軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第381話、冒険者の仕事? いいえ、商人の仕事です

銀の翼商会は、まずはエイブルの町に向かった。

取引先のひとつである丸焼き亭に挨拶したのち、ソウヤは冒険者ギルドを訪れる。ギルドマスターのガルモーニがソウヤを迎えた。

「久しぶりだなソウヤ。噂は聞いているぞ」

「噂?」

「銀の翼商会は色々やってるってことさ。あと、先日の王都での魔法大会。決勝で争ったのは両方とも君のところの人間だと聞いたぞ」

「耳が早いな」

ソウヤは苦笑してしまう。

王都の商業ギルドでの噂がどうこうと言われたので、知名度も相当上がっていると感じた。

「順調なんだろう?」

「人数は増えた」

ソウヤはそれで、ここを訪れた理由を打ち明けることにした。

「魔王軍……」

「ああ、虎視眈々と攻撃の機会を狙っているようだ」

「また十年前のような戦争になるかもしれんということか」

ガルモーニは腕を組んだ。当然、彼もあの頃を知っている人間である。自ずと表情が曇るのも仕方がない。

「戦争になる前にケリをつけられれば最高なんだがね。被害は少ないほうがいい」

「その通りだ」

「それで、オレらは魔王軍残党の活動を潰していこうと思ってる。それで戦争の芽を摘んでいく」

「それは行商の仕事か?」

「忘れたのかい? オレら冒険者の集団でもあるんだ」

ソウヤは相好を崩した。元勇者としては魔王軍退治は本職と言える。

「別に商人を辞めるってわけじゃない。商人をしていると色々と情報収集がやりやすいし」

商人は情報を集める。どこで何が溢れているのか、あるいは不足しているのか。どこに危険があって、最近事件があったかどうか。それは商売のためであれば、自分の身を守るためでもある。

「戦時も商人には稼ぎ時って言うしな。自前で守れる兵隊連れてるって思えば、そこまでおかしくはない」

軍の後ろにくっついて商売する商人もいる。銀の翼商会で軍の後ろについたことはないが……。

魔王軍と戦っていた頃、戦場で休憩している時に商人の世話になったことがあった。

「それで、最近どうだ? 魔族絡みで妙な噂とか事件は?」

「この町で、だろ? いいや、先日のスタンピードに魔族が絡んで以来は、これといって特に。ただ、最近またダンジョン内のモンスターが増加しているらしい」

エイブルの町はダンジョンの町である。冒険者たちが多くいて、普段からダンジョンモンスターの間引きをしているが……。

「増加している? 確かか?」

「はっきりと断言はできないが、そう感じている冒険者が増えている」

「前回のスタンピードから半年も経っていないのに」

「そう。頻発するものでもないはずだが、何ともきな臭いじゃないか。もっとも、ただの勘違いの可能性も捨て切れんが」

ガルモーニは小首をかしげた。

「もしかしたら、前回の時と同じく魔族が絡んでいたりするだろうか?」

「前科があるからな」

ソウヤは頷いた。

「こちとら新人が増えたのでね。実習がてら、ダンジョンを調べてみる」

「いいのか?」

「魔王軍が絡んでいたら面倒だからな」

ソウヤは相好を崩した。

「ちょうど仕入れをしようと思っていたところだ。ついでってやつ」

・ ・ ・

皆のもとに戻ったソウヤは、さっそく商会メンバーを集めた。

「それでは皆、これから銀の翼商会員として、仕事をしてもらう」

新人たちは緊張している。

この商会で新たな魔法や技を習得し、腕を磨くべくやってきた彼、彼女ら。だが、教えてもらう代わりに商会メンバーとして仕事をすることになっている。

だが商人などやったことがない者が大半なので自信がないのだろう。

ソウヤは一同を見渡す。

「エイブルの町にはダンジョンがある。そのダンジョンに入って、モンスターを狩ってこい」

「……?」

いったい何をさせられるのかと身構えていた一同から、拍子抜けのような息があちこちで漏れた。

「モンスター狩りですか……?」

「そう言った」

「冒険者の仕事みたいですね。……あ、銀の翼商会って冒険者でもありましたね」

苦笑が広がった。ソウヤは首を振った。

「いやいや、これはれっきとした商人の仕事だよ。お前ら、商人は店先で品を並べるだけだと思ったら大間違いなんだぞ」

何々屋さん、と言って思い浮かぶのは店や店員、商品の陳列棚とかだろうが、見えないところでも仕事はしている。

「特にオレら物を売る商売において、肝心の売るモノを仕入れることはとても大事なことだ。品がなければ店を構えての商売もできんだろ?」

ああ、確かに――魔術師たちは頷いた。

少し考えれば理解できることだが、案外その少しを考えたことがないことも世の中にはある。

「よって、オレたちはモンスターを狩り、その他売り物になりそうな物をダンジョンから調達する! 敵は獰猛で決して油断できないが、そこは皆の修行の実践の場を考えてこなしてもらいたい。……ここまでで何か質問は?」

「ありません」

「ない」

新人たちは理解したようだった。むしろ訓練したことをモンスター相手に試していいと聞いて、やる気になっていた。

冒険者や魔術師たちにとって、商売より戦うことのほうが慣れているからやりやすいのだ。

「地元の冒険者ギルドのマスターの話では、ここ最近ダンジョンのモンスターが増えているらしい。魔王軍の残党が絡んでいる可能性があるから用心していけ。もし魔族と遭遇したら即撤退し、報告してくれ」

「逃げるんですか?」

不満げな声が上がった。ソウヤは睨む。

「そうだ。態勢を整え、本格的な調査と制圧のためにだ。いいか、ホウレンソウだ。報告・連絡・相談! これができない奴はクビだ。魔族を発見して一番に報告した奴は、希望の教官から単独トレーニングできる褒美をくれてやる!」

「おおっ!!」

単独トレーニングと聞いて、教わりに来ている連中のテンションが上がった。今は数人単位でまとめて指導が多いので、個別レッスンが受けられるのは褒美になるだろう。

「ようし、数人ずつにグループ分けをしたら、それぞれ出てもらうから準備にかかれ!」