは、数で押しながら飛空艇の対空砲火を抜けない部下の姿に苛立った。

しかし、それも仕方のないことだった。

何せ対空砲火が、これまで見たことがないほど厚かったからだ。

単発の魔法なら、一発躱せば隙ができる。

しかし、その単発が一度に数発から十も飛んできたらどうなるか。大きく移動して躱さなければ逃げ切れず攻撃されてしまう。

大きな回避機動は、本来あるはずだった隙を埋めてしまう。そうしている間に次の魔法が飛んできてまたも避けなければならない。反応が遅れたり、回避が遅れれば逃げ切れずにやられる。

数で押せばいいと思うのだが、飛空艇1隻に搭乗している魔法使いの数が異常だった。四方から囲んでいるはずなのに、押し切れない。

ヴァトンは知らなかったが、魔術師たちの魔法の間を抜けようした魔族は、カリュプスメンバーや戦士組の迎撃を受けた。

それは魔法カードだったり、武器の先から放つ風の斬撃だったりと、方法は違えど隙をついた魔族突撃兵を阻止したのだった。

では少々の魔法なら装甲で弾く大型魔獣はと言うと、その防御を打ち破る大威力の魔法で狙い撃ちにされる。

多少の攻撃をものともせずに突っ込んで敵の防衛網を食い破る――破城槌の役割を果たすはずの大型魔獣が機能を果たす前に全滅した。

高威力の魔法があるといえど、まさか全滅させられるのは完全にヴァトンの、いや魔王軍飛行部隊の誰もが想定していなかった事態だった。

「この犠牲は大きい……」

ヴァトンはしかし、そこでニヤリとした。

「だが、いつまでその魔法がもつかな?」

魔法を撃つにも魔力を使う。これだけ派手な砲火は、なるほど確かに強力だ。

「だがそれだけ撃ちまくれば――魔力も尽きるだろう?」

敵飛空艇の近くで小さな爆発がいくつか起きはじめる。ホークマンらが携帯するクロスボウ――その爆裂矢が炸裂しているのだ。

ようやく攻撃が届き始めた。

正直、損害が大きすぎて、はたしてここで敵船を沈めても戦果に見合うかと言われると微妙ではある。

だが、いまさら退いたところで遅いとヴァトンは思った。もはや意地でも沈めねば面目が立たないのだ。

「ようし、デーモン隊。楔を撃てぃ!」

敵の防御を突き崩す。魔法を使える悪魔たちを投入して片をつけ――

「ヴァトン様!」

部下の声がして、振り返る。後ろから青白い炎がよぎり、逃げ遅れたデーモンが半分ほど燃え尽きた。

「後ろからだと!?」

ギュンと風がよぎった。それは悪魔のようだった。

女――漆黒の鎧をまとう少女。その背中には2枚の翼があり、槍を携えている。

悪魔――いや、その威圧は上位ドラゴンのもの。

ヴァトンが目撃した少女――ミストはゴールデンウィング号に合流すると、船の死角に回って攻撃しようとしているホークマンの背後から竜爪槍で貫いていった。

「敵にも飛行できる奴がいたか!」

唸るヴァトンだが、さらに部下の切迫した声がした。

「ヴァトン様、森から何か上がってきますッ!」

「何かとは何だ!? ……うおっ!?」

思わず声に出た。

飛空艇? というには奇妙な飛行物体と、さらにその上部に2列に並んで乗っていた鳥のようなものが順次飛び立ちはじめたのだ。

「鳥? いや、飛竜か?」

ヴァトンはますます困惑した。魔王軍ではないそれが突如現れ、さらに牙を剥いてきたのだから。