軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第313話、火をつけた犯人は?

バロールの町の近くに到着した。

ソフィアのいたグラスニカの実家は、町の郊外にあると言う。沈みつつある夕日。ゴールデンウィング二世号から眺めていれば、目的のお屋敷が――

「……燃えてる?」

「ええっ……!?」

飛空艇で近づくにつれて、グラスニカの屋敷が炎に焼かれ、ほぼ崩れかけているのが見てとれた。

「なんで家が燃えてるのっ!?」

ソフィアが声を張り上げた。当然、ソウヤたちにもわからない。

「……盗賊にでも襲われたか?」

「程度の低い盗賊ならば……」

イリク・グラスニカが、手すりをつかんで言った。

「警備の魔術師でも充分だったはずだ。屋敷を燃やされるなど……!」

ふだんから冷静そうなイリクの顔に浮かぶは強い憤り。

ソウヤはブリッジに振り返った。

「ライヤー! 近くに船を下ろせ!」

「アイアイサー!」

ゴールデンウィング二世号は速度を落として、ゆっくりと降下した。

グラスニカの屋敷は、ほぼ全焼の有様だった。

「そんな……」

ソフィアは、自分が住んでいた実家の変わり果てた姿に呆然とする。ソウヤはイリクと顔を見合わせる。

「ここには何人の人間が?」

「家族以外に警備や使用人が十名ほどいたはずだ」

「ミスト、何か反応はあるか?」

「……いいえ」

魔力による探知で調べるミスト。グラスニカの屋敷はかなり大きいが、大部分が焼け、わずかに残っている部分が延焼しているという状態だった。

「家の人は避難した……?」

「そうであって欲しい」

イリクは祈るように言った。ソフィアはショックを受けて膝をついている。レーラとリアハ姉妹が、そんなソフィアについている。

「あ、待って――」

ミストが視線を転じた。

「地下室がある……そこに、わずかながら反応があるわ」

「シェルターだ!」

イリクは叫んだ。

「そこに避難したんだ!」

「行きましょう!」

ソウヤが言えば、待機していたカーシュ、ガル、ダル、オダシューらが救助に走った。

イリクが先導し、地下シェルターへと到着。しかし当然ながら、内側からロックがかけられていた。

「外から開ける手段は?」

「私の魔力を流すことで開けることができる」

イリクはそう言うと扉に触れる。中を開ければ横になっている人も含めて十数人の姿があった。メイドやコック、警備の人間もいる。

「みんな、無事か!?」

「イリク様!」

一様に驚きが走った。

「い、イリク……」

「母上! ご無事で!?」

駆け込むイリク。

――母上ってことは、ソフィアのお婆ちゃんか。

ソウヤは思った。何人かがこちらに警戒の視線を向けてくる。明らかに部外者だからだろう。

「いったい、何があったのですか!?」

「それが……私にもよくわからない」

年配の女性――ソフィアの祖母だろう人物は、そのしわの刻まれた顔を横に振った。

「気づいたら、皆、眠らされて、ここに押し込められておったのだ。一度出ようとしたら、扉の向こうが火事になっていて、やむなく退避しておったのじゃ」

「イリク様! 外の火災は――?」

警備担当らしい武装した男が問うた。イリクは首を振った。

「私たちが来た時には、すでに焼けていた」

そんな……、と使用人たちから声が上がる。肩を落とした彼、彼女ら。イリクは問うた。

「誰か、なにが起きたのか知っている者はいるか?」

「いえ……」

否定的な反応。十数人もいて、全員気づいたらシェルターにいた。

――何とも妙じゃないか。

ソウヤは首をひねる。

「ご当主様……」

ひとりの青年が手を挙げた。格好からすると庭師だろうか。

「どうしたザック? 何か知っているのか?」

「はい、その、とても言いにくいことなのですが……」

ザックと呼ばれた青年は、うつむきがちに言った。

「ソフィア様が……その、魔法を使うところを見まして」

「ソフィア様が魔法だと!?」

周りが驚いた。やはりというべきか、ソフィアは魔法が使えないというのが、ここの共通認識のようだった。

「ソフィアがどうしたって?」

イリクは問えば、ザックは言った。

「はい、ソフィア様はお屋敷に炎の魔法を使って……」

「ソフィアが……!?」

さらに驚きの声。これにはソウヤたちもびっくりした。ソフィアが魔法を使えるのは知っているが、屋敷に火をつけるなど不可能だからだ。

――こいつ、嘘を言っているのか?

ソウヤは睨む。ザックは周囲の者たちから質問攻めにあっていた。

「お、おれ、見たんですよ。屋敷の人間に魔法を使って眠らせていくのを。何をしているのかと声をかけようとしたら、おれも眠らされて」

それで次に気がついたらシェルターにいたらしい。

「本当か?」

ソウヤは口に出してみて、明らかにそれはないと思った。

何より、辻褄が合わない。

火をつけた、眠らせた――それはどちらが先か? ほぼ同時にやったというのもおかしな話だ。犯行を隠そうと思って眠らせたのなら、目撃者であるザックが始末されていないというのも妙だ。

家の人間を全員シェルターに入れるというのも不自然だ。……家の人間を傷つけるつもりがなかったから、という可能性はあるが、それでも証言される可能性のある目撃者を生かしておくだろうか?

そもそも、ソフィアはソウヤたちとゴールデンウィング号にいて犯行は不可能なのだ。

「ザック」

イリクは静かな口調で言った。

「お前は嘘を言っているな?」