軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第446話、報告義務

飛空艇建造に向けて、ドワーフたちの町ルガードークに行くことになった。

「ソウヤ、ちょっといいか?」

「どうした、カマル?」

大事な話がある、という諜報畑の友人。ソウヤはゴールデンウィング号の船室に移動し、そこでカマルから話を聞く。

「飛空艇用の人工飛行石の件についてだ」

「ふむ」

「おれは王国に報告書を書かないといけない」

「それがお前の仕事だもんな」

「人工飛行石のことを報告書に書いてもよいだろうか?」

ふだんのイケメンがかなり深刻な表情で言った。ソウヤは首をかしげた。

「よいだろうか、じゃなくて、書く、じゃないのか?」

そもそも、カマルはアルガンテ王から派遣された連絡員である。正確に言えば、彼は銀の翼商会に所属しているとはいえない。

「報告はお前の義務だろ。仕事しろよ」

「商会にも機密というものがあるだろう?」

カマルは叱るように言った。

「特に莫大な金になるような話だ。商売が成立するまで秘密にしておきたいこともあるだろう?」

「さあな、あるかもしれんが、少なくとも、お前の報告書はアルガンテ陛下と、一部の人しか見ないんだろ。むしろ、こっちが何をやってるか知らせてやれよ」

「いいのか?」

カマルは、あまりにあっさりしているソウヤの態度に呆然としてしまう。

「これでは身構えていた私が馬鹿みたいだ」

「お前のことを信用しているんだよ」

ソウヤは真顔だった。

「アルガンテ陛下のこともな。むしろ、お前がうちで何をやっているか報せてくれないと、こっちが王城にお伺いを立てないといけなくなるだろう。面倒なんだ、あれ」

人工飛行石にしろ、飛空艇量産の布石にしろ、これこれこうなのですが、やってもよろしいでしょうか?とお伺いを立てないと危ない案件と考えていた。

だから、カマルが『こういう発明があって研究しています』と報告してくれれば、王城のほうで『話を聞かせてくれ』ということになる。

「こっちは色々やってるんだから、興味を持ってくれたことにだけ対応しようと思っている」

せっかく王城を訪れても、興味ないと言われたら無駄足である。国王も忙しいのだから、興味を持ってくれたモノについてだけ時間を割く。

「お前が報告すれば、説明の手間が軽減されるし、こっちの面倒も減るって寸法」

「そういう解釈もあるのか……」

カマルは考え深げな顔になった。

「おれは仕事柄、重要事は秘密にしておくものだと思っていた。だがお前はオープンなんだな」

「隠し事するってのは、いらぬ疑いを抱かれるもんさ。知らないところで恨みを買ったり、邪推されても困る」

ソウヤは苦笑した。

「まあ、売り込む手間を省いているのさ。どうにもオレは宣伝が苦手でな。噂を聞きつけてやってきてくれたほうが、広告費用も掛からないだろう」

「お前……」

カマルは開いた口がふさがらなかった。

「王国を利用しているのか?」

「王国だって、オレたちを利用している。お互い様さ」

ソウヤは相好を崩した。

「そういうわけで、人工飛行石と飛空艇建造の件はよろしく。……あー、人工飛行石についてはまだ試作段階と書いておけよ。まだ検証が足りないからな」

「わかった」

「今後も、お前のほうで報告書について気になることは言ってくれ。それで必要なら一緒に内容を考えよう」

ソウヤは席を立って部屋を出る。カマルもついてきた。

「ルガードークで、船を作ってもらうんだな?」

「そのつもりだ」

「人工飛行石の件はどうする? ドワーフたちに知らせるのか?」

「うーん、どうしようかな。試しの一個ってことなら、どこぞの遺跡から見つけたやつってことにできるな。……いや、研究していた試作品を王国から借りたって手もあるな」

ニヤリとするソウヤ。

「お前はどう思う、カマル?」

・ ・ ・

ゴールデンウィング二世号は王都を離れた。

アイテムボックスの共有領域を利用した転送ボックスを使い、ルガードークの機械職人ブルーアに、飛空艇の建造計画と図面を送った。見積もりなどを知りたいとメモも出して、現地に到着するまでに、ある程度の情報を集めてもらう。

「バッサンでは浮遊バイク。今度はルガードークで飛空艇か!」

ゴールデンウィング号の舵を預かるライヤーは上機嫌だった。

「ドワーフたちも張り切るんじゃないかな?」

あの町は、飛空艇の部品の製造や修理を生業としている。発掘品ばかりの飛空艇だが、ドワーフたちはその手先の器用さで、古代文明の技術を模倣し、何とか動かせるようにした。

今でも飛空艇に関係する技術では、王国一番を自負している。

「そういや、あそこって飛空艇を新造しているのかな?」

現在の飛空艇は再生品ばかりで、オリジナルの船はあるのか。

「あるんじゃね?」

ライヤーは言った。

「さすがに大型船はわからねえが、修理や補修の経験はあるはずだから、機会さえあれば作れるんじゃねえかな? ドワーフも人工的に飛行石を研究していたし、もう小型船なら完全オリジナルもあるかもな」

こちらはより性能の高い人工飛行石を持ち込む。それを見れば、ドワーフたちもオリジナルの飛空艇作りに没頭するのではないだろうか。

ソウヤとライヤーは期待に胸を膨らませる。ゴールデンウィング二世号はバンガランガ峡谷へと到着する。

ドワーフたちの里、その玄関町であるルガードークはすぐそこだ。

「それで、どこに降りればいいんだい、ボス?」

「このまま進め。この先に飛空艇用の発着場がある」

飛空艇の修理や補修もやっている町である。当然のように発着場があるのだが――

「あの空っぽのドックか?」

「……えーと、三番……そうだな。あそこだ」

ソウヤはブルーアから届いた返事の手紙を確認する。

発着場3番――とだけ書かれたシンプルな内容だ。

ライヤーが首をかしげた。

「何か、人が多くね?」

「……多いな」

VIPの到着を待つために詰めかけた観衆みたいな集団ができている。

「何かあったのかね?」

「さあ……」