軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第257話、巨大な何か

クリュエル近郊のダンジョンにおける、巨人族の襲来――その原因について、モッシマーは答えた。

「わからん。どうしてこうなっているのかもな。そもそも、オーガとジャイアント、それとゴーレムが寄り集まるってのが異常なことだ」

オーガは鬼。ジャイアントは巨人。ゴーレムは人工的に作り出された人形。

「サイクロプスがいた。あれが統率しているとか?」

「ジャイアントは巨人族のよしみでわかるが、鬼が一緒になる理由がわからん。ゴーレムは……そうだな。もしかしたらサイクロプスが作ったものかもしれん」

異なる種族が共同戦線を張る。自然界では滅多に発生しない事態だ。しかし、様々な種族の寄り集まりで言うのなら――

「魔王軍か、それに関係している連中」

「まさか!」

モッシマーは驚いた。

「魔王は十年前に勇者に倒されたはずだ!」

「新しい魔王が生まれるかもって話だ。ここ最近、魔族の動きが活発だし」

「……確かに」

ギルマスは顎に手をあてた。

「魔王軍だと言うなら、オーガとジャイアントが一緒にいてもおかしくないか。もし今回の騒動が魔族の仕業だとすると、狙いは何だ?」

「王国の混乱だろう」

ソウヤは、これまでの魔王軍残党の動きを思い出す。

「騒ぎを起こして、人間側の戦力を削りにきているのさ」

もし、巨人族の迎撃に失敗して、クリュエルの町が破壊されるようなことになれば、エンネア王国も軍を派遣するほどの騒動になる。

「ふむ……」

「もっとも、今のところただの推測だ。実際に行って確かめるしかないだろうな」

「そうだな」

モッシマーは同意した。

「幸い、あんたらが加わってくれたことで戦力も揃った。こちらから敵さんのもとに乗り込んで、さっさとケリをつけるべきだ」

「異議なしだ。長引かせるのはよくない」

話は決まった。ソウヤは仲間たちに声をかければ、みなまだ元気だった。巨人族相手にびびっている者はいない。精神的にもタフな連中だと、ソウヤは思う。

クリュエルの冒険者たちと共に移動を開始。ソウヤは歩きながら、手早く手紙に伝言を書き入れる。

ミストが聞いてきた。

「何を書いているの?」

「宿をとりに行った連中に、伝言をな」

カーシュやセイジは、ソウヤからアイテムボックスを渡されている。共有空間の転送ボックスで、こちらの状況を伝えるのだ。

いつまで経っても合流しないと、向こうも何かあったのでは、と心配するだろうから。

・ ・ ・

斜面を下り、先へと進む。ミストの魔力眼での捜索で、巨人族の居場所を割り出す。

地元冒険者たちは自分たちで作った地図を見ながら、ミストの誘導に従ったが、途中、彼らは違和感をおぼえた。

「……こんな道、地図にはないぞ!」

地元勢がざわめくなか、ソウヤは表情を引きつらせた。

「何か、最近そんなのあったぞ……」

確か、ドワーフの村の近くのダンジョン。そのあるはずのない道の先で、影竜と出会った。

「まさか、またドラゴンの住処だったり?」

「そうそうあることではないと思うが」

ジンが視線を向ければ、ミストは魔力眼を使ったまま言った。

「今のところ、ドラゴンの姿はないわ。安心しなさい」

ニヤリと笑みを浮かべてみせるミスト。

「……この先に広い空間がある」

「何かいるか?」

「いいえ」

一行は、その空間に出る。アズマが「でけぇ」と声を出した。

警戒はするが、ミストの言っていたとおり、巨人族や他のモンスターなどの姿はない。

しかし、正面の行き止まりとなっている壁には、大きくくり抜いたような跡があった。

「……これは何だと思う?」

ソウヤは首を傾げる。ガルがしゃがみ込んだ。

「つい最近掘られた跡がある」

「なんか、ドでかい御神体でもあったような形だな」

そう言ったのはライヤーだ。彼は十メートルくらいの高さを見上げる。

「でっかい像でもあったような雰囲気なんだよな……」

冒険者たちも周囲を探すように散る。またもアズマが「でけぇ」と言ったので、そちらを見る。

「見てくださいよ。ここにでかいツルハシがあります」

アズマが指さした先には、ツルハシがあった。成人男性の背丈にも達する大きさのものが。

「巨人用ですかね?」

「何だあ、巨人やオーガが穴掘りでもしてたってか?」

ライヤーが、そのツルハシを検分する。

「土も新しい。ついさっきまで使ってたなこれは」

「つまり――」

ジンが口を開いた。

「巨人族はここで何かを掘っていた」

「何かって?」

モッシマーが話に加わってくる。老魔術師は首を横に振った。

「さあて。だが連中は、ここにあった何かを掘り出して、持ち出したようだ」

「何かは知らないが、かなり大きな代物だ」

ライヤーは眉をひそめる。

「でも、相当でかい代物なら、ここから運び出せるのか……?」

通路を通過したのか。しかし、他に出入り口もなく、ソウヤたちはそれと遭遇もしなかった。

「転移魔法じゃないかしら」

ミストが虚空を睨んでいる。

「魔力の残滓がある。状況から見て、転移して運び出した可能性が高いわ」

「……転移となると」

ソウヤは腕を組んだ。

「ますます魔族の仕業くさいな。ここで何かを発掘している間、人間を近づけないように、オーガやジャイアントを差し向けた」

「すると、あの巨人どもはクリュエルを攻めるのではなく、単に時間稼ぎをしていたということか」

モッシマーが唸った。

「そうなると、ますますここにあったものが気になるぜ」

「魔族の仕業だったとして、連中が欲しがる何かがあったってことだからな……」

嫌な予感しかしないな。ソウヤの呟きに、一同は頷いた。

巨人族も転移か何かで消えたらしく、クリュエル冒険者ギルドを騒がした事件は、ひとまず終了となった。