軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第235話、図書館で調べもの

シートスらエアル魔法学校の教官たちにゴーレムやレア素材を売って稼がせてもらった後、ソウヤは学校の図書館へ向かった。

レーラの復活のために、魔力欠乏症状について調べるのが目的だ。

ただ休めば回復する程度なら問題ないのだが、現状は衰弱死寸前なので、自然回復に任せればレーラが死んでしまう。

秘薬を作るべく行動をしているが、それも確実な方法かはわからない。故に、もっと効率がよかったり、あるいは適切な治療法があれば、そちらに切り替えることも視野にいれている。

「とはいえ……」

ソウヤは、多数の本棚を眺め、暗鬱たる気分になる。

「さすがにオレ、ひとりでこの中から探すって、無理ゲーだよな」

そもそも、この世界の言語について、会話は問題ないが読み書きについては最低限の知識しかない。小難しい文章については、頭の痛い問題である。

「……というわけで、お前ら、手伝え」

ソウヤは銀の翼商会の面々を招集した。

ヘルパーとして参加したのは、カーシュ、セイジ、ソフィア、ガル、オダシュー、グリード。

ミストはソウヤ以上に文字については頼りにならない。

ジンとライヤーは、飛空艇のエンジン開発に専念してもらうため、今回は呼ばなかった。どちらかというと、このふたりが今回のような資料探しに役立ちそうではあるが。

「それでは、お願いします」

ヘルパーとして呼ばれた面々は、手掛かりを求めて図書館内に散った。ソウヤもまた、いくつかそれらしい本を開いて調べるが――

「こいつは眠くなるな」

思わず本音が漏れた。病気について書かれた本、魔法関係の本、歴史の本などなど、適当に引っ張り出し、眺めるがどうもうまくいかない。

さて、他のメンバーの進捗はどうだろうか。

すると、セイジ、ガル、オダシューが、ソウヤとほぼ同じレベルの読解力であることがわかった。

そもそも義務教育などがない世界で、学校自体が、このエアル魔法学校のように限られたものである。当然、識字率はよろしくない。多少字は読めても、書けないというのがさほど珍しくないのだ。

それでも、この三人は世間一般のレベルからすれば実は高いほうだったりする。

一方で、ソフィアは貴族令嬢だけあって、スラスラと本を読み進めていた。魔法が使えないと家族から突き放される以前から、基本的教養として読み書きは家庭教師に教えられたらしい。

カーシュもまた、騎士の家系の出で教養として教えられたから、文章を読み進めるのに問題はなかった。

意外だったのはグリードだった。チンピラ風の威勢のいい若者だが、他の面子が読めない単語に頭を悩ませていると読み方を教えていた。

いつから暗殺組織にいたのかは知らないが、ひょっとしたらいいところ出のお坊ちゃんなのではないか――と、ソウヤは勘ぐる。

「ダメですねぇ、ソウヤの旦那。こっちの本は全滅です」

「あー……ご苦労さん」

テンポよく進めるグリード。どこから持ってきた本か覚えているのか、迷いなく元の場所に戻していく。

ふむ――ソウヤは眉間にしわを寄せつつ、調査を続けたが、結果として大した成果はなかった。

それは他のメンバーもそうで、しいて言うなら『伝説の錬金術師が作り出したエリクサー』があるらしい、ということくらいか。

不治とされる病でさえ取り除き、その人を不老不死にするという幻の秘薬、それがエリクサーである。

雲をつかむような話だった。

「エリクサーか……」

RPGとかだと、HPとMPを全回復させるアイテム、という印象があった。

元の世界での知識だと、錬金術とか賢者の石とかが関わっているのではなかったか、というのが、ソウヤの知識である。

要するに、あまり詳しくはない。実際には存在しない空想の産物だと思っている。

「不老不死になる薬なんて、あるんですかねぇ」

オダシューが首をひねれば、グリードが皮肉げに言った。

「あるわけないでしょ、オダシューの旦那。頭のイカれた魔術師の妄言ですよ」

「妄言ってお前」

呆れるオダシュー。グリードの視線は遠くへと向く。

「人は死を恐れます。特に力を持つ者ほど、それが失われることへの不安は大きい。権力者が不老不死を求めるのは、現状の幸福を手放したくないから。永遠の繁栄を思い、その立場にいたいから」

ここではない何かを見ている目だった。

「そんな考えの者に、邪な考えを持った奴らが近づくんです。おこぼれに与ろうとする者もいれば、嘘をついてその財産に寄生する者もいます。魔術師や自称錬金術師は、研究費欲しさに不老不死の薬をチラつかせる」

まるで見てきたようにグリードは言うのである。こいつ、ひょっとして貴族の出だったりするのだろうか――ソウヤは思った。

不老不死など妄言。グリードが魔術師関係にあまりいい感情を抱いていないことは、何となくわかった。

そんな中、ガルがボソリと言った。

「標的が不死だった場合、どうやったら始末できるだろうか……?」

しん、と周囲が静まりかえる。『えーと……』とカーシュが困った顔をすれば、ソフィアが口を開いた。

「ガル、不死ってことは殺せないってことよ。どうやって殺すとか、的外れもいいところだわ」

殺せないから不死。

「しかしアンデッドは始末できるだろう?」

真顔でガルは言うのだ。その視線はソウヤに向く。

「リッチキングも不死者、アンデッドだ。だがソウヤは、あれを倒した」

「アンデッドは……不死者っていわれるけど、そもそもあれはもう死んでいるわけで――」

ソフィアが反論を試みようとするが、うまくまとまらないようで、その長い髪をかいた。

――そういや、ガルは『始末』とは言ったが、殺すとは最初から言ってないんだよなぁ。

ソウヤはそれに気づき、苦笑した。

ともあれ、不老不死ばかりに目がいってしまったが、万病を癒す力を持つエリクサーが、どこにあるかなどの情報は、資料にはなかった。

――まあ、書いてありゃ、とっくに読んだヤツが調べに行ってるだろうな。

今回の調査は空振りに終わった。しかし、前を向いてやっていこう、と思い直した時、転送ボックスに手紙が来ていることに気づいた。

カマル……ではなく、カロス大臣だ。

アルガンテ王との会談の日取りが決まったという連絡だ。

「マジ……?」

日時は、今夜、王城にて、だった。

「ちょっと早すぎやしませんかねぇ」