軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第405話、死した友の魂

「コレル、邪魔するでござるよー」

フラッドはコレルの部屋に堂々と入っていった。部屋の主は視線を寄こす。

「フラッドか……」

「久しぶりらしいでござるな」

ご無沙汰していたにもかかわらず、コレルの反応は淡泊そのものだった。

「今日はコレルに頼みがあってやってきたでござる」

「……」

コレルは無言だった。しかし、フラッドは構わず言った。

「お主の従魔たちには世話になったので、お礼が言いたいのでござる。ちょっとお話するので、従魔たちに関連する品を貸してほしいのでござる」

「話……?」

「左様。某は死せる者の魂と交信ができるのでござる。繋がればお礼を、繋がらなければ、どこかに生きておるということなので、探しに行こうと思っておるのでござるよ」

「探しに……?」

コレルの眉間にしわがよった。

「アイツらが生きているとでもいうのか?」

「それは呼んでみねばわからぬのでござる。とかく、某にとっても命の恩人。礼を尽くすのが筋というもの」

フラッドは正直に答えた。

「聞けば、お主も最後の挨拶をしておらんというではないか。どれ、一緒に会ってみぬか? きちんとお別れをするのも家族としての礼儀というものでござろう」

「……!」

コレルは口元を引き締めた。何か込み上げてくるものがあるが、すぐに俯く。

「アイツらに今さら合わせる顔など……」

「それならば主は会わずともよい。無理することはないのでござる。しかし、某は礼をいわねばならぬゆえ、従魔たちの品を借りるでござるよ。でないと、某はお主のそばから動けなくなってしまうのでござる」

「何故だ……?」

「我が一族の伝統でござる。理不尽といえども、しきたりである以上、やらねばならぬ」

「……」

コレルは躊躇った。だがこのままフラッドが居座るのも居心地が悪く、懐から魔獣たちの品を出した。

「ほうほう、歯に、爪、角の欠片でござるな。結構結構」

フラッドはそれぞれの魔獣の欠片を受け取ると、あぐらをかいた。

「それではさっそく」

まずはハンカチサイズの布を敷き、そこに魔獣の品を並べる。腰のベルトから下げた革袋を取ると、中のものを一掴み。それを指先でこするようにすれば、粉が少しずつ布の上に落ちた。

ここで儀式を始めるらしい。しかし反対するのも億劫なコレルは、黙ってそれを見つめた。

何やら人語とは異なる言葉を口走るフラッド。すると、ぼぅ、と青い霊魂のようなものが現れた。

「……まさか」

思わずコレルは口走る。その半透明な塊はやがて獣の形になる。

「アルメア!」

それは額に赤い宝石をつけた小さな動物だった。

「アルメア!」

コレルが小動物――カーバンクルのアルメアに手を伸ばした。だがその手はすり抜けてしまい、コレルは愕然としてしまう。

「うぅ、アルメア。お前……」

ボロボロと涙を流れ出る。フラッドは「フムフム」と頷いた。

「コレルよ。アルメアはお前とまた会えて喜んでおるぞ」

「……アルメアが?」

その鳴き声も聞こえない。無音の中で動くカーバンクルが、触れられないながらもコレルの腕に触ろうとするように手を伸ばした。

「うぅ……うぅ」

コレルの嗚咽が止まらない。どれくらいそうしていたか。フラッドは唐突に言った。

「コレル、アルメアはもう逝かねばならぬと言っておる」

「行く……?」

「魂の拠り所だ。お主に一目会うまで、現世に留まっておったのだ」

「そんな! アルメア、お前……十年もずっとオレを待っていたのか!?」

「最期に会えてよかったと言っておる」

「嫌だ! アルメア、行かないでくれ! オレは――」

「コレル!」

フラッドが叱るように言った。

「アルメアはもう死んでおるのだ。はよう楽にしてやるのだ」

「アルメア……」

すぅ、とカーバンクルの体が消えていく。

「オレは、お前と出会えて……もっと一緒に……う、うわあぁぁ!」

コレルが号泣した。もう、その姿は見えない。

フラッドはアルメアの爪を取ると、コレルに返した。

「ひとつ、お主に話せねばならぬことがある。家族に等しい従魔を思い、悲しみに没頭したくもあろうが、大事な話ゆえ聞いてくれ」

「……」

「よいか。まずひとつ。アルメアは十年前に死んだ。だが残るクレルとウメルカは、まだ死んでおらん」

「……え……?」

「ここに魂がこなかったからな。死んでない魂は呼び出せん」

「クレルとウメルカは……生きて?」

「……それがどうも思わしくない」

「どういう、ことだ……?」

コレルは鼻をすすりながら聞いた。フラッドは、小さくため息をついた。

「アルメアが最後にお前に託した言葉は『家族を助けてくれ』だ。この家族というのは、お主の従魔のことではないか?」

「まさか、クレルとウメルカの身に……?」

「危険が迫っておるのか、あるいはすでに窮地に陥っているのか。ともかく急げと言っておった」

「助けにいかないと!」

コレルは立ち上がった。フラッドは残る歯と角を拾い、返しながら頷いた。

「うむ、今の状況はわからぬが、彼らには借りがある。このフラッド、喜んで助太刀するぞ。ということで――」

フラッドは部屋の外に待機していた男どもに言った。

「ソウヤ殿! 聞いての通りでござる! 仲間を助けに行くでござるよ!」

「……あ、またござるに戻った」

ソウヤは、ついどうでもいいツッコミを入れてしまったが、すぐに真顔になった。

「おう! 飛空艇で全速前進、超特急で向かうぞ! ……で、どこに行けばいい?」

「デュロス砦」

フラッドは断言するように言った。

「その道中。我々が忌々しい死の呪いを受け、死にかけたあの戦いの場。従魔たちが戦い、とうとう帰らなかったそこに、まずは向かうでござる!」