軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第444話、ソウヤ、ちょっと魔法を使う

巨大な岩塊に飛行石をくっつけて重量物を浮かせる。その過程で、用意された岩塊に魔術師たちの注目が集まった。

ストーンウォール――岩の壁を形成する魔法だ。

一般的な認識では、防御魔法の類いと認識されていて、投射攻撃から身を守る壁を形成するとされる。

大の大人ひとりを完全に隠す大きさの壁が普通で、優れた魔術師となれば数メートル範囲の、それこそ一般住居程度の大きさの壁を生成するとされた。

が、ここでジンは、お屋敷ほどの巨大な塊を生成させ、さらにその重量を浮遊の魔法だけで支えてみせた。

「大きさなど関係ない」

老魔術師は、目撃することになったサジーたちに告げた。

「他の魔術師が使ったストーンウォールを見て、自然とサイズを定めてしまってはいないか?」

勝手に自己制限するから、全長数十メートルほどの岩壁に驚くのだ――とジンは言ったが、聞いていたソウヤとカマルは顔を見合わせた。

――普通、驚くよな?

――ああ、さすがにアレはデカ過ぎる。

規格外だと思うのだが、そういう当てはめが、そもそも間違いなのだとジンは言うのだ。

特別授業と言うことで、飛行石のテストの合間に、魔術師たちはストーンウォールの魔法の訓練にかかった。

「一番大きな壁を作れ」

その課題に対して、サジーとジェミーはさっそく魔法を使った。サジーは高さ5メートルほどの巨壁を地面から生やした。

一方、ジェミーは必死にイメージを重ねてようやく三メートルほどの壁を作った。

「記録更新かな? しかし、まだ常識に縛られている」

ジンは指摘した。

「さあ、ヴィオレット。君もストーンウォールに挑戦してみよう。岩の壁をイメージして。君は闇の魔力で、形成された魔力の結合を分離させるのが得意だろう。その逆、分離している魔力を結合するイメージで――」

「はい、師匠」

ヴィオレットは瞑想する。

「魔力を砂にイメージしてもいい。それをくっつけるイメージだ。まずは壁を形成しよう。岩壁でなくても砂壁でもいい」

要するにイメージだ。聞いていたソウヤは地面にしゃがんで手をついた。

「ソウヤ?」

カマルとレーラが注目する。ソウヤは答えた。

「オレもやってみる」

ついた手から魔力を感じて、頭の中でイメージを固める。大きさは、ジンがやったようにとにかくデカいやつ!

「!」

バリバリと音を立てて、大地が揺れた。地面から岩の針山が生える。

「うおっ!?」

「ソウヤ様!?」

「これはまた……」

ジンは顎髭を撫でた。

「勇者君。いったい何をイメージしたんだ?」

壁? 否、まるで山のような岩の塊がそこにあった。長さ、高さともゴールデンウィング二世号より大きい。先ほどジンが作り飛ばしたものよりも巨大だ。

「爺さんがイメージだって言うからさ」

「山を作れ、とは言っていないがね。しかし大したものだ。諸君、これがイメージの力だ」

魔術師たちは呆然と、山のような壁を見上げている。

「信じられない……」

サジーは空いた口がふさがらず、ヴィオレットも首を振った。

「さすが勇者様。なるほど、これは魔王を倒せますね……」

「凄いです、ソウヤ様!」

レーラが尊敬の目を向けてくる。隣でカマルが呆れつつ言った。

「壁、というには不格好だが、見ようによっては壁だな」

「お前ももう少し素直に褒めたらどうだ?」

「これでも褒めているんだがね。ただ、事実だろう? 壁というのは少々無理があると思うぞ、この形は」

「山だもんなぁ」

「うわっ、なんじゃこりゃ!?」

ライヤーが素っ頓狂な声をあげた。ソウヤの作ったストーンウォールを見て驚愕している。

「今さらかよ……」

「おれは空を見ていたんだ!」

ライヤーは上空の浮上する岩塊を指さした。

「それがこれだ。ちょっと目を離した隙に、何てものができてるんだ!」

「……」

「どうした、メリンダ?」

カマルが、ずっと黙っている女騎士に声をかけた。メリンダは複雑な顔になる。

「ソウヤはこっち側の人間だと思っていたのに……」

「何の話だ?」

意味がわからず聞き返すソウヤ。メリンダは露骨に口元をへの字に曲げた。

「魔法が苦手な、筋力全フリ勇者だと思っていたのに、魔法も全然使えるじゃん!」

「あー」

そういえば、メリンダは魔法が使えない系騎士だった。豪腕系勇者に密かに親近感を抱いていたらしい。

「なにアレ? 防御魔法を使ったらそのまま敵を攻撃してましたってか? 天才かよ!」

物凄く悔しそうなメリンダ。発狂とは言わないが、彼女がここまで感情を露わにするのは珍しい。

「確かに、ストーンウォールというよりアーススパイク系に近いか」

ジンが腕組みをする。地面から岩のトゲを無数に生やして、足元から串刺しにする土属性魔法が、アーススパイクである。

「諸君。ソウヤは魔法の真髄を披露してくれたぞ。ストーンウォールもアーススパイクも同じ、地面から生やす系の魔法。その差はほとんどなく、ひとつで両方の特性を合わせることもできるとね」

「おおっ……」

魔術師組から羨望の眼差しが向けられる。レーラは拍手までしていて、ソウヤは少々照れてしまった。

――違うんだ。ちょっとやってみただけなんだ。

・ ・ ・

飛行石テストは順調に終わった。この成果に、いよいよ2隻目の計画を進めていくソウヤたち。

だが、案の定と言うべきか、同行しなかったイリクが地団駄を踏んだ。

飛行石のテストもそうだが、ジンの規格外ストーンウォールについての講義を見逃した上、ソウヤが規格外ストーンウォールを使った場面を見損ねたからだ。

報告したサジーは、大変悔しがる父親の姿に生温かな目を向けて微笑するのだった。