軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第294話、ついに――

浮遊島に戻ったソウヤは、さっそくジンに大精霊の泉の水を鑑定してもらった。

「素材として使えるな?」

「……ふむ」

老魔術師は顎髭を撫でた。

「まさか、駄目なのか?」

せっかく苦労したのに、とソウヤは思ったが、ジンは首を横に振った。

「違う。とても強い力を秘めている。正直いえば、薬を作るまでもない。この水だけで、充分、魔力欠乏を治せるとある」

「へ……? そうなの」

そういえば、精霊の泉の水は、あらゆる病を治す力がある、とグレースランド王国の伝承があるとリアハが言っていた。

ジンは素材と言っていたが、単独でも成し遂げてしまう水だったとは。

「大精霊も最大限、気を利かせてくれたようだね」

「むしろこっちが感謝するしかねえわ」

ソウヤはお祈りの仕草をとる。

「これで、レーラは救われるんだな?」

「ああ、さっそく、この水を与えるといい」

「よっしゃ!」

さっそく、アイテムボックスの時間経過無視ゾーンから、レーラを引っ張り出す。

真っ青で、意識が消えかかっているレーラの顔を見た時、きゅっと胃が縮むような気分になった。

「レーラ。この水を。楽になるぞ」

「ソウ、ヤ……さん」

「ほら、飲めるか」

彼女の背中を支えて、上半身を起こしてやると、精霊の水の入った瓶を口に近づけてやる。レーラは小さく口を開き、ゆっくりとその水を飲んだ。

喉が上下し、確かに水が彼女の体に入ったのを確認。レーラはぐったりと、ソウヤの腕にもたれ掛かる。

効いてる? ねえ、これ効いてる? ――ソウヤはじっと、レーラの様子を見つめる。穏やかな小さな吐息。

――まさか、このまま息を引き取るとか、なしだぜ……。

不安でいっぱいになる中、見守っていたジンが言った。

「顔色がよくなってきた。精霊の水は効いている」

「そいつはよかった……」

「しばらく、そこのベッドで休ませよう。魔力が徐々に戻っている最中だと思う」

「わかった」

ゆっくり休ませよう。回復して、また普通に動けるようになるまで、もうすぐそこだ。

・ ・ ・

精霊の水により、レーラは魔力欠乏による死は回避された。

それを皆に報告しようとしたソウヤだが、まず待っていたリアハに聞かれ『大丈夫』と伝えたら、彼女は泣き出してしまった。

「よかった……姉さん。本当に……」

リアハは姉のそばにいたいと言ったので、彼女にはそのようにさせた。

「ソウヤさん、ありがとうございました!」

別れ際に、グレースランド王国のお姫様は頭を下げた。

「おかげで、姉さんが助かりました」

「皆で頑張ったからだ」

ソウヤは、そう言った後、他のメンバーを集めて、レーラが快方に向かっていることを報告した。

「ようやく……」

カーシュは目を閉じ、天を仰いだ。感動しているのだろう。戦友であるダルが、そんなカーシュの肩を叩いた。

「よかったですね」

万歳!――オダシューらカリュプスメンバーも大いに喜んだ。

「おれらの呪いを解いてくださった恩人が、またお戻りになられるんだ!」

よかった、と口々に元暗殺者たちは顔をほころばせる。ふだん無表情なガルでさえ、その表情は優しかった。

「ま、何にせよ、めでたいな!」

直接の交流はほぼないものの、ライヤーはそう声を弾ませた。

「聖女様の復活だ! こりゃ盛大にお祝いをしないといけねえわな。なあ、旦那?」

「あ? ああ、そうだな」

ソウヤは同意した。

「ただし、レーラが目覚めてからな」

というわけで、お祝いの会の準備に取りかかるソウヤ。飲んで騒いでとなると、料理もかなり消費することになる。

ミストなどは、ここぞとばかりにベヒーモスやヒュドラ肉のステーキを要求してくるに違いない。

――うちの連中は、肩肘張るお食事会より、気軽なものがいいんだろうな。

焼肉パーティー、つまりバーベキューあたりが無難か。目覚めたばかりのレーラに、はたしてステーキや焼肉は大丈夫かと思わずにはいられないが、そこは別メニューで補おう。

――やっぱ食材か。

生半可な量では足りない気がする。とくに、こちらと接触が多くなった影竜親子が、この機会を逃すとは思えない。

ソウヤは少し考え、肉の補充を考える。売り物用はたっぷり保存してあるが、それを転用するのもあれなので、適当な場所で魔獣を狩ろうと決めた。

ジンのもとに行ってたずねる。

「ベヒーモスとか、どこにいるか知らね?」

バーベキュー、ステーキと説明したら、ジンは言った。

「それなら、ここに多種多様な魔獣の肉があるよ」

「マジか!」

「そりゃ、かつて人間が住んでいたんだ。食料庫くらいあるさ」

「それって5000年前のものじゃないよな?」

「ああ、比較的新しい。量もあるから気にするな」

ジンは不敵に笑った。

「人が住む場所だからね。クレイマン王の食料庫を侮らないことだ」

自信たっぷりに老魔術師は言った。食料については、とても頼もしいスポンサーがいたので、お任せする。

ジンは、さっそくメイドたちを動員した。食料庫から必要になるだろう肉や野菜、果物などを持って、浮遊島の城の前の広場を会場と定める。

ソウヤも、調理器具を用意して準備にかかった。

といっても、会場の準備や食材の用意などは、ジンのところの機械人形メイドたちがやってくれたので、ソウヤは、もっぱら作る組に回った。

「ベヒーモスとかワイバーン肉とか……何でもあるんだなぁここ」

いったいどう手に入れているか謎ではあるが、普通に狩りでもしているのだろうか。

メイドたちに混じって肉の準備をするソウヤに、セイジが手伝いにきた。

「レーラさん、治せてよかったですね」

「おう。そうだな」

「よかったですよ。ソウヤさんも嬉しそうで」

何気ない一言だったが、ソウヤはハタとなる。ずっと一緒にやってきた仲間には、わかるのだろう。大切な仲間たちが全員解放されて、その重圧が消えたのが。

「……うん。よかった、本当に」