軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第263話、ベビーに懐かれるソウヤ

フォルスが喋った、というのは正確には微妙に異なる。

何故なら彼の人語は、魔力による念話だったからだ。まだドラゴンの姿で、人の言葉の発音は難しいらしい。

「だが、素晴らしい!」

何故なら、意思疎通ができるからだ。野生の生物の賢くなるスピードというのは、凄まじいものがあると、ソウヤは感動した。

まだ難しい言葉やその意味を理解はしていないが、生を受けてさほど経っていないことを考えれば、上出来どころの話ではない。

ただ――

「オレは、お前のパパじゃない」

『じゃー、ソウヤは、ママの何?」

「友人、ご近所さん。知り合い」

『ユージン? ゴキンジョサン? シリアイー?』

何がおかしいのか、ケタケタと笑い出した。

そのあたり、まだ幼児だなと思いつつ、ソウヤはフォルスとのお喋りの相手をした。

ヴィテスのほうも念話を使えるようだが、あまり話してくれなかった。影竜ママとは話しているようなので、単に好き嫌いの問題かもしれない。フォルスが構ってちゃんなだけで、ヴィテスの反応のほうが普通か。

その日も、町から出て、影竜一家と人間観察をする。今回観察しているのは、町の子供たちだった。

『ボクはソウヤを乗せるけど、ソウヤはボクを乗せてくれないー』

「潰れてしまうわ! 体の大きさを考えろよ」

『えー。あの人間の子供、大人の上に乗ってるよー』

「乗ってるって、おんぶか? お前もそれだけ小さければな、おぶってやるよ」

ミストも影竜も、人に変身できる。フォルスも大人になる中で、きっと人化の能力を獲得するだろう。あまり大きくならないうちなら、おんぶも肩車もしてやるつもりのソウヤだった。

ヴィテスは影竜と話ながら人間観察をしていたが、フォルスは途中で飽きてしまったのか、ウロウロしはじめた。

仕方ないので、ソウヤは焼き鳥肉を出して、それをフォルスに食わせてやりながらじっとさせる。

隣にデンと座り、ソウヤの差し出す肉をパクリ。ドラゴンの手が短めで、まだうまく串など掴めないようで、ソウヤが口元まで焼き鳥肉を移動させてやる。

――こういうところも幼児だよなぁ……。

もっとも、手を器用に使えないだけで、自力で食事はできるのではあるが。

そんなドラゴン育児に巻き込まれるソウヤ。パパではないと言っても、やっていることは世間のお父さんと変わらないような気がした。

・ ・ ・

ソウヤが、影竜に付き合わされる一方、銀の翼商会の面々は、それぞれの仕事を進めていた。

セイジとアズマは商品の調達や整理。ライヤーは飛空艇のメンテ。オダシューらは、ダンジョンでモンスター狩りをする一方、先日の戦いで消耗した装備の補充や修理なども行った。

リアハは、カーシュと模擬戦をして腕を上げたり、ソフィアと一緒に、オダシュー組とダンジョンに行ったりしていた。

ジンは、新型ゴーレムを作っていた。

「先日の巨人族騒動では間に合わなかったのだが――」

老魔術師はそう前置きをした。

「アイアン1は、人を乗せることはできたが、あくまでゴーレムだった。そこで、今回は操縦できる型を作ってみた」

「おおっ!」

ソウヤは、目の前の新型ゴーレムを見る。

見た目は、鋭角的な突起などがあって、ゴーレムから感じていた鈍重さがかなり薄れていた。

というより、これはロボットアニメに出てくるようなスタイルだ。鋭角的なV字の角やデュアルアイ。外装に手を加えただけで、ただ立っているだけでも、ゴーレムとは運動性が違うと感じさせる精悍さ。

見た目は大事とはよく言ったものである。

「強そう」

『なんか強そう』

一緒にいたフォルスも念話で言った。やたらと懐かれているが、今ではアイテムボックスハウスやその近辺にでも出てくるようになった。これも人間観察と交流の一環だ。

「まあ、ガワをそれっぽくはしたが、中はアイアン1と変わらないんだがね」

ジンは苦笑した。

人を乗せた背部のバックパック部分は、そのまま操縦席となっている。

「もっとも、簡素なものだよ。それまで言葉で、『進め』とか『走れ』と言っていた部分をフットペダルでやるようになっただけだし、腕を振り上げる、パンチとかも操縦桿の動きでゴーレムが判断して動かすだけだから」

「それでも充分、操縦している気分になるぜ」

今回、きちんと実装されたシートに座ってみるソウヤ。

「……めっちゃシートに座るのが窮屈なんだが?」

「大きさを考えてくれ。そんなに余裕はないよ」

座ったら手狭感はあるが、まだ許容範囲。だが座るまでが、きつい。これは身長や体格制限があるだろう。

「操縦に慣れたら、案外、自由になる範囲が狭いことに気づくと思う」

ジンは言った。

「昔のテレビゲームの感覚だな。実機に比べたら自由度が低いやつ」

「なあに、オレなんて、ロボットの実機なんて乗ったことないし、その手のもんはゲームでしか動かしたことないから平気平気」

モニターというようなものはなく、前回と同様スコープからの視界というかなり狭い範囲しか見えなかった。

「爺さん、こいつは動かせるか?」

「あぁ、やってみるといい」

ジンの許しが出たので、ソウヤは早速動かしてみることにする。フォルスが見守る中、ジンが軽く操縦方法を教えた。

ソウヤが前進である右のフットペダルを軽く踏む。するとゴーレムが、ゆっくりと前へと歩き出した。

「おお、本当に動いた!」

テンションが上がった。趣味の世界だ。

遊園地のゴーカートに初めて乗った時のことを思い出すソウヤ。童心に帰って、ゴーレムを動かす。

近くをフォルスが駆け回り、彼も何やら楽しそうだった。

操縦型ゴーレムとフォルスが、飛空艇の近くに差し掛かると、そこにもう一体、ゴーレムが現れた。

アイアン1……ではなく、よりマッシブな体格の黒いゴーレムだ。ソウヤが試乗している機体が、割とシャープなフォルムに対して、そのゴーレムは丸身を帯びて、甲冑をまとった重戦士のように見えた。

「おいおい、爺さん、あれもあんたが作ったのか……?」

立ち止まる黒いゴーレム、そのバックパック部分が開き、操縦者が顔を出した。

青髪をショートカットにした少女――機械人形のフィーアだった。