軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第462話、巨木の群れ

トレント。歩く樹木。一説には精霊とも言われているが、大方は他の生物を殺して養分を吸い取る化け物である。

それが十数体、ノシノシと歩きながら迫っている。しかもここらの木に合わせたスタイルらしく、高さは20メートルくらいはある。

「でけぇなぁ」

ライヤーは魔石銃を取った。

「あまりに木を切り倒したから怒ってるのかな」

「さあ、そうかもな」

カマルは適当な調子で言った。するとアクアドラゴンが首を振った。

「あやつらがそんな殊勝なわけがなかろう」

ふはは、とこの美少女の姿をしたドラゴンは何故か機嫌がよかった。

「ライヤー」

甲板からゴーレム改造強化アーマーに乗っているフィーアが船橋を見上げた。

「行きます」

後部ハッチを閉めて、ゴーレムアーマーを操りフィーアは飛び出した。ライヤーは目を剥く。

「ぬあー、あいつ、甲板に傷残していきやがったー!」

ゴーレムアーマーは重量物である。木目の甲板が無傷で済むはずがない。慌てるライヤーに、カマルは呆れる。

「気にするのはそっちか」

しかし、あれだけ大きなトレントに対処するのは、並の人間では難しいだろう。

「まあ、普通ではない者ばかりなのだが」

カマルが見守る中、トレントが切り倒された大木のごとく横倒しになっていく。望遠鏡で覗けば、クラウドドラゴンとティスが素手でトレントを蹴り倒している。

「……ドラゴンはともかく、ティスのあの力。ソウヤを連想させるな。……おっと」

カマルは口元を歪めた。

「ティスよ、その位置はよろしくないぞ」

・ ・ ・

「ティス、もっと下を狙って。顔より上を吹き飛ばしても、まだ動く!」

「っ!」

クラウドドラゴンの警告。魔法格闘士の風をまとった蹴りは大木をも砕いたが、トレントの顔より上を分断しても残りの下部分は歩き、そして腕のような枝を振るった。

「鋼!」

ティスはトレントの鞭のような腕を避けきれず、とっさに土の魔法で防御。しかし勢いまで殺せず、吹き飛ばされる。

「ティス!」

カエデが駆けつけるが、ティスは手で押し止める仕草をとった。

「平気。むしろ、危険。下がって」

上部分がなくなっても、なお十メートル以上ある巨大なトレント。カエデは対人戦はともかく、大型モンスター相手は不利なのだ。

カエデだけではない。カーシュやリアハ、コレルもトレントのような巨大な大木には圧倒的に攻撃力不足だった。

「クレル!」

魔獣使いの声に、ギガントコングが鉄拳を見舞う。大きいはずのコングもまた、トレントと比べると大人とぬいぐるみの玩具くらいも小さいが、その一撃は巨木を叩き割った。

「コレル殿ォ!」

リザードマンのフラッドが駆けつける。

「大牙殿を貸してもらえるでござるか? 足が欲しいでござる!」

「大牙!」

コレルが呼びかければ、獣魔であるサーベルタイガーの大牙が駆けつけ、その背にフラッドを乗せた。

「大牙殿、アレをやるでござるよ!」

サーベルタイガーは吠えた。ソウヤの勇者時代、大型魔獣を撃破するためにやってきた技をいままさに使おうというのだ。

トレントに向かって加速。その背中に騎乗するフラッドは絶妙なバランス感覚で姿勢を保ちながらウォーハンマーを振りかぶり――

「うおおおおおおおおおおおっ!」

騎馬武者の如く。フラッドと大牙はトレントの足元を駆け抜ける。すれ違いざまに、フラッドは渾身のウォーハンマーを叩きつけ――

「水でっぽうぉぉぉっ!!」

ハンマーの打撃がトレントを砕いた。一直線に亀裂が入り、砕け散る。自身を支えきれず、トレントは倒れた。

「ようしようし、よくやったでござるよー、大牙殿」

ウォーハンマーを担ぎ、開いた左手で大牙の首元を軽く叩くフラッド。しかし、周りにはまだトレントがいる。頭上から振り下ろされた枝腕を、大牙は飛び退いて躱した。

「危ないでござるな。一度、離脱してもう1回でござる。いけるな、大牙殿」

トレントの群れの中を突き抜ける大牙とフラッドだが、その進路上に一体のトレントが割り込む。

「けぇっ、砕くには距離が足りないでござる!」

今は逃げの一手。しかし、枝を広く広げて待ち構えるトレント。その顔は意地悪く歪み、奇怪な笑みを浮かべる。

フラッドと大牙は、ほぼ同時に危険を直感した。隙間を抜けるつもりだったのだが、それをやったらやられる――本能に響いた感覚。

しかし、他に逃げ道はなし!

その時だった。トレントの横合いから頭のない人型、丸みを帯びた甲冑をまとった重騎士を思わせるゴーレムアーマーがトレントに飛び込んだ。

「あれは、フィーア殿の……?」

フラッドの見ている前で、ゴーレムアーマーが右腕に固定された機械をトレントに当て、巨大杭を打ち込んだ。

パイルバンカー。

直後、トレントの内部でくぐもった爆発音がして、ぐらりとその体が傾いた。

フラッドにはどういう仕組みかはわからなかったが、ゴーレムアーマーがトレントを倒したものと判断した。

「フィーア殿か、かたじけない!」

『どういたしまして』

機械人形の少女は淡々と答えた。その間にもゴーレムアーマーは右腕のパイルバンカーユニットに新しい杭を装填する。

『私はもう少しトレント退治をしますが、あなた方は?』

「一度離脱して、再突入するでござる」

『では』

「ご免!」

それぞれ別の方向へ。フィーアのゴーレムアーマーは次のトレントへ向かい、フラッドと大牙は集団から飛び出す。

「おおっ」

振り返るフラッドは、ティスとクラウドドラゴンコンビがトレントをなぎ倒し、さらにミストがドラゴンブレスを放っているのを目の当たりにした。

「一時はどうなるかと思ったでござるが、さすが銀の翼商会」

ニヤリとフラッドは笑った。

「おぬしら、最高でござる!」