軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第156話、夢は遥か彼方

「ところで旦那、ひとつ聞いていいか?」

ライヤーが問うた。ミストたちと合流しようと12号遺跡から離れようと思った矢先だった。

「何だ?」

「あんた、さっきこう言ってたよな? 『飛空艇を持っていた』って……」

「……それがどうかしたか?」

何となく、嫌な予感がした。世間一般の飛空艇は遺跡からの発掘品か、国や上級貴族の限られた者しか保有していない。

――ま、悪い方に転びそうなら、元は軍にいた、って体で誤魔化すか。

「いや、今も持ってたりしないかなって思ってな――」

ライヤーは自身の灰色の髪をかいた。

「その、もし持ってるなら、今回のおれの取り分で売ってくれないかなー……ってな」

「飛空艇を買う?」

「ああっ! 空は男のロマン! おれは飛空艇で世界を見て回りたいんだよ!」

ライヤーは臆面もなく言い放った。

――ロマン。ああ、わかる。それわかるわ。

ソウヤも、飛空艇で空を自由に飛び回るという夢を持っている。しかし、そうとなれば売るという選択は考えられなかった。

だが、持っていることを明かしてもいいだろう、とソウヤは判断した。何故なら――

「ライヤー、ひょっとして飛空艇とか機械に詳しいか?」

「古代文明時代のもんを含めて、ある程度な。おれが古代文明の研究をやってるのも、元はと言えば、そっちを研究するためなんだぜ」

ライヤーが胸を張れば、ソウヤは考え深げな顔になる。

「つまり……壊れた飛空艇を直せたり?」

「壊れてるのか?」

真顔になるライヤー。ソウヤは頷く。

「修理しないと使えない。で、どうなんだ?」

「部品があればな。よっぽど凝ったもんじゃなきゃ直せると思うぜ」

「ふむ……。こちらも質問に答えよう。飛空艇を一隻持ってる。ただし修理が必要だ。しかし、こいつを売るつもりはない」

ソウヤはきっぱりと告げた。

「将来的に、銀の翼商会で仕事で飛ばすことになる。それに、オレもあんたと同じで、飛空艇で世界を巡るって夢がある」

「夢……。そっか」

ぼりぼりと自身の髪をかきつつ、ライヤーは困った表情を浮かべた。

本音を言えば、船が欲しい。だがソウヤが夢だと言葉にした以上、それ以上にライヤーは強く出られなかった。同じ夢と聞いたら、理解はできるのだ。だが自分を差し置いて、譲れなんて言えない。逆の立場だったら絶対に、首を縦に振らないだろう。

ライヤーが、どう言葉にしていいか逡巡する中、ソウヤは言った。

「だがな、さっきも言った通り、修理が必要だ。そしてオレは、飛空艇を直せる人材を探している。定期的に面倒を見れて、ついでに船長を任せられる人材をな」

「それって、つまり――」

「もしその気があるならやるか? キャプテンシートは空いているぞ」

ライヤーは目が点になった。間抜け顔をさらして固まっている彼を、フィーアがポンとその肩を叩いた。それでようやく我に返る。

「旦那はツイてると思ったが、どうやらツキはおれにもあったらしいッ!!」

叫ぶようにテンションが上がるライヤー。

「その船長に、志願してもいいかい、旦那!?」

「オーナーはオレ。仕事でどこに行くかは、オレの指示に従ってもらう。だが船長はあんただ。それでいいか?」

「ああ! ああ! 最高だ、旦那! いやオーナー!」

交渉成立! どちらともなく出した手でがっちりと握手を交わす。

「……とはいえ、まずは船を見てもらおう。直すにしても、専門家の意見が聞きたい」

「そうだな。いや旦那は話がわかる。銀の翼商会だっけ? 名前に翼があるのも気に入った! よろしく頼む!」

ということで、飛空艇修理の第一歩として、機械のいじれる人材をゲットである。

そこでふと、ソウヤはフィーアを見る。

「彼女はいいのか? その銀の翼商会に入ることについて」

「ライヤーが、そうするのならばわたしは従うだけです」

青髪少女がコクリと頷けば、ライヤーは口を開いた。

「きちんと紹介していなかったな。彼女は、古代文明時代の自動人形なんだ」

自動人形――ロボットのようなものだろう。背中にジェットパックを内蔵。さらに腕も伸びるらしい。

「と言っても、動き出したのはおれが拾った時が初めてらしくて、肝心の古代文明時代のことは何にも知らねえみたいだがな」

ライヤーは、フィーアの肩に手を回した。

「おれをマスター、つまり主に選んだみたいでよ。その縁で、おれが面倒を見ているってわけだ」

「ライヤー、訂正を。面倒を見ているのはわたしの方です」

「家事とか食事とか、そういうこと言ってんじゃねえんだよ」

即座にツッコミを返すライヤー。今のやりとりを聞いた限り、主従関係というよりは、コンビのように感じた。

――まあ、オレはひとりくらい増えても全然構わないけどな。

ライヤーの仕事のヘルパーとして、むしろいたほうがいいのではないか。意思疎通もできているに違いない。

また、自動人形とはどんなものか気になるソウヤである。

それはともかくとして、アイテムボックスに収納している飛空艇へ、ライヤーたちをご招待。アイテムボックスとは言わず、魔法の格納庫と適当なことを言っておいた。

あまり意味はないが、呼び方ひとつで秘密の守り方も変わるものだ。

「うおっ、マジで異空間かよ!?」

古代文明時代の遺産と言ったら、ライヤーは信じた。そのままアイテムボックス内の、飛空艇を披露する。

「……っ」

その姿を見て、ライヤーは息を呑んだ。船体にいくつも破損があるが、大まかな形は留めている。

「こいつは凄い。……王国が作ったもんじゃねえな。こいつは、古代文明時代の船だ」

感嘆するライヤー。ソウヤはセイジと彼の後に続きながら、船を指さした。

「まあ、見ての通り、このままじゃ飛べないがな」

「見た感じは直せそうだが……やっぱ中の機械を見てみねえとな。旦那、中いいかい?」

「もちろん。少々汚れているが見てくれ。それでどうにかなりそうか、意見を聞かせてほしい」

許可を出すや否や、ライヤーは駆けていった。夢というだけあって、飛空艇に触りたかったのだろう。

それを微笑ましく思いつつ、そういえば、ミストたちに、彼らのことを紹介しないといけないな、ソウヤは心の中で呟くのだった。