軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第365話、残ったのは――

準決勝、第二試合。フマーサとソフィアの対決。

第一試合が、開始早々の激突だったのに対して静かな立ち上がりとなった。

「……?」

観客たちは、目を疑う。

両者、始まったというのにその場から一歩も動かない。互いに睨み合ったまま、数秒が経過した。

周囲がざわめき出した頃、フマーサは苦い笑みを浮かべた。

「おいおい、マジか。こっちが四方八方から攻撃してるってのに、まったくの無傷かい」

「何かしたの? まるで見えなかったわ」

ソフィアが煽るように言った。

「ミスター・インヴィジブル?」

その魔法は見えず、相手は自分が何をされたかわからないまま倒れる。

「僕は無色の魔法と呼んでいるんだけどね。君もその使い手かな?」

「さあ、どうかしら。魔法なんて、魔力次第で色も形も変わるわ」

「うーん、困ったな……」

フマーサは肩をすくめた。

「君に話しかけている間に、十発撃ち込んだんだけど、どれだけその防御魔法凄いの」

普通なら魔法の衝突で削られて、魔法のシールドも消滅しているところだ。それにビクともしないとは、ソフィアの張った魔法の強力さを物語る。

「そんなに固かった? まあ、そうよね」

ソフィアはゆったりとした足取りで歩き出す。

「あなたの魔法は届かない。それじゃあ、こちらも反撃といきましょう!」

ライトニング!――ソフィアとフマーサのほぼ中間あたりから電撃弾が飛び出した。

しかし、フマーサも防御の魔法を展開済みだった。

「痺れるねぇ。僕の防御魔法が、ただの一発でガタガタだ」

「じゃあ、連続したら、耐えられるかしら?」

ソフィアは魔法を一発ずつ、しかし連続で放つ。

「くっ、多重障壁!」

フマーサは複数の防御魔法を重ねて展開する。ソフィアの魔法が、障壁を一枚、二枚と消滅させるが、フマーサも新たな障壁を張ることで、攻撃を届かせない。

「あと何枚張れるのかしら、ミスター?」

「……」

フマーサは答えない。いや、答える余裕がなかった。立て続けの攻撃に、障壁はドンドン破壊され、フマーサも次々に障壁を張らないと、防ぎきれない。

少しでも展開が遅れれば、やられてしまう。攻撃は届かずとも、焦燥が彼を攻め立てた。

「私、魔力量には自信があるんだけど……あなたはどう?」

膠着状態に見える。しかし、魔力が尽きれば、決着はすぐにつくだろう。

「でも、次は決勝戦なのよね。……あまり消耗したくはないから、決めるわよ! 浸食!」

魔力を操作、フマーサの展開する防御障壁に干渉。その障壁を形成する魔力に浸食し、その部分の結合を解除する。

すると、防御障壁に穴が開く!

「なっ……!?」

「終わりよ!」

人差し指を向けるソフィア。ライトニングが放たれ、針の穴を通すが如く、障壁の穴を突き抜けて、フマーサにヒットした。

「バケモノめ……!」

フマーサの護符が発動、彼の体は転移した。

「勝者、ソフィア・グラスニカ!」

観衆が熱狂した。ソフィアが駒を進め、決勝のカードが決まる。

ティーガーマスケ対、ソフィア・グラスニカ。

残す試合は、決勝のみ。

・ ・ ・

ソフィアが勝った。

セイジはマスクを被ったまま、彼女の戦いを観戦していた。

当初予想していた通りの展開にはならなかった。ソフィアは、例の回避不能の魔法を使わずに、ミスター・インヴィジブルに勝利した。

必殺技など使わなくても勝てる。彼女はそう言っているのだ。

強者の貫禄。さながら女王だ。ジンやミストは、よくもこんな魔術師を育てたものだ。その才能が羨ましい。嫉妬するほどに。

ソフィアの戦いぶりは、セイジにこう言っているようだ。

「あなたに私の予測なんてできないでしょ?」と。

セイジがソフィアを知っているように、ソフィアもまたセイジを知っている。

彼女に魔法勝負で勝つのは至難の業。だからあらゆる手を尽くしてセイジが挑んでくるだろうことを、ソフィアもわかっている。

ソフィアは、準決勝でセイジの知らない魔法を使った。手の内を見せてくれた? とんでもない。手札がいっぱいあることを見せて、セイジの予想を難しくさせているのだ。

セイジは『見る』ことを重視し、対策を充分に練ってくる。

早撃ちのフルグルの攻撃を逆手にとり、反射で瞬殺したのもそれだ。得意技はその者に絶対の自信を与えるが、相手はそれを一番警戒しているから、出始めがわかれば対処もしやすい。

ハメ技を使ったら、逆にハメられていた。対策されれば、そこに実力差はほとんど影響しない。

魔術師としてはフルグルのほうが優れていただろう。だが結果をみれば、勝ったのはセイジだった。

勝負は力の差だけで決まるものでもないのだ。

どうすればいい?

セイジは悩む。

昨日のバトルロイヤルで、直接対決となった最後、手数の多さに圧倒されて倒された。必殺技を使わずとも、余裕でセイジを負かせられる――と、ソフィアは考えているはずだ。

――そうか。

そこでセイジは、気づいた。回避不能な必殺の魔法は、ギリギリまで彼女は使ってこない。

何故なら、この魔法大会は、ソフィアにとっては自分という存在をアピールするという目的がある。

優勝するのはもちろんだが、最後は派手に勝たねば意味がない。

何が起きたわからない必殺技よりも、誰にでもわかりやすい圧倒的な勝利が彼女の理想だ。

それなら、まだ抵抗の余地がある。

・ ・ ・

ティーガーマスケは、ひとり考えている。

助言者席にいるソウヤやジンには見向きもしない。

「あいつ、爺さんに助言を求めないつもりか?」

「最後は自分ひとりの力で、ソフィア嬢に勝つつもりなのだろう」

ジンは腕を組み、頷いた。ソウヤは眉間にしわを寄せる。

「勝てるのか?」

「さあ。だが、彼は諦めていない」