軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第320話、海の底へ行くために

潜水艦――ジンが言うには、潜水艇らしい。

「さすが、偉大なるクレイマン王。何でも持っているんだな」

ソウヤがそう言うと、かつての王は苦笑した。

「何でもは持っていないよ」

「それにしても、手間をかけたよな」

「君が、イリク氏の同行を許可したせいだろう?」

チクリとジンは言った。

「彼に浮遊島を見せないために、わざわざ眠らせて、潜水艇を取りにきたんだ」

そうなのだ。ジンが保有する潜水艇は浮遊島にある。クレイマン遺跡は他言しないと決めた手前、オブザーバーであるイリクにも見せるわけにはいかなかったのだ。

だからゴールデンウィング号で浮遊島まで移動の際には、ジンが睡眠の魔法でイリクを眠らせた。

さて、その潜水艇だが――

「潜水艇と聞いていたが、ずいぶんとピカピカしてるな」

「スチームパンク風といってほしいね」

ジンは皮肉った。潜水艇はメタリックな外装で、どこかサメを思わせる。先端が鋭角的なせいで、魚のように見えるのかもしれない。

「オレ、本物の潜水艦って見たことないから、イメージが大してないんだが――」

そう前置きしてソウヤは言った。

「黒くて、丸っこくて、でっかいの想像した」

「海軍における潜水艦のイメージだな」

「あとは、探査船? こうガラスのドームみたいなのぞき窓があって、海の中を見えるやつ」

「ただのガラスでは深海の水圧には耐えられないよ」

ジンは苦笑した。

「だいぶ魔法や魔道具で作っているから、かつて私たちがいた潜水艇とは趣も違うさ」

全長は三十メートルほど。割と大きい。

「それじゃあ、ソウヤ。これをアイテムボックスにしまってくれ」

「おう」

収納するソウヤ。そこから再び、ゴールデンウィング号に戻る。

「で、爺さん。どこからこの潜水艇に乗っていくんだ?」

「クラウドドラゴンが言っていた世界の果ての孤島近くまでは飛空艇で行く」

「ほとんど目的地じゃないか」

「のんびり潜水艇で行ったら何十日かかると思っているんだ?」

潜れないから潜水艇に頼るのであって、それがなければ、飛空艇で空を行くのが断然速い。

というわけで、ゴールデンウィング号で南海を飛ぶ。その間に、潜水艇に誰が乗っていくか、という人選に移る。

「はい! おれ乗りたい!」

機械好きなライヤーが志願した。しかしジンは首を振った。

「あいにくと、君は潜水艇を動かしたことがない。訓練もなしに操縦させるのはリスクが大き過ぎる」

何かトラブルが発生した時、対処するのがど素人か経験者か。どちらが動かす船に乗りたいかは言うまでもない。

「操縦はいいけど、ついていくだけでも……」

海の底が見てみたいんだ、と、探検家のようなことを言うライヤー。

「だが君、魔法が使えないだろう」

ジン曰く、この潜水艇には魔力の有無が影響する装置が多いため、非常時の対応には魔術師などが望ましいらしい。

「操縦は、私がやろう」

「異議なし」

ソウヤは、ジンに同意した。

「乗組員は、魔術師関係がいいってことは、イリクさんが同行するのは……」

「適性で言うなら、申し分ない。宮廷魔術師を務められるほどの魔術師なら、魔力量も問題ない」

ジンはそこで付け加えた。

「以上の理由からミストか、ソフィアも同行資格はある」

「ワタシは遠慮するわ」

ミストが断った。

「海の底に行くんでしょ。ワタシはいいわ」

「……そうなると」

ソウヤは、我関せずという顔をしているクラウドドラゴンを見た。

「アクアドラゴンと交信することになった際、同じドラゴンがいると安心できるんだが」

「わかった」

伝説の四大竜のひとりでもあるわけで、魔力量も頼りにできる。必要不可欠メンバーと言えるだろう。

「そうなると、オレはどうしようかな。潜水艇って人数制限があるだろう? 海の中じゃ、特に出番なさそうだし」

「我らがリーダーは参加するものと思っていたがね」

ジンはやんわりと言った。

「君のアイテムボックスは、何かあった時の切り札になると思う」

「海の中じゃ使えないんじゃね?」

「潜水艇の中なら、使えるだろう?」

老魔術師の指摘に、ソウヤは頷いた。

「言うほど役に立つと思えねえけど、行くよ」

「君が同行するだけで、成功率は三割ほど上がる」

「それどういう計算?」

「テキトー」

ジンは流した。ソウヤはそれ以上ツッコミを入れる野暮ではなかった。

が、ここでひとつ問題が発生。

「ソウヤが行くなら、ボクも行きたいー!」

フォルスが潜水艇に乗りたいと言い出したのだ。

「これから行くのは海の中だ。危ないから、駄目だ」

「ボクもいきたいぃー!」

ジタバタするフォルス。これまでは連れていったが――

「遊びに行くわけじゃない。今回は駄目」

「いーきーたーいーっ!」

半泣きフォルスは駄々っ子。子供というのは、目的を果たすために手段を選ばない。

――わかってる。子供に難しい話は、たとえ正しくても理解できない。

ここで苛立ちより、同情がきてしまう辺り、ソウヤは子供に甘かった。

「影竜ママは?」

「お前の行きたい場所に行っていいって言ってたー」

――それ、追い出されたとかじゃないよな……?

少し不安になるソウヤ。そのままの意味だと子供を突き放すようで、かわいそうな響きがするのだが。

――影竜め。オレを父親代わりに、片方を押し付けているんじゃないだろうな……。

もちろん、これは考えすぎだろうが、ある意味、影竜から信頼されているのかもしれない。

どうしたものか……。何となくだが、影竜はフォルスをかなり放任しているような気がする。それってどうなのだろうか、と思うソウヤだった。