軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第28話、通行人に声をかけたら

街道移動は、コメット号で。

浮遊バイクを運転するソウヤ。そしてバイクに繋がっている荷台には、ミストとセイジが乗っている。

「浮いてる……」

そう呟くセイジに、ソウヤは答える。

「その荷台に浮遊魔法がかかっているんだ。クレア……昔、パーティーを組んでいた魔術師に頼んだんだ」

荷台に車輪はついているが、止まっている時の設置用か、手で荷台を押す時用だ。バイクで牽引している時は地面より少し浮いている。

しばらく走っていると、向かいから人の姿。

「……一人か」

マントを外套代わりにする格好からすると冒険者か。いや肩掛けの大きな鞄があるから商人、行商の線もある。

と、まだ距離があるうちから、身構えられてしまった。

「あらあら、向こうは、こちらを警戒しているわよ」

ミストが楽しそうな調子で言った。

「んー、見慣れないからマジ警戒されるか」

「そりゃそうですよ」

セイジが当然と言わんばかりにため息をついた。

魔獣や盗賊に注意しながら歩いている旅人が、初めて見るバイクに無反応なはずがない。あまりスピードを出すと、相手からしたら怖いだろうし、少し速度を落として。

「ちょっと止まって、お喋りしようかと思ったけど、やめだ。挨拶だけして通り過ぎるわ」

止められたら止まるつもりだが、おそらくこの人はしないだろう。実際、やや街道から離れて、こちらを素通りさせるつもりのようだ。だが視線はじっとこちらを見たままだ。

――別に、とって食おうってわけじゃないんだけどな。

「こんちわ!」

その旅人とすれ違うところで、ソウヤは大きな声で挨拶だけした。旅人――若い男はポカンとした顔になり、そのまま浮遊バイクを見送った。

ミストが笑う。

「声をかけた途端、間抜けな顔になったわね」

「……僕らを盗賊とかと思って警戒していたんでしょうね。それが違うとわかって安堵したんでしょう」

「しばらくは、こっちから声をかけるのはやめよう」

必要以上に警戒されては商売も何もあったものじゃない。特に一人旅など、用心していて当然だ。

向こうからアプローチをかけてきた時のみ、対応しよう。ソウヤたち銀の翼商会は、今は無名である。認知されるようになれば、相手から声をかけられるようになるだろう。

「焦らず、慎重に、そして着実に、だな」

ソウヤは自身に言い聞かせる。まだ一人目だ。

コメット号を走らせることしばし、今度は六人組を発見。マントに武器――冒険者だろうか。

――あぁ、ガチで警戒されてるわ……。

剣とか斧とか武器を抜いている。ミストが愛用の槍に手をかけた。

「ひょっとして、盗賊だったりー?」

ひぇ、と荷台で小さくなるセイジ。ソウヤは首を横に振る。

「まー、それなら退治するだけなんだけどな」

襲ってくる敵は断然、排除。それが魔獣や夜盗など、街道の通行を脅かす存在なら積極的に掃除するつもりでいた。

「とはいえ、今回はこっちが怪しいからだろうなぁ」

しかし、冒険者と思われる彼らは道を開けるでもなく、こちらを注視している。出方を見定めようとしているのだろう。こういう時は、さっさと素性を明かすに限る。

「よーう、冒険者かい!?」

速度を緩め、ソウヤは大きな声で呼びかけた。夜盗の類に見られないように武器は構えない。

「あんたらは何者だっ!?」

相手からも大きな声でお返事。三十代くらいか、立派な鎧をまとった戦士だ。

「銀の翼商会だ! つまり、行商だよ!」

「商人か!」

返事してくれた戦士が剣を下ろした。まだ後ろの連中が武器を構えているが、気にしないことにする。見たところ、ソウヤが本気を出せば、おそらく負けない程度だと思う。

「不思議なモノに乗ってるな。……馬がない馬車か?」

「魔道具だよ。知らない? 勇者の伝説。浮遊バイクを乗り回していたってやつ、あれと同じ」

知っているかもしれない例を出せば、納得されやすいかと、かつての自分を引き合いに出すソウヤ。これからも死んだことになっている勇者をどんどん利用するつもりである。敢えて勇者の名を出し、それに憧れてリスペクトしている、という設定だ。だから、かつての勇者と『名前が一緒』でも勇者マニアとして誤魔化していく予定。

「勇者? それって、何年か前に魔王を討伐して、共に倒れたっていうあの――?」

「十年前な。そう、その勇者だ」

冒険者たちの目に好奇の色が浮かぶ。ソウヤは早速、行商アピールを開始する。

「まだ駆け出しなんでね、品数は多くないが、何か入り用なら売るし、処分したいものがあれば買い取るよ」

「ああ、行商って言っていたな。……何だっけ、今、何か足りないものあったっけ?」

先ほどの戦士は、おそらくこの集団のリーダーだ。彼は仲間たちに振り返ると、斧使いの男が、一人を指さした。

「アルバートの剣が、そろそろヤバい」

武器は使っていると案外、消耗するものだ。こういうモンスターがはびこる世界ともなれば、街道を移動するだけでも武器の出番は多い。

ソウヤは相好を崩した。

「中古品だが、それでよければ見ていくかい?」

バイクを下りて荷台へ。セイジのバックパックから物を出すフリをしながらアイテムボックスにアクセス。売り物用に確保していた剣を取り出し、適当に並べながら彼らに披露する。

「使い込んでいるものもあれば、新しそうなものもあるな……」

「拾いものだったり、金策で売られたものもある」

本当は全部ダンジョンからの拾いものだ。さて、肝心の剣をお探しのアルバートという剣士が、一本のショートソードを指した。

「こいつはいくらだい?」

真新しい片手剣だ。刃はおよそ60センチほど。セイジ曰く、新品に近いが、専門店で買い取ると大体60から40銀貨あたりらしい。

「50シルバー」

「え、マジ!? 相場のほぼ半値じゃん」

「中古だからね」

拾いものなので新品ではないのは確かだ。新品と偽って正規価格で売るつもりはなかった。

「ほとんど新品だけどなぁ……」

アルバートは剣を手にとり、質感などを確かめる。

「これ買うわ。いいよな、リーダー?」

「お、おう。お前がいいなら構わんぞ」

毎度――ソウヤは代金を受け取る。さっそく剣を見るアルバートに代わり、仲間の冒険者たちが寄ってくる。

「他にも武器とか防具ある?」

中古とはいえ、価格設定のせいか興味が湧いたのかもしれない。

「武器はあるが、防具はあまりないな。……あぁ、ダンジョンでドロップしたのが少しあるかな」

街道わきで、そこから本格的に商談となった。