軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17話 知られてしまった本性

「え、嘘告って何?」

クラスの女子の1人が声に出してそう呟きを零す。

その女子の発言が波紋となって広がり、クラス中がざわめき出す。

「三日月さんが大道君に嘘告したってこと?」

「さっきまで大道が北條さんを脅したとか言ってたけど、三日月さんがむしろ嘘告して弄んだってことか。だとしたらサイテーだろ」

昨日の放課後の出来事を知っているのは騙した双葉と騙された俺、その現場に居合わせた双葉とつるんでいる女子グループ、そして星良のごく一部だけだ。

当然だがクラス内のほとんどの生徒は、俺が見世物にされた事実は知らない。

これまでとは異なる俺の強気な姿勢、そして投下された新事実にクラスの皆が俺と双葉を交互に見やる。

いったいどちらが被害者なのか、加害者なのか、クラス中の疑惑の視線が俺と双葉に突き刺さった。

「な、あ……いや……」

まさか昨日の嘘告を持ち出されるとは微塵も思っていなかったのか、双葉は目に見えて狼狽えだす。それとは対照的に俺は一切ブレず、滑稽に右往左往する双葉を見据える。

「三日月さんのあの反応……まさか……」

「マジかよ。三日月さんってリーダーシップもあるし、とても話しやすくて尊敬してたのに」

クラスの皆が双葉に軽蔑の籠った白い眼を向ける。

自分の積み上げてきたイメージが崩れていく事に焦った彼女は、ここで完全なる悪手を打ってしまう。

「ち、違うって! 確かに嘘告したけどさ、それはあの娘達が決めた罰ゲームだったから……」

「はあッ!?」

「ちょっと何言ってんの!?」

おいおい、まさかの否定ナシかよ。しかも仲の良かった女子グループまで巻き込んで……。

てっきり『出鱈目を言うな!』と否定され、激しい口論になると身構えていたが、正常な判断能力が低下した双葉はあろうことか事実を否定せず、それどころか肯定してしまった。しかも遠巻きに様子を伺っていた女子連中まで巻き込んでだ。まあ、実際に巻き込まれた連中も俺を見世物扱いしていたので、特に同情の余地はないが。

墓穴を掘る彼女に呆れている間も、双葉は巻き込んだ女子連中といがみ合い続ける。

「ちょっとうち等を巻き込まないでよ!?」

「うるっさいわね! あんた達が罰ゲームなんて言うから私は嫌々やらされただけよ!」

「どの口が言ってんのよ! あんたノリノリで『ちょっと冴えない幼馴染に告白してくるわー(笑)』って言ってたじゃん!!」

お互いに責任を擦り付け合う双葉達のグールプはもう周りなど見えていなかった。

呆れて誰も何も言えなくなる。俺や星良、本性を知ってドン引きするクラスメイト達、大勢の無言の視線に意識を向けず、まるで子供の様に彼女たちは互いに責任を押し付け合う。

「ほんと……情けない……」

醜い罵り合いを無言で眺めていた一同の中で、星良が心底冷めた声でそう呟く。

外部から投げ込まれたその言葉で、ようやく双葉達の意識も俺たちに向き直った。そして今更ながらにしまったと言わんばかりの焦りを見せる。

「あっ、今の違うの。その、ちょっと混乱しちゃってさ、嘘告白なんて私がするわけないじゃ~ん! あはははは……ぁ……」

見苦しく冗談だと口にする双葉だが、もう手遅れだろう。

最初は彼女に同調していたクラスの皆は、もう憐れみや侮蔑の混在した視線を無言で双葉達グループに向けるだけだった。

なんとか必死に挽回しようと、意地汚く足掻こうとする双葉だったが、そこへタイミングよく担任の教師が教室に入って来た。

「よーし、朝のホームルーム始めるぞ」

その言葉に全ての生徒がそれぞれ無言で自分の席に着席した。当然、俺と星良もそそくさと席に戻る。

その中で取り残された双葉はポツンと佇み、事情を知らない担任から着席するように軽く注意をされていた。

◇◇◇

私は自分の置かれた状況に内心冷や汗が止まらなかった。

どどどどうしよう? まさか私の方がこんな展開に立たされるなんて!?

まさか引っ込み思案なあの誠也が、クラスメイト達の前で堂々と北條との交際宣言をするとは思いもしなかった。

その上に昨日の罰ゲームによる噓告白まで暴露され、これまで私が積み上げてきたイメージに傷を付けられる始末。

今まで私のことを親し気に見つめていたクラスメイト達だったが、今の向けられる視線は冷えて仕方がない。

誰も彼もが私に対して白けた目を向け、四面楚歌の窮地に陥ってしまった。

どうしてよ、どうして私がこんな仕打ちを受けないといけないのよ!?

私の中の予定では針の筵となるのは誠也の筈だった。クラスの誰も彼もから見放され、北條との関係も消滅し、最後は私に縋りつく流れを作る筈だったのに!!

「おーい三日月、早く席に付けよ」

私の心情など一切察せない能天気な担任の注意が煩わしい。

こんなにも私が苦しんでいるというのに、その原因を作った誠也は振り向きすらせず教壇の方を見続けている。

愛している人からの悪逆行為に歯噛みしつつ、私は悔し気に机へ視線を落とすしかできなかった。

どうして私がこんな目に遭わないと……!?

四方八方から向けられる視線に耐え切れず、私は俯く事しかできなかった。