軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第248話、ゴブリン拠点

目撃情報から、ゴブリン軍団はアガドゥの森から出てきたと思われる。

カルデインの町から半日の距離にある広大な森林地帯だ。

「その最深にはゴブリンが巣として利用することが多い洞窟群があるのだそうだ」

聞いた情報を披露するソウヤ。ミストは肩をすくめた。

「それは何ともクサそうだわ」

「同感」

ソフィアが心底嫌そうな顔をした。

ゴブリンは小柄で、個々の力は人間の成人男性よりやや劣る。しかし数が多く、小狡い。また人型種族の女性を捕らえる習性があって、暴行するという、オーク顔負けの悪い特徴があった。

ソフィアや、聞いていたリアハが嫌悪感を隠そうとしないのは、それが原因だろう。

ソウヤは続けた。

「この辺りには、ゴブリン以上に危険なモンスターが多いらしい。だからそいつらが適度にゴブリンを餌にしていたから、これまでは大発生は起きなかったってさ」

「だが、今回は起きてしまった」

カーシュの表情は険しい。

「つまり、何かのバランスが崩れて、ゴブリンが異常繁殖し、今回の軍勢になった」

「たぶんな」

「原因は何だろう?」

「さあね」

ソウヤは首を振った。

「何らかの理由で天敵がいなくなった。間引きされなくなって、ゴブリンが増えた可能性」

ソウヤのいた元の世界でもあった。動物保護を叫び、手を出さなくなったら、その種が他の生物なり植物なりを食いまくり、生態系が狂ってしまったというやつ。

「それか、ここのところ活発な魔族の仕業説」

最近の動きからすると、後者の線が濃厚だ。もっとも、確証はないが。

ソウヤたちは、アガドゥの森を行く。逃げたゴブリンの後を追尾したソフィアの使い魔のおかげで、敵が森の先の洞窟群に逃げ込んだのは確認済みである。

先のカルデインの町攻防戦において、ゴールデンウィング二世号を使用したことから、今はライヤーとジン、フィーアが飛空艇のメンテナンス作業中。

よって森を行くは、その三人を除くメンバーということになる。

「奇妙ね」

ミストが周囲の気配を探る。

「森の生物をほとんど感じられないわ」

「やっぱり、何か異変があるんだ」

ソウヤは斬鉄を握りしめた。

「増えまくったゴブリンが、他のモンスターを駆逐したんだろうな」

天敵といえど数の暴力で蹂躙したのかもしれない。

結局、森を行く間は、モンスターに出くわすことはなかった。

だが洞窟群のある一帯まで来ると、複数のゴブリンが待ち構えていた。

しかしミストが予め察知していたおかげで、奇襲にはならない。

飛来する弓を、セイジが魔法カードの『障壁』を用いることで防ぐ。するとソフィアとリアハが魔法で反撃。ソフィアの氷結魔法が地形ごとゴブリンを凍らせれば、リアハは衝撃波の魔法でゴブリンアーチャーをなぎ倒す。

魔法を逃れた近接系装備のゴブリンたちは、ソウヤとカーシュ、カリュプスメンバーによって駆逐される。

しょせんはゴブリン、個々の戦闘力ではソウヤたちにまるで敵わない。

巣穴と思われる洞窟が見えてくる。岩肌にある洞窟は大小複数あって、さてどれを行くのが正解か、パッと見ただけでは判断に困った。

「ミスト、どうだ?」

魔力眼で、洞窟の中を見てもらう。彼女は瞑想するように目を閉じていたが、首をかしげた。

「どうも、どの洞窟から入っても、同じ空洞に出るみたい。入り口の通路みたいな先に、巨大な大空洞があるわ」

「昔は鉱山だったのかな」

かなり大きな洞窟らしいと聞いて、ソウヤたちは顔を見合わせた。

「奥にゴブリンがたくさんいるわ。数十、下手したらもっといるかも……」

「ここが大発生ゴブリンの大元かな」

――まあ、入るしかないんだけどな。

「入りやすそうな入り口はどれだ?」

「目の前のやつ」

「じゃあ、そこから行こう」

ソウヤは頷くと、内部へと侵入した。どこから入っても同じ空洞に出るらしいが、それならば通行しやすい場所を選択する。狭くて、通り抜けるのに苦労する穴を選び、そこで待ち伏せされたら目も当てられない。

前方もだが、後ろからの襲撃に備えて、カリュプスメンバーを三人、後ろに配置する。別ルートを通って、こちらの裏に回り込んでくる敵を警戒してだ。

「くせぇ」

後ろで、アズマが呻いた。洞窟内はひどいゴブリン臭が漂っていた。

ソフィアが照明の魔法を使って、周囲の視界を確保する。

前衛をカーシュとガルに任せて、一行は前進。待ち伏せに注意を払うが、ミストの察知と、ガルのトラップを見抜く目によって、障害もなく大空洞へと出た。

「うへぇ……」

ソウヤは思わず声を漏らした。

「なんだこりゃ、でかい空洞だな……」

一種の地下世界を連想させる。ソウヤたちの出た通路の先は細長い道と崖になっていて、さらに下層が見えた。岩の橋のような通路が陸橋のように見え、下層に人工の建造物のようなものがあった。

「地下都市……? 遺跡かこれは」

「どうもそうらしいけれど」

ミストの目が魔力を帯びて光っている。

「ゴブリンも大量にいるようよ。さながらあれはゴブリンの地下帝国かしら?」

「大発生の出所を調べるつもりだったんだがな……」

ソウヤは頭をかいた。

「これはどうしたものか」

数の差は歴然。予想はしていたが、それを遥かに超える数のゴブリンがいて、ここに一大拠点を築いているようだ。

放置しておくと、先のカルデインの町が襲われたような襲撃が繰り返されることになる。かといって、ここにいるゴブリンを害獣として駆除していいものかどうか。

「駆除すべきです」

リアハがきっぱりと言った。

「放っておけば、周辺の人間に被害が出ます。ゴブリンは話し合いが通じる相手ではなく、獣と同じです」

「賛成」

「異議なし」

ソフィア、そしてミストが同意した。人間だけでなく、ドラゴン的にも、ゴブリンは排除のようだ。

――まあ、話し合いが通じないのでは……そうだな。

ゴブリンがこちらを見かけたら徒党を組んで襲ってくる。そして連中に慈悲はない。

「それはいいんだが、どうやる?」

この圧倒的なゴブリン拠点と大集団を、どう叩くのか。今度は飛空艇は使えない。