軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第436話、注文に対応するために効率化を

悪い予感は的中した。

王国へ導入する浮遊バイクは、それぞれ外見に差違が見られた。職人の個性である。

性能についてソウヤとボルックが話していると、それぞれ職人たちがやってきて――

「俺の作ったバイクが一番だ!」

「いや、加速はコイツが一番だ!」

「こいつは他より高く浮かぶことができるぞ!」

などなど、職人たちがアピール合戦をはじめ、続いて口論となった。一から十まで、ひとりで作らせれば、それは性能にバラつきもでるというものだ。

「ソウヤさん……?」

「量産化について、オレたちと職人で考え方に齟齬があったみたいです」

魔道具職人は、それほど大きくない物ならひとりで製作してしまう。それが基本のプロ職人たちである。

――さあて困った。

王国導入の浮遊バイクは、誰が乗っても一定の成果を上げられる必要がある。個体差は出るものだが、目に見えて性能にバラつきがあるのは使うほうも面倒だろう。

こっちは直線は速いです、でもこっちはコーナリングがいいです、とか言われたら同時運用が難しくなる。一緒に行動しているのに、速度差があるのでコイツは他より遅れます、なんて冗談ではないのだ。

ソウヤはボルックと話し合う。

まず規格の統一。使われている部品が職人ごとに違うのは、整備の面でも面倒である。

さらに量産化に向けて、それ専門の魔道具職人を育成し、これに充てる。

「量産専門とは……?」

「ただ同じものを延々と作ることに平気な辛抱強い職人のことです」

数を作ることを前提に、設計図通りに魔法文字や回路を刻み、調整するだけの人間。独創性などもっての他。誰でもできる部分は職人ではない工員に任せるのだ。

――魔道具職人が関わる部品を一カ所に集めたら、より効率がよくなるかもしれないな……。

その場合は設計の見直しも必要になるだろう。

「そしてこれまでの……素晴らしいバイクを製作した熟練職人さんたちは、オーダーメイド部門を設立し、そこで腕を奮ってもらいます」

要は適材適所である。

浮遊バイク事業を計画するにあたって、貴族や騎士、上級冒険者や商人など、個々の用途に応じたものを求めるだろうことは想定されていた。それらに応えるには腕のいい職人が必要である。

求められた性能と、それを発揮するものを作ろうとする職人の技量。おそらく古参魔道具職人のやる気を刺激してくれるだろう。

以前の話し合いで、オーダーメイドもやってみたらという案はあった。だからそこまで極端な話ではない。

話を聞いていたバッサン男爵が口を開いた。

「ソウヤ殿の言うとおりにしないか、ボルック君」

「領主様」

「実際、注文が多くて手が足りないのだろう? せっかく建物も増設したんだ。もっと効率よくやっていこうではないか」

バッサン男爵は工房を見渡した。

「数を揃えないといけないが、そういうのは職人もフラストレーションが溜まるだろう。ソウヤ殿の言うように、ベテランの職人たちにはクリエイティブな仕事をさせたほうが、バイクの質も高められると思う」

男爵は先を見据える。

「この町が浮遊バイクの最先端であり続けるためには、ただ作るだけでなく挑戦もしていかないといけない。そのためにも、効率のよい生産態勢は不可欠だ」

現状に満足せず、進み続けようとバッサン男爵は言った。ボルックは頷いた。

「わかりました。領主様がそうおっしゃるのであれば、職人たちにも話しておきます」

それで――と、ボルックはソウヤを見た。

「今回の王国からの発注分はどうしましょうか?」

「……王国からの発注で、何か問題になりそうな項目はありますか?」

ソウヤが確認すれば、一旦事務所に移動して、王国からの発注内容をまとめた仕様書を確かめてみた。

「偵察に用いる浮遊バイク……」

「仕様はそれだけですね」

「速度を求められたり、航続距離など数字的なものはなし、ですか」

ずいぶんとあっさりとした仕様書だとソウヤは思った。

「これは王国側でも、馬より速いだろう程度の認識で発注したんですね」

おそらくソウヤが浮遊バイクを使っていて、かなり速いらしい、というくらいしかわからないのだろう。

たぶん役に立つだろうから、とりあえず使ってみよう、ということだ。だから具体的な数字がないのだろう。

――いや、現代感覚だから、そう感じるだけで、この世界じゃ、そこまで数字で考えることはないのかもしれないな。

時速何キロで、いついつ到着する、とか計測する方法もまだまだ未開で、そもそも計算だって怪しい。学校が特殊なものしかなく、一般的ではないから識字率もさほど高くない。

「まあ、仕様自体ざっくりしているし、今回はまあいいんじゃないですか」

均一に揃えろと書かれていないし、試してみようという段階なら、多少性能に違いがあったほうが、次に発注する際の『このタイプが欲しい』と例を出しやすくなるだろう。

不安があるとすれば仕様に書いていない事柄で文句を言われることだが、その時はこちらからもバッサンの町を擁護しようと、ソウヤは決めた。

ということで、浮遊バイクを工房からゴールデンウィング二世号まで輸送することになった。

工房の工員がそれぞれ浮遊バイクの動力に火を入れる。彼らが運転して、飛空艇まで移動させるのだ。

「実は、これも相談したいことなのですが――」

ボルックは言った。

「この町で売る分には、ああやって直接乗って移動させられるのですが、町の外へ輸送する場合、どうやって運ぼうかと悩んでおりまして」

「というと?」

「距離が離れている場所へ、お客様に引き渡すものを運転して持って行くなんて、論外じゃないですか。長距離移動の最中でぶつけたり、襲われたりして傷物になったものを渡すわけにもいかない……」

「まあ、そうですよね」

「そうなると、馬車に載せていくとなるわけですが――」

まあ、そうなるよな――ソウヤは頷いた。

「もっともらしい方法ですね」

「ええ。ただ浮遊バイクは、意外と重いんですよ。大きさを考えると複数積めそうでも、馬車の許容できる重量がありますから、思ったより積めません」

今回の王都まで12台のバイクと予備部品など一式を運ぶとなれば、最低でも同数の馬車が必要となったという。

「そこで、我々は思ったわけだ。――そうだ、銀の翼商会にはトレーラーという大型浮遊バイク、というか乗り物があるじゃないか! とね」

バッサン男爵は手を叩いた。

「銀の翼商会は飛空艇というもっといい乗り物でやってきたわけだけどね。以前、ソウヤ殿が浮遊車や浮遊ボートの話をしてくれたのを我々は覚えていたから、輸送問題の解決にならないかと思ったのだ」

何というタイムリーな相談だった。ここに来る前、ソウヤもジンと第二の飛空艇として、輸送船建造の案をしていたのだ。