軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第180話、ルガードークへ

ソウヤは、カーシュを呼び、カマルと三人で酒を飲んだ。

これもひとつの戦友会である。カーシュはカマルから、ここ十年の話を聞いて、自分の知らない空白を埋めた。

「お前、王国に復帰するのか?」

「それなんだが……ちょっと考えさせてくれないか」

意外なことに、カーシュは聖騎士としての帰還について渋った。何を迷っているのか、ソウヤにはわからなかったが、カーシュ曰く。

「これからの人生について、もう少し考えたい」

「……そうか」

ソウヤは本人の意思を尊重したい主義である。カーシュがそう言うのであれば、口出しは控える。彼には彼の人生があるのだ。

ちなみに、カマルからランドールの話を聞いて、カーシュは嬉しそうだった。かつての仲間で、自分より先にアイテムボックス内に収容されていた仲間が、外で元気にやっていることに安堵していた。

翌日、カマルと別れた。ソウヤは、ひとつ彼に頼み事をする。

「転送ボックスを、ランドールにも渡してくれないか?」

今後、連絡を取りやすくするためにも。ランドールが、かつての仲間のために回復の秘薬などを探しているなら、見つけた時に報告したり合流する必要もでてくる。そんな時、お互いにどこにいるかわからないのでは困るのだ。

転送ボックス自体は、タルボットの醤油蔵と、エイブルの町の丸焼き亭でもすでに用いている。問題はないはずだ。

「引き受けた」

カマルは手を振った。

「じゃあな、ソウヤ。次に会うのはいつになるかはわからんが、達者でな」

・ ・ ・

銀の翼商会は、ドワーフの集落、ルガードークに向けて出発した。

また戻ってくることになってはいるが、冒険者ギルドと商業ギルドから熱烈な見送りを受けた。

――何だか勇者時代にも、こんなことがあったな。

魔王の軍勢を撃退して村や町を守った後、次へ移動する時に。

浮遊バイクとトレーラーの一団は街道を北上する。盗賊に対する警戒は当たり前のようにされていたが、出てくる盗賊はいなかった。

いつもこうでありたい。

道中、魔獣が出てきたが、特に障害になることなく、次の村へ到着した。

ブレッザ村。周囲を砦のように木製の柵が取り囲み、見張り台もあるなど外への警戒感が露骨に見てとれた。

浮遊バイクで近づいたら、やはり警戒されて村の自警団が武装して集まっていた。冒険者の証と、銀の翼商会と名乗ったら、『あの月下の盗賊団をやっつけた?』と言われた。どうやらここ数日の間に噂が流れていたようだ。

誤解が解けたので、皆が村で休憩を取る中、ソウヤは村長を訪ねた。初めての村なので銀の翼商会として自己紹介をしようという魂胆だ。行商であるからには名を売っておく。

特産品の有無、処分に困っている余剰品の買い取り、そして必要なものがあれば仕入れてくるために情報の収集などを行う。

ちなみに、ブレッザ村が規模の割に防備が厚いのは、バッサンの町との間に走る街道に出没する盗賊が、忘れた頃に村を襲撃してくることがあるので、それに備えてという話が聞けた。

すると、武器や防具などの需要があるのでは、と思ったが、村長によるとドワーフの集落から武具は調達しているという。

なるほど、比較的ドワーフのテリトリーに近いから、彼らと購入、調達しているのはそれほど不思議ではない。

後で村の自警団連中の武具を見たが、半数くらいが、ドワーフ製の良質の装備を持っていた。

……この村で、一般武器を売るのは旨みがなさそうだ。

休憩もそこそこに、次の集落を目指して銀の翼商会は出発した。そして途中、もうひとつ村を経由して、さらに北上。ごつごつした岩山が多くなってきて街道をひた走ると、真北と北東に分岐する。

北へ進めば、ドワーフのテリトリーである。岩だらけの地形をさらに行ったところで、道が下り道になった。左右が崖となっていくその先は、バンガランガ渓谷である。

その途中にドワーフの集落であり、玄関町であるルガードークがある。

そびえ立つ無数の煙突。そこから吐き出される煙。カンカンと金属を打つ音が木霊するルガードークは、無骨な四角い建物が乱立し、ゴチャゴチャした印象を与えた。

へぇー、と、初めて町を見たソフィアが目を丸くした。

「ドワーフって地下に住んでいると思っていたけれど、谷とはいえ、外に町があるのね」

「地下にしか住まないってのは、偏見じゃないか?」

ソウヤは苦笑した。

「王都で鍛冶屋をやってるロッシュは、普通に住んでただろ」

ドワーフの名工、ロッシュヴァーグは、かつてのソウヤの仲間であり、銀の翼商会メンバーのミスリル装備もこしらえた人物だ。ソフィアのミスリル防具も、ロッシュヴァーグが製作した。

「それで、誰に会うんだっけ?」

「ヴァーアの家族」

勇者時代、飛空艇の機関士を務めたドワーフのヴァーア。彼はソウヤが昏睡していた頃、およそ三年前に事故で亡くなったという。

かつての仲間として、弔問も兼ねた今回のルガードーク訪問である。

「うひゃー、やっぱここは活気があるわ」

ライヤーが声を張り上げた。

「旦那、早く部品の調達に行こうぜ」

「そっちはあんたに任せるよ。オレはちょっと用事があるからな。……ライヤー、あんた、この町に来たことがあるか?」

「あるぜ。ここは、飛空艇建造の一大拠点だからな!」

「中古の飛空艇でも買えないかと、訪れて、みっともない交渉をしていました」

機械人形のフィーアが、淡々と告げた。ライヤーは眉をひそめる。

「何だよ、みっともない交渉って?」

「お金もないのに、中古飛空艇をさらに値切って、どうにか手に入れようとしましたよね?」

「……ライヤー、ひょっとして詐欺――」

「おおい、詐欺なんかしねえよっ! フィーア! てめ、何てこと言いやがる!」

ソウヤの疑いの発言を遮り、慌てたライヤーがフィーアを睨んだ。しかしフィーアはどこ吹く風だ。

「違うのですか? お金、持ってませんでしたよね?」

「あれは……その、あれだ。どこまで安くできるか試したんだよ。……買う時のために」

「結局、あの時買うつもりはなかったってことじゃないですか。最低ですね」

フィーアは無表情で、バッサリと言い放った。ライヤーは悔しそうに顔をクシャクシャにさせる。

――みっともねえ顔……。

ソウヤは苦笑する。ルガードークの入り口を見れば、ドワーフの町ながら人間の出入りも多かった。

人間にとって、ドワーフと取引をする場所である町、それがルガードークである。