軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編:ピクニック

「どうして来なかったんだ?」

「……お兄様が、女は足手まといだから来るなって言ったんだもの」

兄の友人であるクロードからピクニックに誘われた時はオパールも嬉しかった。

しかし、当日になって兄について来るなと言われ、すっかり拗ねたオパールはお気に入りの場所に隠れていたのだ。

まだ五歳だからという理由よりも、女だからという理由にオパールは腹を立てていた。

そこに、ピクニックから帰ってきたらしいクロードが探しにきてくれたのに、オパールは声をかけられても姿を見せることはなかった。

すると、クロードの残念そうな声が聞こえる。

「気にしなくてよかったのに。オパールなら大丈夫だってわかってたから誘ったんだよ」

「……私だから?」

「そう。オパールはとても勇敢だからな」

「勇敢……」

この言葉にはかなり心が揺れた。

だが、続いた言葉がオパールの心を頑なにする。

「だから拗ねてないで下りてこいよ、オパール」

「いやよ。別に拗ねてなんかないんだから!」

「そうか……」

お気に入りの場所である、枝を大きく広げた木の上からオパールが叫べば、クロードはため息交じりに答えた。

しばらく沈黙が落ちたが、やがて聞こえたのは足音。

はっとしてオパールが急ぎ枝の間から下を覗けば、クロードが去っていく姿が見えた。

意地なんて張るんじゃなかった。

後悔しても遅い。

せっかくクロードが迎えにきてくれたのに、オパールは拒否して呆れられてしまったのだ。

今すぐ木から下りてクロードを追いかけようかと腰を浮かせ、すぐに元の位置に戻る。

もし追いかけても拒絶されたら?

たった今、自分がしてしまったことがどれだけ無情なことかに気付いて、オパールは小さく震えた。

それからの時間は、先ほど以上につらく悲しいものだった。

頑固で素直になれない自分に腹が立ち、クロードにこのまま拒絶されてしまう恐怖に頭が占められる。

しかし、混乱する頭の中で徐々に大きくなる考えが一つ。

「やっぱり、謝らなくちゃ」

悪かったのはオパールなのだから、このまま嫌われてしまっても、謝罪だけはしなければならない。

勇気を集めて決意を固め、オパールが木から下りようと腰を浮かせた時、再び足音が聞こえた。

今度はこちらにどんどん近づいてくる。

下を覗けばクロードの頭が見え、オパールが目を丸くしているうちに、クロードは器用に木を登ってきた。

「オパール、ちょっと持ってて」

「……うん」

クロードが腕に提げていたバスケットを差し出し、オパールは不思議に思いながらも受け取った。

どうやらクロードの定位置になっている枝に座るためには邪魔だったらしい。

オパールはクロードから視線を移し、バスケットの中を覗いて驚いた。

「クロード、これ……」

「ああ、マルシアに頼んだんだ」

「……ピクニックにまた行くの?」

「これがピクニックだろ?」

枝の位置関係からほとんど隣に座ったクロードが、バスケットへと手を伸ばす。

そしてバスケットの中から、家政婦のマルシアが急いで用意してくれた薄くスライスしたパンとチーズを取り出した。

バスケットにはまだ果物やコルクで栓をした果実水入りの瓶も入っている。

「ほら、食べよう。お昼もまだなんだって?」

「……うん」

クロードからパンを受け取りながら、オパールは弱々しく返事をした。

思わず泣いてしまいそうになったが、せっかくのピクニックを涙で台無しにしたくない。

その気持ちから、オパールは精一杯の笑みを浮かべた。

「ありがとう、クロード」

「どういたしまして。まあ、ちょっとバランスが悪くて食べにくいけど、オパールなら大丈夫だろ?」

「もちろん!」

お礼を言うと、クロードは笑って答えてくれる。

その笑顔が勇気をくれた。

「クロード、さっきはごめんなさい」

「うん、いいよ」

「本当に?」

「ああ」

「……どうして、クロードはいつも簡単に許してくれるの? 腹が立ったりしないの?」

いつもいつも、クロードはオパールが悪いことをしても謝ればすぐに許してくれる。

それがオパールには不思議だった。

「それは、オパールが必ず謝ってくれるからだよ。自分が悪いことをしたって時にはね。だから、腹も立たない」

「……クロードって変わってるわ」

「そうかな?」

オパールがぼそりと呟くと、クロードは楽しそうに笑う。

クロードの優しい笑顔を見て嬉しくなったオパールは、もう考えることをやめて食事に集中したのだった。