軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第420話、ボール遊び

「でけぇ……」

ギガントコングを見た銀の翼商会の面々は驚きを隠せなかった。

先に復帰していた天狼、大牙、ウメルカと再会したクレルも、かつての家族との再会を喜んだ。

レーラやカーシュ、メリンダも古き友人を喜んで歓迎した。

「しかし、また大きくなって……」

かつての姿からさらにたくましくなったギガントコングの姿を見上げるかつての仲間たちである。

「でけー、でけー!」

影竜の子供であるフォルスが、ギガントコングに興味をもったようで早速絡んでいた。

あっさりコングにつかまれ、高い高いされて、フォルスははしゃいでいた。

――子供だなぁ。

ソウヤは、クレルに遊んでもらったフォルスにほっこりする。

ギガントコングが何かしらをコレルに言う。魔獣使いの青年は頷いた。

「ソウヤー、ボールを持っていないかー?」

「はあ?」

「バスケしよーぜ! クレルがやりたがってる」

何人かが、ソウヤとコレルのやりとりに注目している。カマルはフラッドと顔を見合わせた。

「バスケか、懐かしいな」

「フム、暇な時はよく遊んだでござる」

要するにバスケットボールである。もちろん、この世界にはなく、勇者として異世界召喚されたソウヤが、勇者パーティーの仲間たちと時間潰しにと持ち込んだものである。

特にコレルと獣魔たちが、このボールを使った遊びをよく遊んでいたのはよい思い出である。

「ボール……ボールねぇ」

アイテムボックス内を漁れば――ほら、出てきた。

ソウヤはバスケットボールを模した球を投げると、コレルはそれを受け取り、さっそくドリブルをしながらクレルのもとに戻った。

適当なところにゴールポストの輪をこしらえて、3on3で遊んだものだ。獣魔たちがボール遊びが好きだったこともあり、魔獣使いの青年のバスケの腕前は中々のものだ。

「クレル!」

ひょいとボールが行けば、ギガントコングはポンと軽々と受け取り、鋭いパス返球をした。

――バスケって何かでかいだけで強そうに見えるよなぁ。

何が始まるかわからない者たちを尻目に、コレルとクレルのパス回しが始まった。間に大狼とサーベルタイガーが入って妨害という名のボール遊びに加わっている。

しかし図体の大きなクレルが上からパスを出し、コレルは獣魔たちを避けながらパスを受け取り、またパスを繰り出している。

「おーい、バスケやろうぜって言って、お前らだけでやるのかよ?」

ソウヤが皮肉げに言い、ついでカマルたちを見た。

「お前らもやらねえか? コレルの復帰祝いだ」

「いいでござるな」

「3on3には、人が足りなくないか?」

カマルが指摘した。ソウヤは首をかしげる。

「カーシュ――」

「あいつは球技に関しては鈍臭いから、同じチームなら嫌だぞ」

「カーシュ殿が可哀想でござる」

聖騎士も形無しである。

「そういえば、レーラ殿がバスケットボールをやりたがっていたでござるよ?」

「あー」

ソウヤは思い出した。そういえば魔王討伐の旅の道中、バスケで遊ぶ男たちを見て、自分もやりたいと言っていた。

だがあの時はお付きの連中からボール遊びを止められた。また仲間たちも聖女に怪我させたら大変だとお断りしていた。

とりあえずドリブルを教えたら、さっそく突き指していた。

「……うーん、正直、鈍臭さならカーシュ以上なんだよな」

「ソウヤ殿、それではカーシュ殿が鈍臭い人物みたいではござらんか」

フラッドが口を開閉させた。

「誤解なきよう。あの御仁は別に鈍臭いわけではないでござるよ」

「メリンダは?」

「あいつはボールに触りもしなかったぞ」

カマルは腕を組んだ。仲間たちが誘っても「私はいいから!」と徹底的に避けまくっていた。

「おっ、バスケットか?」

ここで新たな人物がやってきた。――いるじゃないか、異世界人が。

「よう、爺さん」

やってきた老魔術師にソウヤは手を挙げた。

「久しぶりにバスケをやろうって話になったんだが、人が足りなくてな」

「なるほど」

「爺さん、バスケ経験は?」

「少し。学校で教わった分と、友人と少々」

「ジン殿に頼むのか?」

カマルが目を剥いた。

「御老体には厳しいのではないか?」

――そうか、カマルは知らないんだ。爺さんの年齢について。

ウン千年……というとさらに老人度が跳ね上がる気がするが、見た目とは裏腹に動けるし体力も有り余っている人である。

しかし当のジンは朗らかに笑った。

「ただの人数合わせだよ。お手柔らかに頼むよ」

どうせ、コレルとギガントコングの復帰祝いのお遊びである。さほど難しく考える必要はない。

……そう思っていたソウヤだったが――

「何が『お手柔らか』に、だ。あのジジイ!」

カマルは歯噛みした。ダンダンとボールをついていたジンは、視線とは別方向――つまりノールックパスをコングへ。

ゴールリングの高さおよそ3メートル。ギガントコングの身長ほぼ3メートル。ジャンプせずともダンクができてしまう理不尽体型。

「ふざけんな!」

とにかく、ゴール前でゴリラにボールが渡ったら最後である。身長差から、上にパスを出されたら防ぐのは至難の業である。

パターンに入ってしまったら、おしまいだった。

攻守を入れ替えれば、今度はゴール前のギガントコングが邪魔である。体がでかいというだけで、コースは限定されるし、3ポイントシュートを狙っても、ゴール前で撃墜されてしまう。

クレルを相手しなければ、まだやりようはあるが、それでも相手チームにとってはかなり厳しい。

「おう、スポーツでこんなチートなゴリラは初めてみたぞ」

ソウヤのコメントがすべてを物語っていた。