軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第220話、屋上、制圧!

グロース・ディスディナ城屋上で、白銀の翼は魔族兵と交戦する。

ジンが声を張り上げた。

「魔力を増幅している装置は壊さないように戦え!」

「爺さん?」

ソウヤが振り返ると、老魔術師は片目を閉じた。

「この魔力を放射している装置が、この王国全土に呪いを届かせているのだろう」

「だったら、すぐに壊すべきじゃないか?」

「いや、魔力の放出を止めて、呪いが拡散しないようにするのが先だ。あとで、レーラ嬢が呪い解除の力を使うとき、この装置を利用する。だから、壊してはダメだ」

「なるほど、理解した!」

呪いの発生源を止めれば、自然に回復する、というものではないかもしれない。レーラの呪い解除の力を使うにしても、国中の国民に届かせる必要がある。そのためには、装置が絶対に必要ということだ。

「ソウヤさん!」

セイジが近くにきた。

「伝言を頼まれました」

「伝言? 誰の?」

「影竜さんです」

セイジは小型のクロスボウを構えると、接近してきたリザードマンに矢を発射した。

「影竜が何だって?」

ソウヤは斬鉄を前に出す。セイジの放った矢はリザードマンの厚い皮膚を貫いたが、そこまでだった。タフなトカゲ亜人が矢の一、二本で倒れるはずが――

次の瞬間、リザードマンの被弾箇所が爆発して、その戦士を倒した。

「――影竜さんがアイテムボックスから出せと言ってました。どうも一緒に戦ってくれるようですよ」

「……今、何をした?」

ソウヤはつい聞いてしまう。

「矢に何か仕込んだのか?」

「はい、魔法カードを矢に仕込みました。命中したら爆発する魔法文字を刻んで」

魔法防御のお守りのせいで、魔法カードも防御魔法の外でしか発動しない。だから矢で飛ばして、防御魔法の外で発動するようにしたらしい。

「――お前、頭いいな」

感心するソウヤだが、その間に、アイテムボックスにいる影竜を出した。

「セイジから聞いたが、戦ってくれるって?」

美女姿の影竜が現れる。ミストがどこか騎士らしさを思わす戦士の格好に対して、影竜はドラゴンっぽい意匠があるが、純然たる戦士の鎧のようなものをまとっている。

「うむ、最近運動不足でな。ちょっと他の生き物を殺していいと聞いて、ひと暴れしようと思ってな」

物騒な物言いに、ソウヤは反応に困った。だが続く影竜の言葉には納得する。

「相手は魔族であろう? 我の住処を荒らし、卵まで危険に晒した連中の仲間だ。お礼参りせんとドラゴンの名折れというものだろう」

ドラゴンは自らを上位の存在と自認する種族だ。ゆえに何かされたら、返さなくては気が済まない。倍返しは当たり前なのだ。

「そいつは心強いが、大丈夫か? もう太陽は昇っているぞ」

「闇がないから戦えないということもない。別に外に出られないわけではないぞ」

確かに、昼間でも行動している彼女を、ソウヤは見ている。主にドラゴンの姿で。

「ま、戦えるなら構わないが、無理はしてくれるなよ」

「ほう、人間に心配されるとは、我も侮られたものだな」

楽しそうに笑う影竜。ソウヤは口元を歪めた。

「卵からかえるドラゴンベビーを孤児にしたくないだけだ」

「なるほど、万一の時は、お前に託そうかな」

「やめろ、面倒くさい」

「そう思うなら、お前も無茶はしてくれるな。大事な我が子を抱えているのだからな!」

影竜が前衛組に合流した。

制圧できそうと思った十数秒前から、敵の数が減っていない。いやむしろ増えている。魔族もこの魔力を放っている装置を奪われたくないらしく、ドンドン兵が集まってきているのだ。

歴戦の白銀の翼、カリュプスメンバーらは、それらを互角以上に立ち回っていたが、そこに影竜が加わった。

「いるわいるわ、雑魚どもが。我が刃を受けよ!」

ノコギリ状の刃のついた片刃の剣をそれぞれ保持している影竜。二刀流だ。それを力任せに振るえば、そのリーチ内にいた魔族兵の体が鎧ごと両断された。

胴まわりの太いオーク兵や硬いリザードマンも、紙切れのようにスパスパと斬っていく。

「こりゃ、オレも負けてられんな……!」

ソウヤも前に出る。

「うおおおおっりゃっ!」

斬鉄をぶん回せば、魔族兵の体が分断され、跳ね飛ばされていく。

ソウヤと影竜が前衛に加わったことで、押し返したように見える戦況。しかし、敵は次々に屋上へと駆けつけてくる。

「いっそ階段の出口塞いじまうか?」

増援を断つ意味では使えそうだ。しかしオダシューが、相対する魔族兵の首を切りながら言った。

「しかし、そこを塞ぐと、こっちからも攻められませんぜ!」

「ブルハを殺す」

ガルが殺意マシマシで、魔術師タイプの魔族兵にナイフを投擲して倒した。

元カリュプスメンバーらは、組織を壊滅させたブルハへのお礼参りがしたいのだろう。

――まあ、装置を押さえても、呪いの魔法を使っている奴は別かもしれんしなぁ。

怪しいのはブルハで、暗殺者たちの復讐云々は別としても、こちらからも殴り込みがかけられなくなるのは惜しい。

「とりあえず、出てくる奴はぶちのめせ! ……爺さん、装置のほうは?」

ソウヤは、魔力の放出している装置に取り付き、確認している老魔術師に声をかける。

「……今、止めた」

それまで淡い光を空へと伸ばしていた装置が停止した。

「うむ、呪いも止まったようだな……。もう魔法を使ってもいいが、念のためお守りはいつでも使えるようにしておくように」

ジンは告げると、ソウヤを見た。

「レーラ嬢の力で国中の呪いを解く。そのために、もう少しこれのことを調べたい。時間をくれ」

「わかった。その間に、魔族とケリをつけてやる。……野郎ども!」

ソウヤは向かってきたオーク兵の脳天を潰しながら叫んだ。

「反撃すっぞッ! ここの敵を蹴散らして、城内に突入する!」

「「「おうっ!!!」」」

反撃と聞いて、カリュプスメンバーが特に奮起した。辺りで、血しぶきが派手に飛び散っている。ほぼ魔族兵の鮮血が。

敵兵が上がってくる階段周りの敵を叩き伏せる。

「ち、下からドンドン上がってきやがるな……」

「お任せあれ!」

オダシューが懐から球体を取り出した。はてさて、どこかで見たようなそれは。

「ひょっとして爆弾か?」

「そうでさぁ。こいつをいくつか放り投げれば――」

階段最上段から、オダシューが爆弾を放る。ドタドタと登ってくる魔族兵たちだが、連続した爆発に襲われる。爆風と破片にまとめてやられ、崩れ落ちていく敵兵。石の階段を吹き飛ばすほどの威力はないが、充分だった。一時的に、階段上から敵が一掃される。

「よし、いまだ! 突入!」

ソウヤたちは一気に階段を下った。爆発に一度は様子見で止まった魔族兵たちも、慌てて反撃に出るが、洪水のごとく押し寄せるソウヤたちに次々に蹴散らされていった。