作品タイトル不明
47話 より深まる二人
「北條組の力を使ってまで星良は俺を救おうとしてくれた。その気持ちは本当に嬉しいんだけど、どうして俺には一言も相談せず、君だけで事を進めたんだ?」
『それは……』
理由は間違いなく、俺に迷惑を掛けたくない思いからだろう。
だがそれは裏を返せばだ、俺には力になれる事が何もないと言っているも同義だった。
俺はオブラートに包むことなく、星良にこう口走っていた。
「あのさ、情けない話なんだけど、星良にとって俺はそんなに頼りない?」
『え、急にどうして? そんな訳がな……』
「いや、別に嫌味で言っている訳じゃないんだ。俺自身も強く自覚してるんだ。今の俺と星良は対等じゃない。俺が一方的に寄りかかっているだけだって……」
『そんな訳ない! そんな訳がないよ!!』
俺の自虐的な言葉に今まで意気消沈していた星良が勢いよく否定してくれる。
そこから次々と彼女にとって俺の頼りになる部分を伝えられ、必死になって自分と対等である事を証明しようとしてくれる。
ほんと、俺には勿体ないぐらい、いい娘だよな。
そう思えば思うほど、今の自分のままではいけないと自覚させられる。
「ごめんな星良。結局は俺が不甲斐ないから君に陰で迷惑をかけている」
『違うっ! 違うよ誠也君。私は迷惑だなんて……』
そう、星良はきっと俺の為に動くことを重荷など感じていないのだろう。だが一方的に寄りかかられてる現状を重荷に感じない、それこそが最大の問題点なのだ。
もしここで俺が『そうなんだ』と言って彼女の言い分に納得すれば、彼女は更に俺を甘やかしてしまう。そして俺もまた彼女の持つ力に依存してしまう。
一方的に養われるだけの、怠惰な男が星良の様な素晴らしい女性の隣に立つ資格はない。
「思い返せばこの短い期間に俺は星良に助けてもらってばかりだ。ほんと……ダメダメな彼氏だよ。そりゃクラスメイト達からも交際を怪訝に思われるわけだ」
『違う……ちがうよぉ……』
スマホの向こう側で星良の声は震えていた。
きっと彼女にとっては、俺が自分を貶めるような発言も胸が痛むのだろう。
そして……こんな風に彼女を苦しめる自分のままでいたくない。
「俺さ……星良と〝対等〟になれるように頑張るよ」
『もうちゃんと私と誠也君は対と……』
「いいや対等じゃない。今の俺は君に甘えているだけだ」
きっぱり、そう言い切ると星良は怯えた声でこう呟いた。
『もしかして誠也君……自分が不甲斐ないから別れようなんて……考えてないよね?』
今までの流れなら確かに俺が言い出しそうな事かもしれない。
俺では君に相応しくない、だから君は本当に相応しい相手を探してくれ。確かに昔の俺なら、双葉に嘘告をされて泣いていた時のままだったら、こんな馬鹿なことを言い出していたかもしれない。
だが今の俺には星良と離れるなど、そんな気などさらさらない。
「早とちりしないでくれ。俺は君と別れる気なんて毛ほどもないよ。あくまで俺が言いたいのは、今の俺は君に背負われてばかりで、まともな恋人関係でないと君に知ってほしかったんだ」
別れる気など皆無である意思表示をすると、彼女はひとまず安堵していた。
「先輩達から自白を取ってくれた事は本当にありがとう。でもさ、これからは俺にも悩ませてくれ。星良が悩んでいるときは遠慮なく俺に相談してほしい。俺もさ、星良に迷惑が掛かる事が怖くて最初は暴力を振るわれた事、黙ってようかなんて考えていた。でもそれは間違いだって今は強く思う。今回みたく悩みができたら抱え込まず星良にちゃんと話すから。恋人なんだから……笑う時も、悩む時も、悲しむ時も……一緒に共感しよう?」
俺がそこまで言うと、ついにスピーカーからは涙を呑む嗚咽が聴こえてきた。
『ごめん……なさい。誠也君は私に、自分の為に汚れて欲しくないって言ってくれたのに。それなのに私は……私は……』
「いいんだよ。どう考えても一番の原因は俺なんだ。俺の方こそ無意識に追い込んで、ごめんな……」
気が付けば俺も星良も二人ともぐずぐずに泣きながら話していた。
だがこの日を境に俺と星良の関係は大きく変化する。
護られてばかりだった少年は、一緒に強くなる決心を固めた。
甘やかしてばかりだった少女は、抱え込まず頼る事を覚えた。
雨降って地固まり、お互いの悪い部分を認め合ったことで俺たちの関係はより深まった。
だがこれで全て一件落着、ではない。当面の双葉やサッカー部の先輩達との決着、これを片付けなければいけないのだ。
星良が言うには双葉が言い逃れできない証拠は既に揃い終わっており、俺さえよければ明日に決着をつける心構えでいるらしい。
無論、俺も今回の問題をずるずる無駄に先延ばしにする気などない。
これまで俺を苦しめてきたもう1人の幼馴染、そしてサッカー部の暴行問題。
全ての終止符を打つべく、翌日の最終決戦へと俺と星良は望む。