軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第280話、クレイマン王の城

場所がどこにあろうと、クレイマンの遺跡であることには変わりない。転送の魔法陣で移動できるなら、いまのところ、それほど気にすることでもない。

が、体は休みを求めるもので、一度、魔法陣で、ダルとソフィアのもとに戻った。そこで探索チームをアイテムボックスハウスへ戻らせて休む。

ライヤーなどはクレイマンの遺跡のことで興奮していたようだが、休むのは大事だ。

ジンたちはゴールデンウィング二世号だが、転送ボックスでのやりとりで、今後の打ち合わせをやっておく。船のほうは、襲撃もなく待機しているとのことだった。

たっぷり休んで、食事も済ませて、いざ探索の続きだ。

「そういうわけで、君、暇そうにしているから、ちょっと手を貸してくれ」

ソウヤはアイテムボックスハウスで居候同然の、かつての仲間である騎士メリンダを引っ張り出した。

「私が……?」

少々面倒くさそうにしていた彼女だが、治癒魔術師であるダルが言った。

「たまには外の空気を吸うべきですよ」

魔王討伐時代の仲間、それも聖女と並んで治療担当だったエルフの言葉は重かった。

外でのリハビリも兼ねて、メリンダは了承した。

もっとも、転送魔法陣前の見張りであるが。そこで待機することになっているダルもいるので、退屈はしないだろう。いいカウンセリング時間になるはずだ。

そんなわけで、ソウヤ、ミスト、ライヤー、ガル、リアハ、ソフィアは転送魔法陣に乗って浮遊島のほうのクレイマンの遺跡へと向かった。

「そうだろうと思ってたが、こっちは夜なんだな」

ウィスペル島だと朝だったが、浮遊島は夜であり、城は電灯がついているかのように窓などから光が漏れていた。

「魔石灯の類かしらね」

ソフィアが首を傾けた。

「誰かいるのかしら……?」

「自動でつく代物か。はたまた例の人形やゴーレムはいるかもしれないな」

ソウヤは城への道を進む。足元は石の道となっていて、昼間は短い草が至る所に生えているのが見えていた。

ライヤーは魔石銃を手に警戒を怠らない。

「どうするよ、旦那。この浮遊島に、天空人とか生きていたら?」

「さあて、どうかな」

ソウヤは微笑した。

「今も生き残っているのか、それとも滅びたのか」

「話が通じる相手だといいですね」

リアハがそんなことを言った。ライヤーは肩をすくめた。

「でも、天空人ってのは、その昔、空から世界を支配していたって話だ。おれたちのことを歓迎しないんじゃないか?」

「不法侵入ってか?」

「それだけでケンカを吹っかけられる可能性はあるな。誰だって、自分の家の敷居を勝手に跨がれたくない」

ライヤーは先導のガルを見る。城門は開かれている。そして――

「あぁ、クレイマンの紋章だ。間違いない」

「ここもクレイマンの遺跡ってのが証明されたわけだ」

ソウヤは、目を凝らす。

「見張りの兵や人形の姿は見えないな」

「ずいぶんと不用心なもんだ」

「マジレスするとだ」

ソウヤはじっと城を眺めた。

「やっぱり天空人は滅びたと思う」

「理由を聞いてもいいかい、旦那?」

「転送魔法陣が使えたからな。外部からの侵入を警戒するなら、あの魔法陣は使えないようにしておけば、オレたちだってここに侵入できなかった」

「行く用事があるから、使えたままにしていたとか?」

「だったら、もう少しゴーレムなりを置いて警備しておくものじゃないか? 外からやってくる人間が無害だなんて、思ってないだろ?」

「確かに、世の中、悪いヤツはごまんといるからな」

ガルとミストが城門をくぐった。大きなフロア、シャンデリアを思わす照明が高い天井から吊されていて、室内を照らしていた。

「明るいといえば明るいけど」

ミストは皮肉げに言った。

「この薄汚れた感からすると、誰か住んでいるって気配はないわね」

「『お邪魔します』って叫んだら誰かくるかな?」

「人形とかゴーレムがいるなら、来るかもよ」

それで問答無用で攻撃されたら嫌だな、とソウヤは思った。崩れた壁を見ると、確かに廃墟だと思う。

「じゃあ、探索を始めよう」

・ ・ ・

天空人はいなかった。城の中にいたといえば、例の人形とゴーレムだけだった。

人形を観察してみたが、どうやら城内のメンテナンスや清掃をやっているようだった。

「ここの人形たちは、生きているとはほど遠い」

ソウヤは、喋る人形――それこそ、フィーアくらいのものをある種、期待していた。だが、ここの人形は非常に程度の低い思考プログラムのみで活動していた。

「単純な作業用の人形って感じだ」

ライヤーの言葉に、ソウヤも同意する。

「片付いているところもあれば、壊れたままだったり。……おそらく限られた範囲でしか作業をしないんだろうな」

だから、その範囲外の散らかりを掃除したり、修理したりなんてこともしない。

「しかも恐ろしく馬鹿」

ミストが、どこから持ってきたのか、手に石を握っていた。

「壁に石を当てたら反応するんだけど、後ろをワタシが通過したのも気づかないボンクラだったわ。いっそ壊してやろうかと思ったくらいよ」

「もう、壊してもいいんじゃないかな」

ライヤーは眉を吊り上げた。

「あれも回収したら、売れないかな?」

「あるいは再プログラムして、お手伝いメカとして使えないかな。爺さんあたりなら、やれそうな気がするぜ」

ともあれ、そんな警備メカにもならない人形たちをかわして、ソウヤたちは、いくつか天空人の品を手に入れることができた。

地下遺跡でもあった保存魔法のかかった箱をいくつも見つけた。中は金銀財宝、薬品、本、武器、さらには衣服などで、どういう基準なのかさっぱりわからなかった。

「そして、いよいよやってきました王座の間!」

ライヤーが相好を崩した。

「ここがクレイマン王がいたとされる謁見の間に違いない!」

重厚かつ巨大な扉には金の縁取りと鮮やかで、宝石もちりばめられている。

「開けるぞ……うんしょっ!」

ライヤーが扉を押したが、重いのかビクともしない。ソウヤ、そしてミストも加わる。それによって重々しい扉が開いた。

果たして、その中には――

「わぁお。黄金の間ってか」

見渡す限り、金、金、金。魔石灯の光で、キラキラと輝くは絢爛豪華な王の間。

「世界中から財宝を集めた王だって……?」

ソウヤは苦笑した。

「なるほどね、こんなのを見せられたら、納得するしかねえよな」