作品タイトル不明
14話 ライトvsヒロ1
「ナズナ! ストップ!」
『!? ご、ご主人様! め、メイ!』
アオユキ、エリーと分かれた後、僕とメイは全速力で敵ダンジョン最下層へと下っていった。
その際、罠は一切なく――正確にはナズナと思わしき人物が破壊した罠の残骸が多数あった。
恐らく、設置されている罠全てが起動、破壊されているだろう。
お陰で足止めされることなく、ナズナが僕の最後の復讐相手『ヒロ』に手を出す前にギリギリで追いつく事に成功した。
ナズナは大剣プロメテウスの力で増え、ヒロと戦う寸前になっていた。
出発前に『ヒロは僕の最後の復讐相手、獲物だ。手を出さないように』と釘を刺していなかったのが悪いのだが……。
危なく僕が彼を倒す前に、ナズナに先を越されるところだった。
僕は安堵の溜息を漏らすと、ナズナへと声をかける。
「ナズナ、まずは無事でよかったよ」
「ご主人様も無事でなによりだぜ! メイもな! やっと合流できたぞ!」
ナズナは1人に戻ると、心底嬉しそうに僕達へと駆け寄ってくた。
僕は主を見つけた子犬のように駆け寄ってくるナズナの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに自分からも押しつけてくる。
一通り、互いの無事を確認し終えると、僕は彼女達へと告げる。
「メイ、ナズナ、これは僕の我が儘だ。彼……ヒロだけは僕1人だけで戦わせてくれ」
「畏まりました。ライト様、ご武運を」
「ご主人様がアイツと戦うのか? 分かった、手は出さないぞ!」
メイは礼儀正しく一礼。
ナズナは元気よく返事をした。
メイは顔を上げると、近づき耳元で伝えてくる。
(鑑定した結果、レベル9999。恩恵などは弾かれ確認することは出来ませんでした。お気を付けてください)
僕はメイの言葉に小さく頷き、改めてヒロへと向き直り歩み寄る。
ある程度の距離を詰めると、足を止め彼を睨みつつ問う。
「貴様が竜人帝国側『ますたー』リーダーのヒロでいいんだな?」
「……ああ、ボクがヒロですよ」
ミキの言葉通り、外見的特徴――見た目、どこかの王族のような整った顔立ちに、高貴な雰囲気、衣服に袖を通している人物。
やはり、彼がヒロで間違いないらしい。
僕は今にも爆発しそうな憎しみに奥歯を噛みしめ堪え、彼に尋ねる。
「貴様がヒロなら、聞きたいことがある。どうして僕の村、故郷を滅ぼした。どうして村人達、両親を殺したりしたんだ! 答えろ!」
「…………」
後半語気が強くなり、声を荒げてしまう。
ナズナ自身が怒られている訳でもないのに、彼女が震えるのを知覚する。
逆にヒロは怒りを向けられているにもかかわらず、反応は鈍かった。
彼は小首を傾げながら返答する。
「村を滅ぼした? といわれても……過去に様々な理由で沢山の村を滅ぼしたことがあるので……。どうしてと言われてもどこの村か正確に分からないと答えられないんですよね」
「……ッ!」
彼の返答に僕は脳みその血管が物理的に、切れそうになるほどの怒りを覚えた。
正直、怒りにまかせてそのままヒロに突撃しなかった自分を褒めたいぐらいだ。
僕は怒り、殺意、敵意、憎悪を言葉に乗せて、叫び聞かせる。
「約三年前! 人種王国北部開発地域にあった村だ! 僕が『偽ますたー』だと判明し、『奈落』で処分されたあと! 貴様がなぜか破壊したんだろう!?」
「約三年前、人種王国北部開発地域の村、『偽マスター』……ああ、はいはいはい!」
僕の怒声も受け流しつつ、彼は片手を顎に当てて考え込み、記憶を掘り返した。
いくつかの単語をヒントに、若干の時間をようしたが思い出したようだ。
「あの村ですか。確かにボクが滅ぼしましたね。君が『偽マスター』の? 後ろのメイドさん、彼女が口にした名前『ライト様』。君があの『偽マスター』のライトなのかい?」
「そうだ」
「驚いた……まさか生きていたなんて……。正直、ボク達の話し合いでは君が生きている可能性も考えたが、実際のところは死んでいると思っていたのに……」
「そんなことはどうでもいい! どうして僕の村を滅ぼしたのか早く答えろ!」
ヒロの態度に苛立ち、さらに語気が荒くなってしまう。
彼は軽く溜息をついた後、答える。
「端的に言えば、『偽マスター』のライトくんが産まれた村だから、念のために滅ぼしたんですよ」
「……どういう意味だ?」
「『偽マスター』が産まれたなら、可能性は低いですが、もしかしたら『C』が産まれる可能性がある。だから、わざわざ一番レベルが高かったボクが、時間を作って村に足を伸ばし全力で村人達を殺したんですよ」
ヒロは微苦笑しながら、肩をすくませた。
「もっとも、ボクが全力を出してもこの世界の支配者である『C』を殺せる可能性はほぼ0でしたけどね。本当に嫌になりますよね?」
「こ、殺せる可能性が0なのに、どうしてわざわざ殺害しようとするんだ!? オマエの台詞は矛盾しているだろ! 第一、この世界の支配者ってどういうことだ?」
「そのままの意味ですよ。『C』はこの世界の支配者――実質的な神のような存在なんですよ。それと『殺せる可能性が0なのに、どうしてわざわざ殺害しようとするんだ』といいますが、無駄だと分かっていても努力するって大切なことなんですよ? そういう積み重ねが積み上がって、いつか自分の願った未来を勝ち取ることができるんですから。だから、村人達には悪いですが皆殺しにしたんです」
「――村人を……関係ない人達を殺して貴様は何も感じなかったのか?」
問わずにはいられなかった。
意識せず口が動く。
この問いにヒロは――。
「残念なことだと思いますよ。でも、ボク達――ボクが助かるためなら他者を犠牲にするのも必要なことですから。なにより、死んだのは何の知識も教養もない、民主主義も体験したことのない、自分の名前も書けない原住民ですよね? そんな後進国の土人達が何匹死のうとボクには関係ないことかな、って」
「!!!!!」
激怒し過ぎて声が出ず、ブチブチと自身の脳みその血管が物理的に切断するのを認識した。
彼がこちらの冷静さを奪うため、挑発しているのは理解できる。
だが、どうしても彼の発言が僕の神経を逆なでし、増悪が膨れあがってしまうのだ。
それこそ、僕を『奈落』で裏切った『種族の集い』以上に、ヒロに対して増悪が膨れあがり、止まらなくなる!
僕は目を血走らせ叫ぶ。
「……絶対に許さない。貴様だけは地獄が生ぬるい地獄以上の地獄を味わわせてやる!」
気付けば叫びと同時に、僕はヒロへと激情のまま突っ込んで行ったのだった。