軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第168話、アジト前・盗賊防衛線

月下の盗賊団のアジトと思われる洞窟の前の広場に、ソウヤたち白銀の翼は向かった。

だが、先手をとって盗賊団は雑兵を送り出してきた。

周りはまだ森の中であり、肉眼では木々や草が邪魔をして全体を捉えることができない。しかし数はたくさんいるのはわかる。

「ふん、まあ、そうくるだろうと思っていた」

ソウヤは斬鉄をアイテムボックスにしまい、両手にガントレットをはめる。

「ソフィアとジンの広範囲魔法を警戒して、乱戦に持ち込むつもりだ」

森の中で炎の魔法は使い難い。草木に引火すれば敵は倒せてもこちらも炎に巻かれてしまう。氷や石つぶての魔法なら木々が盾となる可能性も出てくる。それら遮蔽物を利用して、接近して数で袋叩きにしようという戦術だ。

「近接戦だ。周囲にも注意!」

味方の前に立ち、ソウヤは声を張り上げた。

「よっしゃ、来いやー!」

森の中、盗賊たちが波のように押し寄せた。

だが先制したのは、白銀の翼側だった。ライヤーが魔法ライフルで狙撃。その正確無比な射撃は、枝や茂みの間を抜き、クロスボウやショートボウ持ちの盗賊を撃ち倒した。

そしてジンも、アイスブラストを一発ずつ放ち、こちらもまた敵を貫いていく。広範囲魔法ではないので、敵が押し寄せてくる前に倒しきることは不可能だろう。

「さて、ソフィア。森でも範囲魔法が使えるところを敵に見せてやろう。……間違っても前衛のソウヤたちを巻き込まない範囲でだぞ」

「わかってるわ、ジン師匠!」

ソフィアが杖を掲げる。魔法発動前の精神集中!

「行けっ、風斬り!」

杖を横薙ぎに振るう。すると一陣の突風が吹き抜け、見えない風の刃が森の木ごと、正面の敵を切り裂いた。

「確かに炎は使えないが、別に木を倒していけないわけじゃない」

ジンの言葉に、ソフィアがジンやガルらを避けて、第二波、第三波を放つ。単発の狙撃ができないなら障害物ごと倒せ、とばかりに木が切り倒され、不幸な盗賊が体を両断される。

風斬りの範囲外だが、倒れた木で盗賊たちの足が止まる。運の悪い者は枝に頭を叩きつけられて地に伏したが、被害を免れた者は枝葉を避けて脱出する。

「……はい、収納」

そんな盗賊にタッチして、アイテムボックス送りにするソウヤ。暗殺者のガルは、やはり足止めを食らった盗賊たちが混乱している間に急所を切りつけ、次々に仕留めていった。

森での乱戦は、盗賊たちの想定通りとはならず、ソウヤたちの逆襲を受ける形で終了した。

そのままアジト前広場に到達。そこには盗賊団の第二陣が待ち構えていた。

「ファイアランス!」

「ストーンバレット!」

「アイスブラストっ!」

盗賊たちが魔法を撃ってきた。先制攻撃のつもりだろうが、盗賊団に魔法が使える者がいるのは、生存者から証言を得ている!

「爺さん!!」

「ストーンウォール!」

ゴゴゴっと地面が迫り上がり、岩の壁が瞬時に形成された。飛来した投射魔法は、すべて分厚い壁に阻まれ無効化する。

「ガル、セイジ!」

用意した魔法カードが、爆弾の形に変わる。否、形だけではなく魔法爆弾である。ガルとセイジはそれを岩の壁の向こうに次々に投げつけた。

着弾と同時に爆裂魔法が発動し、盗賊たちを衝撃でなぎ倒した。混乱が巻き起こる。

「あっははっー!!」

笑い声を上げ、ミストが岩の壁を飛び越えた。漆黒の戦乙女は槍を振りかざし、壊乱する敵陣に突っ込んだ。

竜爪槍が盗賊たちを貫き、引き裂く。慌てふためく男たちと、好戦的な笑みを浮かべる美少女。その表情の違いは、そのまま当人たちの精神状態を表していた。

単身飛び込んだミストに圧倒され、統制を失う盗賊団。切り込んできた彼女を迎え撃とうとしたものは、真っ先に血と肉片に変わる。

うへぇ、と岩の壁の低くなっているところから、向こう側を覗いたライヤーが目を回す。

「ずいぶん、おっかないネェちゃんだな!」

「頼もしいだろ?」

ソウヤは飛び出したミストに追いつくべく前線へと走る。負傷し、倒れている盗賊や、襲ってきた盗賊を片っ端からアイテムボックスに放り込む。

二人がいない場所の盗賊たちは、セイジの魔法カード爆弾、ソフィアの広範囲魔法でその数をすり減らしていった。

広場の盗賊は間もなく片付いた。使い魔を通して全体を監視していたジンが報告した。

「敵の親玉らしき者とその側近が洞窟内に入った」

「なら、追撃ね!」

ミストは獰猛な笑みで洞窟を見据える。

――ドラゴンさんは血が滾っているようだ……。

これもひとつの戦場酔いというやつかもしれない。一方でソウヤは気を引き締めた。

「洞窟内だから伏兵や罠もあるぞ! 油断は大敵だ」

ソウヤは、ミスト、ガル、ジンを指名して、アジトへ踏み込む。残るセイジ、ソフィア、ライヤー、フィーアには、退路の確保を兼ねて洞窟の外を見張ってもらう。

「ガル、先導しろ。ミスト、敵の親玉や幹部は生け捕りだ。殺すなよ」

ソウヤは指示を出し、ジンを見た。

「もし、奴らが人質をとったら、そんときは任せるわ」

「ああ、任された」

白銀の翼は二手に分かれた。ソウヤたちは盗賊団アジトに足を踏み入れたのである。

・ ・ ・

月下の盗賊団のリーダー、アロガンテは追い詰められていた。

四十代半ば、山賊の頭目という表現がピッタリの、髭面の男である。ガッチリした体躯を持ち、文句を漏らした手下は拳で黙らせるという荒くれ者だ。

だが、その彼も、アジトへ進撃してきた冒険者グループには驚愕し、またその恐るべき力に恐怖した。

「ありゃあ、Aランク、いやSランクの冒険者にちげぇねえ!」

たった数人に、すでに半分以上の手下がひねり潰された。アジト前の戦いぶりを見て、これは敵わぬとアロガンテは逃げたのだ。

「どうします、ボス!?」

幹部連中も冷や汗を流し、リーダーの行動を見守る。誰もが、彼が逃げたことを責めるつもりはなかった。自分もそうする――それだけ白銀の翼の戦闘力は異常だったのだ。

「こんなことなら、秘密の抜け道でも作っておくんだったぜ……」

アロガンテは吐き捨てた。

この洞窟の出入り口は、すべて正面広場に繋がっている。つまりどこを通ろうとも、外に敵がいたら、そこで鉢合わせである。

「もはや、手はひとつしかねえ! 人質だ! 捕虜を連れてこい!」

襲撃した隊商の報復として敵はやってきたに違いない。そうであるならば、捕らえた捕虜を出せば、少なくとも連中の手を怯ませることができるのではないか?

アロガンテはそう考え、また幹部たちも同意した。もはや、それしか手がなかったのだ。