軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第347話、バトルロイヤル

闘技場には、百人近い参加者が集まっていた。

大半が魔術師で、それぞれの得意属性を示す色の装備を持っている者が多かった。

それ以外だと、戦士系や軽業師、踊り子のような衣装の者の姿もちらほらとあった。地味な色合いの戦士や魔術師は、冒険者ではないだろうか。

「じゃあ、頑張ってください、ソフィア!」

「ええ!」

リアハに見送られ、ソフィアは闘技場内へと歩く。間もなく、生き残りを賭けたバトルロイヤルが始まる。

周囲の参加者の視線が、矢のように突き刺さる。六色の魔術師は、今大会の注目株だ。その一挙手一投足は、皆の視線を集める。

緊張した。

ソフィアは、深呼吸をする。気持ちを落ち着ける。魔法は心だ、気持ちだ、と言ったのはミスト師匠だったか。

『結界を張ります。以後、バトルロイヤル終了まで、闘技場と客席間の移動は不可能になります』

拡声魔法で、声が会場に響いた。

魔法が飛び交い、炸裂する場となる。客席に流れ弾がいかないように、防御結界が張られるのだ。

『参加者の皆様、魔法護符を起動させてください』

アナウンスに従い、ソフィアは胸もとに下げる護符に触れる。他の参加者たちも、それぞれ自分の護符に触れた。

これは参加者を守ると同時に、勝敗を判定する魔道具である。

所有者の全身を防御魔法が包むが、その防御効果が一定まで下がると『やられた』判定となり、強制転移魔法が発動して退場する、という仕掛けだ。

攻撃魔法や物理攻撃を防いでくれるが、攻撃を食らうと防御を維持する魔力が減る。これが危険域に達する直前に自動離脱することで、参加者の命を守るのである。

なお、ぶっちゃけ、この防御魔法は一、二回程度の被弾で転移魔法が発動してしまうので、本当に命綱程度の期待しかできない。

だから、参加者は自前の防御魔法を使ったり、盾などを持ち込んで防御、あるいは自力での回避で、この護符に頼らないように戦わなくていけない。

さて――ソフィアは杖を構える。他の魔術師たちも、臨戦態勢である。近くの者たちはもれなく、ソフィアを見ている。

それだけ脅威と見なしているのだ。

『それでは――』

拡声魔法の声が、男の声に変わった。この声は、アルガンテ王のものだ。

『存分に戦うがよい! 諸君の奮闘に期待する! バトルロイヤル、開始っ!』

魔術師たちが一斉に呪文を唱え出す。

――遅い!

「爆発――!」

ソフィアの短詠唱、炸裂! 紅蓮の業火が彼女を中心に発動し、それは広がった。

魔術師たちの防御の詠唱の最中に突如襲う爆炎。防御の先に炎が周囲の参加者たちを飲み込み、次々に護符が強制離脱を発動した。

・ ・ ・

「おおおっ!!」

客席がどよめく。昨日誕生した六色の魔術師ソフィアを、そのほとんどの者が注目していた。

だから、昨日見た魔法以上の大火球が発生し、周囲の者たちを一掃していくさまに観客たちは驚き、歓声を上げた。

「いいねぇ! こういうのを待ってた!」

闘技場外周壁面、つまり一番高いところにいた水色髪の美少女――アクアドラゴンは両手を突き上げた。

客席ではなく、普通は登れないその場所に陣取っているのはドラゴンたち。腕を組んで会場を見下ろしていたクラウドドラゴンは口を開いた。

「周囲に魔法を拡散させることで、攻撃と同時に防御と成す。先手が肝心のスタートで、最小の行動かつ最大の効果を発揮する……」

「そふぃあ、すごーい!」

足をぱたぱたと動かして、フォルスが万歳する。影竜は、何を考えているかわからない表情で見下ろしている。

アクアドラゴンが目の上に手を当て、さながら望遠鏡で覗き込むような仕草をとった。

「どれだけ減った?」

「ざっと半分くらい」

クラウドドラゴンは即答した。

「近くの者は無理だけど、離れていた者には防御が間に合った者も少なくない」

後は単純に効果範囲外だったものとか。

クラウドドラゴンは目をほそめた。

「あのトラマスクも、きちんと一番離れていたわね……」

トラマスク――セイジは、スタート地点で、ソフィアとは正反対の位置にいたのだ。

別に打ち合わせをしたわけではない。ソフィアに助言するミストが、まず先手を好む性格だから、最初に大魔法をぶっ放すと予想したのだった。

「お、そのトラマスクが動いた!」

「セイジ、がんばえー」

アクアドラゴンとフォルスの声。クラウドドラゴンは薄く笑った。

「面白い」

・ ・ ・

ティーガーマスケ――セイジは、ソフィアの大魔法によって、参加者が呆然としている間に行動を開始した。

「瞬脚っ!」

足に風の魔法をまとい、スピードアップ。

「戦場でよそ見をするなんて――!」

風のような加速で、後ろを向いている魔術師の背中にマジックブレードを叩き込む。

「なにぃー!?」

切られた魔術師は、護符によって無傷だったが、転送魔法が発動して退場となった。

――いい。攻撃しても死なないのなら、思いっきりやれる!

セイジは、自前で製作した魔法カードを十枚展開する。

修行によって、自分の魔力から魔法カードを作り出せるようになった。そして、すでに何の魔法を発動するかは、カードそれぞれに仕込み済み。

「行けよ! 一番から五番!」

ファイアランスが発動。五つの炎の魔法は、いまだ大魔法ショックを引きずり、注意が散漫な参加魔術師たちを襲い、離脱に追い込む。

「あいつ、魔術師――!?」

完全に油断してたか、セイジを見て愕然とする魔術師。

「遅い、七番!」

ライトニングの魔法が発動。何かしらの呪文を唱え始めたその魔術師に電撃弾を命中させて、ご退場。

「くそっ! 雷神よ、稲妻の矢を以て、我が――」

「遅いよ」

詠唱中の魔術師の目の前に、虎のマスクが肉薄した。悲鳴を上げる間もなく、マジックブレードが胴を直撃し、魔術師は吹き飛んだ。

その体が地面に着く前に、転送魔法により、魔術師は消えた。