軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第166話、盗賊団を追え!

「旦那、マジかよ! マジで盗賊団とやり合うつもりか!?」

ライヤーが大げさな手振りをしながら言った。

月下の盗賊団とやらに襲われたバッサンの町の隊商の救助と、ついでに盗賊退治。それを受けたソウヤはギルドの建物から出る。

「オレは冒険者でもあるからな。心配するな、ライヤー。お前に戦いを強要するつもりはない。船の修理をしていてもいいぞ」

「そいつはありがてぇな!」

どこか皮肉げな声をライヤーは出した。

「でもあんたがやられたら、修理どころじゃねえだろ、旦那!」

「確かに」

ソウヤがやられれば、アイテムボックスは使えなくなり、中にいる人間は……どうなるのだろう?

強制的に外に出されるのか、あるいは閉じ込められるのか? 死んだことがないからわからないが、昏睡中はずっと中だった。

「ま、昨日、ゴーレム工場で二百とかゴーレムを潰したし、盗賊がそれより個々の戦闘力に優れているとは思えない」

「二百だぁ!?」

そういえば、ライヤーとフィーアはソウヤが魔王を倒した元勇者であることを知らない。ヒュドラ退治で名の知れた銀の翼商会のことも知らなかったから、たった数人のこの商会に何ができるのかと思っているのだろう。

自殺行為だと見られても不思議ではない。

――魔王の軍勢と戦うことを思えば、何とかなると思うんだ。

体格や力で、人間は魔族やゴーレムに劣る。それらと比べると、全員が正規の訓練を受けているとは思えない盗賊団は格下に見えてしまう。

もちろん、油断はしない。罠や戦術、主に知恵の部分で用心すべきだし、過去の盗賊討伐案件で、決して気を抜いていけないというのはソウヤは学習していた。

ソウヤの本音を言えば、身内が一人でも死ぬようなことがあれば負けだと思っている。慢心はしない。

「まあ、割と許容範囲の広い依頼をとったからな。ヤバイと思う前に引くよ。こう見えて冒険者だからな。修羅場はくぐってきている」

「旦那は冒険者にしか見えねえよ!」

ライヤーは突っ込んだが、すぐに自身の灰色髪をかいた。

「まいったね。おれもまったく心得がねえわけじゃねえが……」

「さっきも言ったが、無理強いはしないぞ」

これは銀の翼商会の他のメンバーにも言えることだ。ミストは間違いなく盗賊狩りに参加するだろう。ガルもオレが行くといえばついてくる。セイジやソフィアは自分自身で判断してもらう。ジンは盗賊退治に協力すると前に言っていたか。

ライヤーとフィーアの戦闘能力がどれくらいあるのか、ソウヤもまだ知らない。戦闘力については未知数だから、お留守番だってあり得る。

「旦那には借りがあるし、こんなとこでくたばってもらっても困るからな」

ライヤーは嘆息した。

「ただ、おれも命は惜しい。どうしようもなくなったら逃げるかもしれねえ」

「構わない。どうしようもなくならなければ、一緒に戦ってくれるんだろう?」

「……旦那には敵わねえなぁ」

軽く拳を突き出してきたので、ソウヤも応える。グータッチだった。

・ ・ ・

街道を進むは、荷車改め被牽引車――トレーラーを引く新型浮遊バイク。運転しているのはセイジ。

ソウヤはコメット号に乗るが、今回は牽引をしない。盗賊団との戦闘に備えて、自由に動けるようになっている。

月下の盗賊団を退治する、と言ったソウヤは、仲間たちに参加の自由を与えた。戦うも退避するも各自の判断を尊重した。

予想どおりというべきか、全員が参加を選んだ。実に好戦的である。

襲撃された地点への移動中、何人かの冒険者、商人の生き残りと出会った。負傷者にはポーションを与え、応急手当。水や軽い食事を与えて、盗賊団に襲われた状況やその後などを軽く事情聴取した。

そして襲撃現場に到着。壊れた馬車が二台ほど、隊商の商人やその部下、護衛だった冒険者の身ぐるみ剥がされた死体が転がっていた。

戦って死んだ冒険者たちは方々に散っていたが、一カ所に死体が寄り集まっていた場所があり、どうやら戦いの後、生き残った者たちを処刑したようだった。死体は男ばかりだった。

――酷ぇことしやがる……。

ソウヤは死者に黙祷を捧げる。場を確認していたガルが、足跡や馬車の移動跡から盗賊団の離脱方向を割り出した。

「偵察を出そう」

ジンが提案し、老魔術師が鳥形の魔法生物を複数召喚して、それを敵の逃走経路方向に扇状に飛ばした。

「ジン師匠、今の魔法って――」

ソフィアが、魔法によって作った使い魔に関心を示す。

「いい機会だ。君もこの魔法を習得するか? 戦場に出るような魔術師なら、索敵用に使い魔を使うのは基本でもあるからね」

「ぜひ、教えて!」

トレーラーのほうで即席魔法講座が始まる。ソウヤたちは浮遊バイクに乗って、ガルが割り出した敵の移動ルートを辿っていく。

なおジンはソフィアを指導する傍ら、使い魔たちの索敵も同時にこなしていた。

「ま、何かが近くにいればワタシが見つけてやるわ」

ミストが浮遊バイクを運転しながら、ソウヤに声をかけた。ドラゴンの魔力探知は、一流魔術師のそれに匹敵する。

「頼りにしている」

ソウヤは、ミストに返しながら、仲間たちの様子を一瞥する。

ガルが浮遊バイク四号で先導。ミストの二号バイクとソウヤのコメット号が続き、最後尾にセイジの操る五号牽引バイクとヨット型トレーラーが走る。

トレーラーには、ソフィアが乗っていた三号バイクが回収され、そのソフィアはデッキでジンから使い魔魔法を教わっている。

同じくデッキではライヤーが、ライフル型魔法銃を手に見張っていて、フィーアも周囲を目視警戒していた。

視界の開けた荒野は間もなく終わり、クラブ山とそれを囲む森が近づいてきた。

「ソウヤー!」

ミストが声を張り上げた。

「前方! 複数の気配! 待ち伏せかもー!」

霧竜の感覚が敵を捉えた。ジンの使い魔が何も見つけなかったということは、これらは空から見えない位置に潜伏しているのかもしれない。

「追尾を警戒していたか、あるいはアジトを守るための防衛線か……」

待ち伏せとわかっているなら、それはすでに奇襲にあらず。

「前哨戦だ! お前ら、抜かるなよ!」

白銀の翼対月下の盗賊団、その戦端が開かれる。