軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第21話、とある人材募集

ソウヤとミストは、連日、ダンジョンに入って『仕入れ』をこなした。

冒険者ギルドのクエストをチマチマとこなして、小遣い稼ぎ。町で噂のモンスター肉の料理を出す店のクエストは優先的にやった。

ダンジョンから魔物肉を持ち帰る依頼は、中々条件に見合わないと、需要の割に敬遠されがちなようで、ソウヤはスムーズにクエストを受けることができた。今後、ギルドを通さず、直接取引できたらいいな、と密かに狙っている。

だがいきなり押しかけるのではなく、依頼をこなすことで、きっかけをつかむ。

さて、それとは別に、モンスター素材や薬草、魔石、そして時々ダンジョンに発生する宝箱の中身――意地の悪いミミックも多いが――や落とし物回収で、品がそこそこ増えてきた。

アイテムボックス内にある商品といえば。

1、魔物素材。骨や皮、角、爪など、武具の素材にもなれば、コレクターの求めるものだったりもする。ダンジョンで狩った魔物に希少なものがなかったので、今は高額なものはない。

2、魔物肉。いわゆる食用。猪や狼、オーク、トカゲなどなど。こちらもモンスター的にはレアではないが、持って帰ってくる者が少ないことから、そこそこ値が期待できる。

3、薬草、キノコ、果物。ダンジョンなどで採集したもの。食用もあれば、ポーションなどの薬の素材になる。採集クエストが定期的に出ているから、専門店と直接取引も視野にいれる。

4、拾った武具。ダンジョンに落ちていた剣や盾、その他。持ち主が倒れたのか、あるいは放棄したかは定かではない。状態のよさそうなのは中古として商品になるが、傷んでいるものも少なくない。そっちは部品ごとに分けて、何かの素材として流用できないか考える。

5、魔石。今のところ、ダンジョン産の品としては高額商品。低レベルの魔物では大したものはないが、それなりの大きさになれば、魔法武器の触媒や魔法儀式などで利用できる。天然の魔石のほうも、需要は高い。

以上が、ここ数日の仕入れの成果だ。これを冒険者ギルドを通して、現金化すると……商人ではなく、ただの冒険者になってしまうので、どこでどれを、誰に売るかが重要になっていく。

いちおう行商なのだから、需要のある場所へ赴くスタイル。

ミストは腕を組んだ。

「それで、この仕入れた品を誰に売るの?」

「基本として、必要としているなら、誰でも、どこでも、だ」

固定の店を持たず、各地を回っていく。ただその土地にある同じような店と競合するのは避ける方向でいこうと考えている。

先日の冒険者とのやりとりのように、ダンジョンの中で商売したり、流通の限られた辺境集落だったり。……出張コンビニみたいなものか。

「だから、次は商売の場所だな!」

色々な場所を訪れ、周回し、必要としている人に必要としている物を届ける。

――そう言うと宅配みたいだけど、信用されれば、たぶん宅配も請け負うこともあるだろう。

「ねえ、ソウヤ。そういうのって、先に場所を開拓してから、商品を仕入れるものじゃない? 何が欲しいかわからないうちに、仕入れしても無駄な気がするけれど」

「アイテムボックスがあるから、無駄じゃないよ」

確かに、普通なら仕入れた品の保存場所とか保存期間を勘案しないといけないから、先に品を揃えても無駄になってしまう可能性はあるだろう。

だが、ソウヤのアイテムボックスは、容量無限、生ものも腐らず保存可能。すぐに売れないからと、損することはない。

「それに現地に着いた時に、手土産となるような品がないのは、まずいでしょうよ」

商人が商品ないんじゃ、顔を売れやしない。

「ただ……物の価値がわかる奴が欲しいな」

「あら、ここにきて人材募集?」

「オレは根っからの商人じゃないからなぁ。鑑定もそうだけど、どうしても品定めってのは初心者なんだよ」

適正価格というのも、いまいちわかんないの多いし――ソウヤは考え込む。

「これ幾らって言われたら即答できるくらいにはならないとな。その辺りも勉強したい」

専門家がベストだけど、買い物上手なだけでもいい。だいたいの相場がわかる程度でも構わないとソウヤは思っていた。

「目星はついているの?」

「これから探す」

というわけで、冒険者ギルドの受付嬢に相談してみる。

「――パーティーメンバーの募集なら、そちらの募集板へどうぞ。ご希望の募集がないようなら、ご自身で申請を出すこともできます」

「……そうすっか」

つれない対応である。この受付嬢さんは、壁を作ってプライベートなどに踏み込ませないタイプのようだ。可愛い娘とくれば、ちょっかいを出す冒険者も少なくないだろうから、自衛の一環だろう。……わかっていても、少し寂しいソウヤだった。

そういうことなので、ソウヤとミストは募集板の前へ移動する。貼り紙が無数にあって、それぞれメンバー募集の文章が書かれていた。

前衛募集、ヒーラー募集、マジシャン募集――などなど、さすがダンジョン探索の冒険者の募集チラシ。戦闘職関係の求めが多かった。アイテム鑑定できる商人の募集がかろうじて見つかるが、ソウヤも鑑定能力のある人材を欲しいほうの人間である。

「あのう、すみません……」

遠慮がちな少年の声。

「あ?」

ソウヤが見れば、十代半ばくらいの少年が立っていた。少々ボロいがマントをつけ、腰のベルトはポーチや小物を下げているところからして、冒険者のようだった。

――にしては細いなぁ……。

戦士って体つきではない。その顔立ちも冴えず、冒険者らしいギラギラしたものも感じられない。どこかの小間使いみたいのようだ。

「何か用か?」

「いや……用とか、その……」

態度が不明瞭、というかやたらビクビクしている。ソウヤは怪訝に思うが、ミストがひょっこりと姿を出した。

「ねえ、ソウヤ。この子、ここに紙を貼りたいんじゃないかしら?」

「あ? ……ああ、そうか」

デンと募集板の前に仁王立ちしていれば、そりゃ貼れないだろう。

「すまん。言ってくれればよかったのに」

「あ、いやー、その……」

何故だか少年は俯いてしまう。

「ソウヤが悪いのよ。怖いから」

「えー、それマジ傷つくわ」

ソウヤはポリポリと頭をかく。それをよそに、ミストが少年に歩み寄る。

「それ見せて」

「あ、はい……」

彼女のあまりの美少女っぷりに呆けたか、少年はあっさりと手にしていた紙を渡す。

――あれ、ミストって字読めたっけ?

と思っていたら、案の定、彼女はソウヤに紙を寄越した。

「ソウヤ、読んで」

「お前なぁ。……オレも人を探しているんだが、見てもいい?」

一応、確認をとるソウヤ。相変わらずビビり気味だが、少年は頷いた。