軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第403話、かつての仲間のために2

「――で、オレのところに来たか」

ソウヤは、カマルとダルを一瞥した。

アイテムボックスハウスの一角。練習場で指導を受けている新人たちを見守る。そんなリーダーの背中に、治癒魔術師は言った。

「魔王軍の残党を追うのも大事ですが、苦境の友を助けるのも、人の道ではありませんか?」

「そう言われると、オレもそれに応えたくなるんだよな」

勇者だから。困っている人に対してお節介なのはソウヤの性分だ。

「オレも、コレルがあのままでいられるのは仲間としてはつらい」

レーラもちょくちょくコレルに会いにいっているが、治癒魔法で怪我は治せても、絶望している人間の心を治癒する魔法は存在しない。

「まあ、いいんじゃないか。魔王軍のアジトの場所だって、候補地すべてに同時に行けるわけじゃないし。情報通りかどうかもまだ定かじゃない。それに――」

ソウヤは振り返った。

「魔王を討伐する旅で訪れた場所に行くのも悪くない。もしかしたら、そこに魔王軍がまた拠点を作っているかもしれない」

コレルや他の仲間たちが瀕死の傷を負い、アイテムボックスに収容されたその場所は――

「ディロス砦か」

カマルは顎に手を当てた。正確にはその砦へ行く道中。そこで敵の待ち伏せを受けたのだ。

「あの辺りは魔王軍が撤退した後も人が戻らず、過疎を通り越してほぼ無人になっているという。盗賊や、あるいは魔王軍が再び拠点化していても気づかない可能性がある」

「ならちょうどいい。そういう怪しいところに行って確かめるのもオレらの仕事だ」

ソウヤは口元を笑みの形に変えた。

「様子を見に行こう。……あ」

「どうしました?」

ソウヤが何かに気づいたような反応をしたので、ダルが問う。

「確認しに行くのはいいけど肝心のコレルは大丈夫か? あいつ、外に出られるのか?」

「これから話をするところです」

「そうかい。心を病んでいるアイツを連れ出すのも大変かもしれないが、そっちは任せても大丈夫か?」

「ええ。お任せを」

ダルは請け負った。カマルはと言えば複雑な顔になる。……コレルを外に出しても、結局は『現実』を思い知らせるだけになると思うと、気が進まなかったのだ。

・ ・ ・

「クレル……ウメルカ……アルメア……」

無感情に呪文のように唱えているのは、かつてコレルが従えていた魔獣の名前。

そんな魔獣使いの青年に、ダルは辛抱強く言った。

「確かめに行きましょう! 彼らを探すんですよ!」

「……あいつらが、生きているかもしれない……?」

「そうです! 確かめましょう!」

断言するようなダル。ベッドの上でうなだれているコレル。それをソウヤとカマル、そしてカーシュが見守る。

「……無理だよ、先生。あれから十年も経っているんだろう? あいつらが生きているはずはない」

――普通はそう考えるよなぁ。

ソウヤは頭をかいた。ダルは腰に手を当てた。

「いつもは、十年というワードにまるで無関心のくせに、こういう時だけ口にするんですね」

ぶっちゃけ頭にきます、とダルが珍しく怒ったような素振りを見せる。ただソウヤたち、かつての仲間たちは、それがダルのポーズであることを知っている。

「コレル君、どうして生きていないと言えるんです? あなたは彼らの最期を見たんですか?」

「……」

「あなたの家族はとても強かったと私は記憶しています。魔王軍に簡単にやられるような子たちではなかった。生き残っているかもしれない」

「強かった。でも、死んだんだ! オレの目の前で!」

従えていた魔獣が倒れるのをコレルは見ている。全員ではない。だが死んだ魔獣がいたのも事実だ。そこから聞いた話も含めて推測すれば、たとえ見ていなくても全滅したと想像するのは難しくない。

「えっと、あなたが意識を失うまで生存していたのは、クレルに――」

ダルが視線を向けてきた。

「ウメルカ」

カマルが言えば、カーシュも「アルメア」と答えた。

「その三体は、病気や怪我などなかったとしたら、この十年で寿命を迎えるものはいますか?」

「……」

何が言いたい、といいたげな視線をコレルは、ダルに向けた。

「ほら、十年以内に寿命を迎える子はいなかった。ならば、あの戦いでもうまく逃げおおせた子がいてもおかしくない」

「あるいは――」

カーシュが口を開いた。

「当時、負傷し隠れたまま、難を逃れることができた魔獣がいたかも」

「怪我をしていたなら合流できなかったとしても道理だ。傷が癒えるまで潜伏し、そのまま生き延びている可能性もある」

カマルの言葉に、コレルは目を向けてきた。本当にそうなのか、と言いたげに。

「行って確かめるしかないだろ」

ソウヤはきっぱりと言った。

「もしかしたら、クレルにウメルカ、アルメアで生き残った奴が、子供とか作っていたりしてな」

「子供……」

一瞬、コレルの目に光が宿った。それはほんのわずかな希望か。

「とりあえず、オレらだけでは見分けがつかねえかもしれない。コレル、お前も手伝え」

「――何やら面白そうでござるな、某も仲間に入れてくれ」

降って湧いたように、野太い男の声がした。最近聞かなかった、しかし確かに聞き覚えのある声に、ソウヤと仲間たちは振り返った。

緑色の肌のリザードマンが立っていた。チロチロと舌を見せるリザードマン。

「フラッド!」

「目覚めたのか!?」

意識不明だった最後の勇者パーティー時代の仲間――リザードマンのフラッドは口を開いた。

「とりあえず、腹が減ったでござるよ。まだ状況がよくわからないので、どなたか説明してくださると助かる」