軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第150話、完成、夢の車!

荒事にはなったが、ソフィアを守ろうと前に出たセイジの行動には、ソウヤは「よくやった」と褒めた。

ただし、数で負けたという事実に目を背けてはいけない。次は複数が相手でも勝てるようにトレーニングをしようと告げるのを忘れなかった。

もしこれが戦場だったら、おそらく死んでいた。この手の状況を無傷でくぐり抜けられるようになるのが理想である。

――お嬢様には、格好いいところを見せたいだろうしな。

今回の件は、はたしてセイジ、ソフィア、ガルの関係に影響するところはあるのか。現場を見ていないから本当のところはわからないが、聞いた限りだと、苦戦したセイジがやや不利、駆けつけたガルが好感度アップ――になるのか。

――うーん、ソフィアさん次第だけど、どうなのかねぇ……。

さて、喧嘩の件はそこまでにして、ソウヤはジンに冒険者ギルドでの会談内容を伝えた。彼らは浮遊バイクや、それに類する乗り物に大変関心を抱いている。

「――前に話したバイク工場についてもな。この町に誘致したいようだ」

「現物がないのに、ずいぶんと気前がいいのだな」

ジンは腕を組んだ。ソウヤも眉を軽くひそめた。

「銀の翼商会の評判が過大に伝わっている……そんな気がしないでもない」

「化けの皮がはがれることがないよう祈ろう」

ジンは冗談めかした。

噂というのは尾びれのつくものだ。伝言ゲームがおかしな方向へねじれていくのはよくあることである。

「近いうちに実際のバイクを作って、お披露目しないといけないかな?」

「目下、開発中ってことにしている。期限は設けてないが、今後バイクを商品として売り出すなら、あまり待たせないほうがいいと思う」

「同感だ。需要が見込めるなら、躊躇う理由もない」

「悪いな。バイク作りに関しては爺さん頼りだ。別段、急かすつもりはないから、ゆっくりやってくれ」

ソウヤが言えば、ジンは鷹揚に頷いた。

「セイジとソフィアに魔法文字を教えている。マスターすれば、こちらの人員も増やせる」

「さすがだな」

「それで、ソウヤ。我らが銀の翼商会の車が完成した」

「おお、できたのか!」

ソウヤは笑みを浮かべた。

「細かな調整は必要だろうがね……。見るかね?」

「もちろん!」

ソウヤは逸る気持ちを抑え、アイテムボックス内、ジンの工房へと移動する。

果たしてそこに鎮座していたのは――

「ヨットみたいだな」

「クルーザーと言ってほしいな。まあ、私も元の世界じゃ、ヨットやクルーザーに乗ったことはないがね」

「前のよりかなりデカいな」

乗るにも専用のステップや短いながらのハシゴが必要な高さがあった。馬車に乗るにもステップはあるが、それより高いのだ。

浮遊する車のためか、車輪はなし。地面に設置している状態だと車というより、陸に上がった船である。以前見せてもらった図の通りではあるのだが。

――これが浮かぶんだもんなぁ。

「でっかいキャンピングカーみたいでワクワクするな」

「夢の自家用車に通じる部分はあるかもしれない。幅があるから、日本の一般道路で走らせるのは無理だな」

中へ案内しよう、とジンが後ろのステップ型ハシゴを使って昇った。上がると、ますますヨットを思わせるデッキが広がっている。全体が箱形であることを除けば、マストなどがない船のよう、というのは、あながち間違っていない。

キャビンへの入りはまんまヨットなどの船だが、中は客室のほか、小さいながらもキッチンやトイレがあった。後は倉庫か。

キッチンは魔石式のコンロや水道が完備されている。ジン曰く、空調もつけたという。さすが日本人。魔法的技術で、現代のそれを再現していた。

「全員の個室はないがね。まあ、アイテムボックスハウスを使うから、いらないだろうとオミットした。一応、客室で休むことはできるし、屋外になるがデッキに布団を敷いて寝ることはできる」

「いいね」

「それ以外については、馬車と変わらない。地面から浮く以外は、牽引式だからバイクなどに牽かせないと動けない」

「デッキがあるから、敵が襲ってきたら、そこから応戦できるな」

ソウヤは上から回りを見下ろす。

弓などの射撃武器はもちろん、魔法なども撃ち放題。わざわざ車を停めて降りなくても戦えるのはいい。

「何ともタイムリーだな」

「というと?」

「近場の盗賊退治をしようと思っていてね」

バッサンの町が抱える問題。その解決の一助になれば、とソウヤは考えていた。

「盗賊退治ね」

「一応、ギルドからクエストは出ている。難度が高くて、中々消化されないらしいがね」

この辺りの盗賊は規模が大きいらしい。生半可な戦力では返り討ちだろう。だから、依頼はあっても、やる者はあまりいない。

「退治したところで、一時的なものらしいけどな。浮遊バイクの件はしばらく先のことになるだろうし」

「バッサンの町は今、苦しめられている、と。なるほど、理解した」

ジンは小さく頷いた。

「この車で行くなら武装も必要か?」

老魔術師の問いに、ソウヤも考える。結果的に武装より守りを重視して、現時点では防御魔法を発動できるようにするに留めた。攻撃面では、銀の翼商会の個々の面々で充分制圧が可能だろうと思われたからだ。

「それでこの車を牽引する浮遊バイクだが――」

話変わって、先頭へ。

「バイクも新型を使う。ソウヤはコメット号を自由に使いたいだろうからね」

専用バイクは、これまでジンが製作したバイクの中で一番大きかった。

いかにも近未来的なフォルム。流線形のラインは攻撃性よりも安定と力強さを感じさせる。

「複座?」

「車と切り離して、戦闘や偵察などにも使えないかな、と思ってね」

車体後部が大きく左右に張り出しているので、バイクというより三輪バギーのように見えた。バイクほどの機敏さはなさそうだが、安定感が半端ない。

「これはこれで人気が出そうなデザインだな」

「車を牽いて移動する間は、銀の翼商会の顔になるわけだからね。気を遣うさ」

ジンの言葉に、ソウヤは「それもそうか」と同意する。街道などを移動している旅人などがまず見ることになるのは、この牽引浮遊バイクになるのだから。