軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第240話、エンジンを見せてみた

魔力を爆発させて、そこから生み出される力を推進力として噴射する。

そう説明したら、ペルラ姫が「爆発!?」と目をパチクリさせていた。するとアルガンテは言った。

「爆発の衝撃波は、軽く人を吹っ飛ばすからな。それを進む力とするとか……突飛なことを考える。これは異世界の技術か?」

アルガンテは、ソウヤがこの世界に勇者召喚でやってきたことを知っている。勇者とはそういうものだ。

「私の世界にも似たような技術はありますが、この元になるエンジンを作っていたのは、この世界のドワーフの機関士です」

かつてのゴールデンウィング号の乗組員だったドワーフのヴァーアが、作っていたエンジンを引き継いでいる。

「この世界のドワーフがか」

どこかアルガンテは嬉しそうな顔をした。

――まあ、吹き込んだのはオレだけど。

魔王討伐の旅の中、機関室にいたヴァーアに、こういうエンジンがあってだな、と談笑した記憶がある。

しかし、そこからこのエンジンの元を作り出したヴァーアは、賞賛すべきドワーフだったのは間違いない。

「それで、この新型エンジンは、どれくらい速いのだ?」

アルガンテが、頼もしげにジェットエンジンを見つめる。ソウヤは頷いた。

「予定では、現状の飛空艇の二、三倍の速度を叩き出せる予定です」

「おおっ、そんなに速いのか!」

国王陛下は感嘆した。

「これはぜひ、我が国の飛空艇にも欲しいぞ」

――ほらきた。

予想通り過ぎて、苦笑したくなるがこらえるソウヤ。

「完成し、充分に耐えられるものになった暁には、このエンジンの販売もやろうと思っております」

「今から購入予約をしておこうかな」

アルガンテが王様らしく即決するように言った。

飛空艇のエンジンともなれば、とくに精密な機械となる。この世界では、まだまだ機械は掘り出し物流用から毛が生えた程度。自ずと再現された機械の類は超高額な代物となる。

「しかし、まだ完成していないのか?」

ソウヤの言い回しから、そう理解したアルガンテは問うた。

「なにぶん新しい技術ですから、テストもしないといけません。いかに高性能を思い描いても実際に動かした時にそうなるという保証はありませんから」

それに、とソウヤは声を落とした。

「先ほど、姫君が爆発と驚かれましたが、実際、このエンジンは試作中に爆発事故を起こしています。先ほど申したドワーフのヴァーアも、その事故で命を落としています」

「……」

「ですから、充分に試験を重ねて、現状の飛空艇エンジンと同レベル程度まで安全が確認されないことには、お引き渡しもできません」

「今すぐどうこうというわけではないのだな……」

アルガンテは真面目な顔で言った。

「導入したエンジンによる爆発事故で飛空艇喪失は、さすがに勘弁だ」

「人為的な事故については、責任は持てませんが、少なくともそれ以外の部分で使えなくなるようなモノを商品にするつもりはありません」

ソウヤはきっぱりと告げる。

「とはいえ、きちんと飛空艇に載せて試さないといつまで経っても商品になりませんからね。この船で、使えるようになるまで試験します」

王国に販売するのは、その後になる――そう言えば、アルガンテは納得するように頷いた。

「自分で試すのはいいが、頼むから吹っ飛んでくれるなよ」

「ご心配、痛み入ります」

実際に飛ばす時は、エンジンに防御用の障壁でも張ってもらおうかな、と考えている。メインが吹き飛んでも、補助エンジンで墜落は避けられるだろう。

ソウヤとて、エンジンの事故で命を落とすのは勘弁だ。

・ ・ ・

飛空艇見学の後は、王族のご希望により、アイテムボックスハウスへと立ち寄ることになった。

アイテムボックス内に家がある、というのは常識の範囲外。それをやったソウヤにしても、アイテムボックス内に住むとか聞いたことがなかった。

つまりどうあっても珍しいのは仕方がないということだ。世界の珍百景よろしく、外部の人間にとっては観光スポットにも匹敵する希少さがある。

――そんな芸術性があるようなものでもないんだがな……。

ただ珍しい、それだけである。

さて、王族が来ていることはすでに仲間たちに伝わっている。屋敷前で、カーシュとセイジ、ソフィア、リアハが並んで待っていた。

セイジとソフィアは緊張していたが、お偉いさんに慣れているカーシュと、外交慣れしているらしいリアハは実に落ち着いたものだった。

「おお、聖騎士カーシュ! 貴様もここにいたか!」

「陛下、ご無沙汰しております」

「うむ、あの頃と変わっていないな。元気そうで何よりだ」

笑顔のアルガンテ。そしてリアハの番。

「グレースランドのリアハ姫ではないか! 久しぶりだ。グレースランドは大変だったな――」

魔王軍残党によるグレースランド王国襲撃の報告は、王の耳にも届いている。先ほど、ソウヤも、グレースランドでの一件は報告済みである。

「レーラ殿のことは聞いている。早く彼女を蘇らせられるとよいな」

「はい、私の全身全霊をかけて」

などという堅苦しい挨拶の後、いよいよ屋敷をご案内。この期に及んで、ミストやガルたちカリュプス勢が出てこないのは、王族との接触を避けようという考えらしい。

どうせここにいる人間全員を紹介しなければいけないわけでもない。ソウヤは各人の判断に任せる。

そして時間も丁度よいということで、王とお姫様参加のお食事会となった。ずっと黙って控えていたカマルが、アルガンテに「よろしいのですか?」と問うた。

「構わん。俺自身、ソウヤたちの料理には興味があったし……ペルラは、すっかりその気だしな」

「ええ、ここでお食事しないなんて、何のためにきたのかわかりませんわ!」

――飛空艇を見に来たんじゃないの?

いや、元々、先日の焼き肉とタレの味が忘れられず、あわよくば機会を狙っていたのだろう。

「あいにくと、そこまで豪華なものではないのですが、うちの品ということで、まずはそこからいきましょう」

鳥肉の串焼き、味噌汁。ちょっとした野外食をつままれている間に、魔物肉のステーキを作ろう。