軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第363話、準決勝へ

勝ち進むのは六色の魔術師ソフィアか、闇の魔術師ヴィオレットか。

まもなく、第四試合の火蓋が切られる。

「すっかり、『六色』が通り名になっちまってるな」

ソウヤが言えば、ジンは頷いた。

「今のところ、唯一無二の称号だからね」

「でも、爺さんは全部使えるんだろ? 全色の魔術師」

「全色か……」

ジンは微妙な表情を浮かべた。どうやらお気に召さなかったらしい。

そして試合が始まった。

「ファイアボール!」

牽制とばかりに、ソフィアが火の玉を三つ放った。

紫色のフード付きローブをまとうヴィオレットが片手を軽く振ると、黒い円が現れた。

それはまるで盾のように、飛来する火を防いだ。

「何か、魔法が吸い込まれたように見えた」

「実際に吸収されたな」

ジンがそう指摘した。

リング上のソフィアは、自身の魔法が防がれ、鼻をならす。

「ふうん、やるわね。これでどう!? アイスブラスト!」

氷の刃が複数具現化。それが矢のように飛翔する。

「――なんで、短詠唱なんだ……?」

観客席のソウヤは、違和感を抱く。ソフィアは無詠唱でも魔法が使えるはずだ。

実際、ソフィアの魔法は、ヴィオレットの黒い渦のような魔法によって阻まれている。

「あれは囮だ」

ジンは指摘した。

「見ろ、正面で引きつけている間に――」

ヴィオレットの後ろ上方に光が現れる。ライトニングの魔法だ。片方を詠唱しつつ、別の魔法を無詠唱、つまり思考で制御するダブルスペルである。

しかし――

「無駄です」

ヴィオレットの頭上に黒い渦が発生して、電撃弾を飲み込んだ。

「貴女が、無詠唱で魔法が使えるのは知っています」

フードに隠れて、その表情は見えないが、ヴィオレットの声は弾んでいた。

「ワタシは相手の魔法詠唱を遮って、解除するのが好きなのですが、さすがに無詠唱ではカウンタースペルは使えない。だから手を変えました。このダークゲートの魔法で、貴女の魔法を全て吸収して、攻撃を封じると」

「つらつらと説明をどうも」

ソフィアは杖を構え、サンダーボルトを放つ。それは雷の竜。しかし、ヴィオレットのダークゲートなる魔法が、それをも吸い込んだ。

「無駄ですよ。貴女の魔法は通用しません」

一歩ずつ距離を詰める闇魔術の使い手。

「どんどん攻撃してください。このダークゲートがその魔力を吸収して、さらに強くなります!」

「なるほどね。魔法を封じられた時のために、とっておきを用意しておいたんだけど、手を変えてきたんじゃあしょうがない」

ソフィアは嘆息した。ヴィオレットの声に笑みが混じる。

「降参ですか? 六色の魔術師」

「誰が!」

ソフィアの杖から水の塊、アクアブラストが発射された。それはたちまち津波のように広がり、押し寄せる。

「ふふ、このダークゲートに隙間があるとお思いですか?」

ぶつかる水の塊をすべて闇の渦が飲み込む。水滴ひとつ通さない闇魔法に、口元を綻ばせるヴィオレットだが、次の瞬間――

「へ……!?」

胴体にソニックブラストの直撃を受けて、吹き飛ぶ。

「水魔法は囮よ」

ソフィアは自身の耳もとにかかる髪を払った。

「あいにくと、私、防御魔法の裏に魔法を送り込むことができるのよね……」

従姉妹のセリアを叩きのめした障壁無視の一撃。

ヴィオレットの目を押し寄せる水魔法に引きつけている間に、ダークゲートの裏にある魔力で、風魔法を発生させる。

大気中にも魔力は存在する。その気になれば、距離に関係なく魔法は発動させられる。

「私の勝ちよ、闇使い」

ベスト4が出揃った。

・ ・ ・

「やっぱり華があるよね……」

ティーガーマスケことセイジは、ソフィアの戦いぶりを見ていた。

六色の魔術師――賞賛と尊敬を集める美少女魔術師。突然現れた新星を、セイジは知っている。

呪いのせいで、魔法が使えず、苦しんだ彼女。それでも諦め切れずに、あがき、努力を重ねてきた彼女。

共に学び、日々成長していくソフィアの姿を、セイジは間近で見てきた。

だから、素直に凄いと言える。

同時に、自分がどうあがこうとも、彼女の能力に追いつくことはないと感じた。

伝説の魔術師、歴史に名を残す偉大な人物になるだろうことは間違いない。

すでに彼女の伝説は始まっている。その手始めが六色の魔術師。

彼女は、どんどん大きくなる。

――凡人である僕と違って……!

ソフィアは、天才だ。魔力量の多さは圧倒的ではあるが、それを縦横に使いこなし、かのクレイマン王の指導でさらに手がつけられなくなった。

もはや、彼女に魔法で勝てる人間などそうはいない。もちろん、師であるジンや、ドラゴンたちは別だ。

この魔法大会で魔法で勝負すれば、セイジはソフィアに百戦百敗だろう。

あの、相手の防御の裏、つまり回避不能の至近距離からの魔法を防ぐ手がない限り、ソフィアは一歩も動くことなく、勝つことができる。

初戦からそれができたのにしなかったのは、他の参加者たちがそれを見て、対抗策を講じると面倒だから。必ず勝てる技を、極力温存する。

だが、セイジの読みでは、彼女の次の対戦相手であるフマーサには、その回避不能魔法で瞬殺すると思われる。攻撃が見えない相手とまともにやり合うくらいなら、速攻で終わらせるのが最善だからだ。

そして決勝戦でも、それで相手を秒で倒し、そのまま優勝だ。

対策がなければ、負ける。

セイジは思案するが、あいにくとそこまでの時間はなかった。

何故なら、準決勝が開始されるからだ。

魔法格闘士ティスは、すでにリングに上がり、じっとセイジ――ティーガーマスケを睨んでいた。戦意みなぎり、待ちきれないという顔をしている。

彼女を倒さないと次はない。

セイジはスッと呼吸をして、気持ちを鎮めると、リングへと向かった。

わぁっ、と、うねりのように観客たちの声が響く。