作品タイトル不明
58話 楽しかったデート、そして3大アイドルとの邂逅
最初に俺たちが向かった場所はショッピングモールだった。
この場所を一番最初に選んだ理由、それは正式に恋人関係となった思い出の品を購入する為だった。
「あっ、見て誠也君。これなんてどうかな?」
二人でモール内の雑貨店を見回っていると、星良が1つの商品を手に取った。
それはハート型のペアネックレスだった。そのネックレスは一つのハートが二つに分け合っており、二人一組で完成する仕様となっている。
「なんだかいかにも熱烈カップルの持ち物って感じだな」
「そう? 私は全然気にならないけど。それにさ、誠也君と一心同体って気分が味わえて心地よくなるぐらいだよ」
「そうだな。どうせなら二人揃って思い出の品になる方が良いよな」
こうして俺たちは交際記念として、このペアネックレスを購入する事とした。
「それじゃあレジに持ってくよ」
「うん。あっ、代金については私も半分出すからね」
星良のこの言葉に対し、ここは男の俺に出させてくれと言ったが、『二人の思い出の品を誠也君だけのお金で買ってどうするの?』、とあまりにも当たり前の事を言われ何も言い返せなかった。
ちなみにだが、このやり取りをレジで見ていた女性店員は俺の方を見ながら困り顔で笑っていた。その顔は明らかに『かっこ悪い彼氏さん』と言わんばかりで、カップル商品をレジに持っていく以上の恥をかいてしまった。
「くっそー、赤っ恥かいちまったよ」
「でも誠也君が悪いんだよ? 交際記念のプレゼントを折半せず独りで買おうとしたんだから」
「分かってるよ。空気読めなくて悪かったな」
レジでの一幕を思い返し星良はクスクスと笑う。
俺としては自分がお金を出してカッコいい所を見せようとした結果、逆に恥をかいた事実に思わず口を尖らせてしまう。
そんなむくれている俺の反応に、星良はやれやれと首を横に振る。
「もうっ、せっかくのデートでむくれないの……ちゅ」
モール内を並んで歩きながら、星良は一瞬だけ顔を近づけ俺の頬に口づけをしてきた。
日曜日の大型ショッピングモールだ。刹那の間とはいえ訪れている客数も多く、当然すれ違う人々には目撃されてしまう。
「あら見た? あの娘ったら今……」
「最近の若い子は進んでるのね~」
その瞬間を目撃していたおばさん方は微笑ましい顔をしながら囁き合い、逆に1人で買い物に訪れている男客からは嫉妬の混じった視線を向けられる。
「せ、星良。もう少し場所を弁えた方がいいって」
「ちゃんと弁えてるよ。だから唇じゃなくてほっぺにしたんだから」
まるで猫のように自由な恋人に苦笑しつつも、その後の彼女とのデートは本当に心が躍った。
昼食は少しお洒落なレストランで食べて、ゲームセンターでクレーンゲームを楽しんだり、近くの映画館まで出向き、次のデートの時に一緒に見る映画を吟味したり、楽しい時間は過ぎて行った。
充足感に包まれた時間はあっという間に終わり、気が付けばすっかり日も沈みかけていた。
「今日のデート、本当に楽しかったね」
「ああ、そうだな」
俺がクレーンゲームで取ってあげたぬいぐるみを胸に抱きながら、彼女は上機嫌に笑ってくれた。この笑顔を今日一日中見れただけで、俺にとっては幸せな時間を過ごせたと胸を張って言えた。
「ほんっと、楽しい時間ってどうしてこうも早く過ぎるのかな?」
デートの時間も終わり、暗くなる前に駅前を目指していると星良が呟いた。
まだ帰りたくない、そういわれている気がした。正直に言えば俺だってもっと彼女と居たい。離れる事が嫌で仕方なかった。
「本音を言えば俺だってまだまだ星良と一緒にいたいよ。でもさ、明日だって学校で会えるし、それに夏休みはもっと二人の時間を過ごせるよ」
「そうだね。うん、終わる時間を嘆くより、この先の誠也君と過ごす時間を考えなきゃ!」
そう言って普段通りの明るさを取り戻すと腕に抱き着いてきた。
その素直な彼女の振る舞いが俺の中の名残惜しさを消してくた。そのまま二人で腕を組んだまま並んで歩き続ける。お互いの歩幅を合わせ、別れる瞬間までお互いの時間を噛みしめるように。
だがもう間もなく駅の構内へと入る直前だった。背後から女性の声が俺たちを呼び止めた。
「あれ~もしかして星良ちゃん?」
とても明るい声に背中を叩かれ、俺と星良は同時に振り返った。
そこには金髪のショートヘアーで、露出高めのファッションをした同年代の女性が立っていた。
その人物を見て星良の笑顔が曇りだす。
何故星良がこんな顔を見せるのかは不明だが、俺もこの人物については見覚えがあった。
「こんな場所で会うなんて奇遇だね~」
眼前に立つ女性は俺の在籍する学校では星良に匹敵する有名人だからだ。
星良と同じく、学園3大アイドルと呼ばれる1人、 小日向瑛美(こひなたえいみ) だった。