軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第372話、お前たちはこれからどうするの?

「今後の話、ですか?」

「そう、お前も魔法大会優勝で箔がついただろ?」

ソウヤは、セイジに問うた。

魔法大会の翌日。ゴールデンウィング二世号の甲板。王都の端にある飛空艇発着場からは王都全体は見えないが、王城のてっぺんは辛うじて見えた。

「昨日、色んなところから声をかけられただろ?」

「ええ、まあ……」

セイジは、どこか照れたように視線を泳がせた。

「ソフィアとカップル成立おめでとう。……それにもかかわらず、どこぞの貴族や魔術師が、うちの娘を――とか言ってきたんじゃないか?」

「ええ、はい……」

やはり、どこか落ち着かない様子のセイジ。

「その、魔術師本人から、お付き合いを申し込まれたりしました」

「あ、そう……」

正直である。ソウヤは苦笑した。

「それも複数……」

「お、おう……」

モテモテである。大会優勝者というのは、凄いんだなと思った。

「うちは行商で、同時に冒険者だ。お前のいう強い冒険者というやつの素質は、充分あると思う。ぶっちゃけると、オレは驚いた。お前、凄く強くなったな」

「いや、僕なんか、まだまだですよ」

「本当に謙虚だなお前。ミストも少しはお前を見倣うべきかもしれん」

あの霧竜は自信の塊である。

「それはさておき、お前さんは周りも欲しがる人間になった。これはめでたいことだ。お前を評価しているってことだからな」

万が一、銀の翼商会がなくなっても、他でもやっていけるということでもある。

「で、そうなると、お前のほうで選ぶことができるわけだ。やりたいことがあれば、それを目指してもいいわけで……」

「ひょっとして、遠回しに追い出そうとしてませんか?」

「まさか。オレはお前がいてくれて助かってる。他の連中も、お前のことを気にいっているからな。こっちから追い出すなんてことはしないさ」

心外だ、とソウヤは思うが、先の話にしてもデリケートな問題だ。些細な言葉でも、相手がこちらが思っているように受け取るとは限らない。

「たとえばの話だが、ソフィアが今回の活躍がきっかけで、王国の魔術団に入るとか、実家に残るって言ったらどうする?」

「ソフィアがそう言ったんですか!?」

「たとえばの話だ」

まだソフィアとは話していないから何とも言えない。もしかしたら、なくもない。

「だがもしそうなったらお前はどうする? ソフィアと一緒を選ぶか、それとも、いまのまま銀の翼商会に残るか?」

「……」

セイジが黙り込む。その頭の中ではめまぐるしく思考が加速しているのだと、ソウヤは見て取る。

彼女と一緒にいたい、そう思っているのは間違いない。あとはこの銀の翼商会でこれまでやってきたことと、どう折り合いをつけるかだが……。

――考え込むってことは、そう悪いものではなかったってところかな。

もし嫌だったら、そんなに迷うこともなかったはずだ。

「まあ、そういうことだ。今すぐ答えを出せとか言っているんじゃない。迷ったら、自分がどうしたいか、何をやりたいかを考えてそれを実行すればいいんだ」

ソウヤは天を仰いだ。

「前にも言ったかもしれねえが、ここじゃ、やる気、もしくは自分のやりたいことが優先だ。銀の翼商会は合わない、他でやりたいことが見つかったってんなら、一言言ってくれりゃいい。そん時は遠慮すんな。オレの言いたいことはそれだけ」

パーティーを追い出されて、ぼっちになったセイジを、ソウヤは拾った。銀の翼商会に雇った。だがそれに義理立てして好きなこと、やりたいことを犠牲にしてほしくはない。

もちろん、残ってくれたら新しく人を探さなくて済むし、セイジはいい奴だから、商会にはいて欲しいメンバーではある。だが強制はしたくない。

言いたいことは言ったので、ソウヤはセイジと別れ、次の人のところへ。

六色の魔術師こと、ソフィア。

彼女はゴールデンウィング二世号の船首で待っていた。

「セイジとの話は済んだ?」

「ああ、言いたいことは言った。次はお前の番」

王国唯一の称号を得た超新星ヒロインに駆け上がったソフィアである。魔法を覚えて一族を見返すという、彼女の目的は果たされた。

「イリク氏からも、帰ってこいって言われてないか?」

「うん、まあ。親子の時間を取り戻そうって言ってはいた」

少し恥ずかしそうに苦笑するソフィア。

「魔術団でも宮廷魔術師でも、好きなものになれるぞ、って言われた」

「だろうね。王国もお前さんの才能は欲しいだろうし」

昨日のアルガンテ王のいた場でもやりとりは、ソフィアも見ていた。

「祝賀会でも色んなところからお誘いがあったんじゃないか?」

「まあ、ぼちぼちね」

ソフィアは穏やかに言った。どこか悟りを開いたような横顔だった。

「今後のことは決めたか?」

「ええ、私はここに残るわ」

美少女魔術師は、きっぱりと言った。

「理由を聞いても?」

「私、魔法大会に出て、ようやく自分がそこらの魔術師を上回る実力を得られたって実感したの」

「そうだな。大会は凄かった。自信はついた?」

「ええ。でも……私は、まだまだよ」

ソフィアは、ソウヤを見た。

「ミスト師匠もジン師匠も、私よりぜんぜん上じゃない。私なんて雑魚よ。まだまだ学ぶべきことは多いわ」

あれだけ活躍して、まだ上を目指そうという。ソフィアは首を振った。

「あんなに優れた師がいるのに、ここで降りるなんて馬鹿のすることだわ。私はまだまだここで学ぶ。それに――」

ソフィアは甲板で、考え込んでいるセイジの姿を眺める。

「あいつもいるんだもの。今度は、絶対に負けない!」

――あー。

どうやら、トーナメントでセイジに負けたことを少々引きずっているようだ。本業魔術師が、そうでない戦士に負けたのはよほど悔しかったのだろう。

正面から普通にやりあえばソフィアが圧倒すると思うのだが……。何にせよ、モチベーションにつながっているなら、どうこう言うことでもない。

「こんなことを聞くのは野暮だと思うが……付き合ってるんだよな、お前ら?」

「ええ、そうなるわね」

ソフィアは胸を張って堂々と言った。

「でも、だからいきなりどうこう変わるものでもないわ。私だって、こういうのは初めてでよくわかんないんだから」

「そうか……。オレもあまり詳しくねえから、相談には乗れないと思うが、まあ、ぼちぼちやっていけ」

アドバイスにならないアドバイスをして、ソウヤはその場を後にした。

一部メンバーの進退についての話は終わった。次は銀の翼商会自体の今後についての話し合いだ。