軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第292話、大精霊の島に行こう

クラウドドラゴンは、浮遊島を新たなテリトリーとした。

かのドラゴンとのやりとりによっては、戦いになっていただろう可能性もあっただけに、戦闘が回避されたのは喜ばしいことだった。

少なくとも、ソウヤは仲間たちが誰ひとり傷つくことがなくてよかったと思った。

「案外、話がわかるドラゴンでよかった。なあ、ミスト?」

「そうね」

何だか微妙な表情をしているミスト。

「何だ、戦いたかったのか?」

「冗談。あれでドラゴン族のトップクラス。老いていても、ワタシなんかよりは強いわよ」

「ミストだってメチャ強いのになぁ」

ソウヤは考える。それより強いというクラウドドラゴン。さすが伝説の四大竜か。

「うん、まあ、そうね」

ミストが微妙に照れたような声を出した。強いと言ったのを褒めたと解釈したのかもしれない。

「しかし、上位ドラゴンは人化できるのは知っていたが、あれ凄いな。あれでご年配には見えんぜ?」

「変身した姿は自由よね」

ミストが鼻をならす。ジンは顎髭を撫でた。

「クラウドドラゴンが女性だったとは思わなかった」

「あ、オレも思った」

ソウヤは同意した。

「それにしても爺さん、よかったのかよ? 島をテリトリーにすることを許して」

「それは本気で言ってるのか、ソウヤ?」

ジンが不思議なものを見る目で言った。

「君だって、アイテムボックス内を影竜とその子供たちに開放しているだろう?」

「あ」

言われてみれば、その通りだった。ジンは笑った。

「あれを見ているから、私もあっさり認めることができた。君という前例のおかげだ、ありがとう」

「いや、そんなお礼を言われるようなことじゃないぜ?」

「ドラゴンと流血沙汰にならなかったことを思えば、大いに意味がある。私はその気になれば、クラウドドラゴンと戦っただろうし、あのまま衝突という展開もあり得た」

「そうなのかな……」

ソウヤは苦笑すると、ジンは続けた。

「それに君が私の味方をしてくれたおかげでもある。感謝しているよ」

――ガチで何もしていないんだがなぁ。

ソウヤは頭をかいた。ジンは、城へと足を向ける。

「クラウドドラゴンの件はよしとして、後は本来の目的である大精霊だな」

「リアハたちにお願いしたが、間に合っているといいな」

存在が消えかけていた大精霊の分身。嵐が収まった今、本体のいる大精霊の泉へ仲間たちを向かわせた。

「君も様子を見てくるかね? クラウドドラゴンが暴れるようなことはないだろうし、浮遊島に残らなくてもいいんだぞ」

「そうだな。せっかく来たんだ。大精霊のいる島ってのを見ておくか。行くかミスト?」

ソウヤが誘うと、ミストは「ええ」と頷いた。

ジンと別れ、下の島へと移動しようと浮遊ボートの発着場へと向かう。そこへ背後から声が聞こえた。

「ソウヤー!」

ドスドスと駆けてきたのは、ベビードラゴンの片方、フォルスだった。嵐の後、影竜とその子たちは、またもアイテムボックスの外に出ていたのだが。

「お出かけ? ボクも行きたい」

「お母さんは何て?」

「きいてくるー」

バタバタと忙しく引き返すフォルス。

「素直でよろしい」

その背中を見送るソウヤは、ふとミストに聞いた。

「そう言えば影竜には話したのか? クラウドドラゴンのことは」

「話したわよ。でなきゃ、子供がうろつくなんてできないでしょ」

ドラゴンは基本的に群れない。気に入らなければ、同族にだって牙を剥く。

「ま、クラウドドラゴンはそこまで狭量じゃないわね。そもそも、影竜はここをテリトリーにしているわけじゃないし」

「テリトリー争いは起きないってか」

なら安心。ミストも頷いた。

「古竜と言っても、話が通じる相手よね。誰彼構わず噛みつくのは、ファイアードラゴンくらいじゃないかしら」

「……」

「なに、その目は?」

ミストがソウヤの意味深な目を見て、肩をすくめた。

「ドラゴンに対しては、よ。人間は知らないわ」

人間相手なら、ドラゴンは、だいたいテリトリーから追い出そうと攻撃してくるものだ。ファイアードラゴンくらい、どころではない。

「ソウヤー」

ドタドタとフォルスが戻ってきた。

「行っていいってー」

「じゃあ行こう」

というわけで、ソウヤとミスト、フォルスは発着場に向かった。

浮遊ボートは、この前ジンが作っていた魔力ジェットを載せた型ではなく、風魔法の噴射板と小さな帆を使った、風力推進のものだ。

動かすにはコツがいるらしいが、ボートにはジンが用意した機械人形がいて、操船をやってくれる。

「あんた、ちょっと小さくなれない?」

「むりだよー」

ミストがドラゴン姿のフォルスに文句をつけたが、当のフォルスはまだそこまで器用ではないようだ。

五人くらいは乗れるボートなのに、ひどく手狭だ。

「では、動きます」

機械人形――アズゥという青髪のメイドが、ボートを動かした。

「うわぁー」

「ちょ、動かない」

空を飛んでいるボートにフォルスは興奮して、よく見ようと動いた結果、少しボートが傾いた。バランスというものがある。ミストの不満をよそに、アズゥは涼しい顔で帆の向きと風の噴射板を動かして調整していた。

「ねえねえ、あそこに行くのー?」

「そうだ。大精霊の泉があるんだ」

ソウヤが答えると、フォルスは目をキラキラさせていた。

緑溢れる大精霊の島。あれだけ凄まじい嵐に囲まれていたのが嘘のように、太陽の日差しを浴びている。

しかし、近づくにつれて、吹き荒れた嵐の跡が見えてきた。