軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第414話、防衛戦の用意

砦の中にいた者を緊急招集し、待機中のゴールデンウィング号にも警戒と戦闘配置を伝える。

汚染魔獣の行動範囲に影響する装置を奪われないよう、敵は爆発トラップを仕掛けていた。

その敵からすれば、情報漏洩を防ぐために中にいたソウヤたちの確実なる死を確認し、外にある飛空艇も念のため破壊しておきたいところだろう。

ミストらと合流したソウヤは、砦の外壁上の通路に出る。

「さあて、敵さんは次にどう動く?」

外から攻めてくるか? あるいは忍び込んでくるか――敵の姿は不明。おそらく魔王軍残党だと思うが、その数もわからない。

「爆破だけやって帰るってこともないだろう」

「わからないぞ、ソウヤ」

カーシュが外を見回した。

「この一帯の汚染魔獣の観察が主な目的なら、少人数のグループで事足りる」

「つまり一度拠点に戻って、改めて部隊を率いて攻めてくるとか?」

「だとしたら、拍子抜けなんだけど」

ミストが不満をにじませた。視線を走らせるが、敵らしき姿は見えない。

砦の反対側かと思ったソウヤだったが、言葉にする前にミストが「ソウヤ」と小声で呼んだ。

「なんだ?」

「ゴールデンウィングから念話。お爺ちゃんに話しているみたいだけど……上が言うには、この砦めがけて魔獣の群れが接近中」

「おいでなすったか」

ソウヤは片方の眉を吊り上げてみせた。

「で、どっちから来る?」

「全方位」

ミストが呆然としたような顔になった。

「どこに潜んでいたかわからないけれど、汚染魔獣がこっちへ集まってきているみたい」

「……!」

ソウヤは元来た道を引き返した。

装置のある部屋に戻れば、ジンとダルがいて、巨大魔石を調べている。

「爺さん、砦に魔獣が集まってきているらしい」

「ああ、船から念話で聞いた」

「その装置で何かしたのか?」

「いいや。魔獣が来ると聞いたから装置を解析したが、こちらからは特に操作していない」

「ということは……」

「例の観察していた者が、汚染魔獣の制御装置を持っていて、我々を排除するためにここに魔獣を集めたというのが妥当だろう」

「となると、選択肢は二つだな」

ソウヤは言った。

「飛空艇で空から脱出するか。ここに留まって戦うか」

「その装置で制御できないの?」

ミストがやってきて意見を言った。

「こいつを壊せば、範囲内の汚染魔獣は全滅するんでしょ?」

「ああ、装置がこれだけだったならね」

ジンは首を横に振る。

「だが敵が汚染魔獣を操れるなら、敵もこの装置と同種か、それ以上のものを持っているということだ。これを壊しただけではどうにもならんよ」

それなら――と、カーシュが発言する。

「敵が持っているその装置を壊して、こっちのも切れば汚染魔獣はたちどころに全滅するのでは?」

「いい意見だ。しかし、簡単に見つかるかどうか、というのもある」

ジンは難色を示したが、ソウヤは皮肉っぽく笑った。

「何でもやってみるもんさ。もしかしたら敵さんの制御装置も、これくらい大きくて目立つ代物かもしれねえ。案外探したら見つかるかも」

「すると君は、この砦で防衛戦をするつもりか?」

「この辺りの汚染魔獣が集まってきているんだろ? なら、その中に探しているギガントコングもいるかもしれねえ」

ソウヤは、ミストを見た。

「念話で上のゴールデンウィング号に連絡。使い魔索敵ができる奴を総動員して、周辺の偵察だ。汚染魔獣を操る装置とか道具を持っている奴を探させろ」

ミストがさっそく念話を飛ばすと、カーシュがソウヤを見た。

「見つかるだろうか? 魔獣の中に紛れていると見つけにくいのでは?」

「いや、汚染魔獣は何だかんだいってもただの魔獣だ。その中で装置や道具を持っている奴は目立つはずだ。いるなら見つけ出せるさ」

なるほど、とカーシュは頷いた。エルフの治癒魔術師ダルが口を開いた。

「ここで防衛戦をやらかすのは得策とは思えないんですが」

デュロス砦は十年前からほぼ放置された状態で、戦いの影響で壁などが崩れている場所もそのままだった。

つまり、防衛拠点と見るには、あまりに隙だらけで全方位の攻撃に大して、どこまで対抗できるのか怪しい。

「そいつは困ったな」

「汚染魔獣を操っている者を探す時間を稼げればいいのだろう?」

ジンが進み出た。

「砦の外壁を私の結界で覆ってしまおう。そうすれば建物の窓や隙間から侵入はできない。上は開けておくから、そこから外の敵を攻撃したりはできるようにする」

「そいつは名案だ」

敵に侵入さえされなければいい。敵の親玉を見つけるまで、囮として防戦を演じればいいのだ。

「……その代わり、結界以外のことは私はできなくなってしまうが」

結界に専念とあれば、ジンの攻撃魔法などは期待できない。

「なに構わないさ。敵さんの親玉ってのを見つければそれで解決さ」

さっそく防衛態勢を整える。ゴールデンウィング二世号にも指令が伝えられ、備えられた電撃砲などが、地上へと向けられる。

上空からの支援砲撃は頼もしい限りである。大いにアテにするのだ。

「でも、まずは敵の中にギガントコングがいるかどうかを確認するのが先だよな」

コレルの魔獣が混ざっているとなると、あまりに強力な攻撃を仕掛けたら巻き込んでしまうだろう。

「あまり気にする必要なくない?」

ミストがニヤリとした。

「どうせ、通常の攻撃なら死んでも時間経過で復活するんでしょ? まとめて吹き飛ばしても取り返しがつくと思うわ」

「……そういう見方もあるか」

ソウヤは頷きかけ、しかし首を振った。

「いや、いくら復活すると言っても、殺してしまうような攻撃を当てたくはないな。そもそも、必ず復活するかどうかは、まだわからないし」

傷を受けて死亡、などというパターンなら再生するのを見たが、たとえばドラゴンブレスのような塵も残さない攻撃をくらって体が消滅した場合、復活できるのかはわからない。

そのまま再生不能で死亡なんてことになったら、コレルは落ち込むだろうし、彼にとって家族も同然の仲間を、こちらが殺すようなことになったら申し訳が立たない。

「……来た!」

砦の四方より、汚染魔獣の群れが大挙して現れた。いよいよ激突である。