軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2話 今後の方針

僕達の目的地は元故郷から大幅に西南下した、ドワーフ王国にある街だ。

この街はエルフ女王国の国境に近い――むしろ国境線ギリギリに作られた。

なぜ国境線ギリギリに作られたかというと有用なダンジョンが誕生。結果、人が集まり街を作ったのである。

あまりに国境線が近すぎたせいでドワーフ王国とエルフ女王国は昔から揉めているらしい。

ダンジョンで有名な街ということで、種族としてはドワーフ種を主として獣人種を始めとした多種族が入り乱れており、その中に他種から虐げられている 人種(ヒューマン) も、冒険者等でそこそこの人数がいる。

今回ダンジョンがあることで賑わっている街で、かつ約3年前『種族の集い』メンバーとして活動していた街とはある程度距離があるため、冒険者としての拠点として選ばせてもらった。

無事に僕達は冒険者登録を終わらせて、街で一番の高級宿屋の最上階を独占する。

「『無限ガチャ』、『R、サイレント』、 解放(リリース) 」

他にも『R、探知』、『SR、魔力妨害』を 解放(リリース) して部屋をクリーンにする。

盗み聞く者、監視する者、その手のマジックアイテム等が無いかのチェックをし終えた後、心底愉快そうにゴールドが声をあげる。

「わははははははははは! まさかこの短時間に盗賊に襲われるとは! 地上は随分と物騒なのだな! まだ我輩達の居る『奈落』の方が秩序が整っているぞ!」

「やっぱり街まで徒歩移動じゃなくて馬車に乗るべきだったのかな……」

僕はソファーに座りながら溜息を漏らす。

墓参りを終えた後、目的地の街近くまで『無限ガチャ』カードで移動。

直接街に到着するのではなくある程度距離を置いてから、徒歩で向かった。その方が自然な雰囲気が出せると考えたからだ。

結果として街に到着する短い間にドワーフ族の盗賊に襲われ、無駄な戦闘をしなくてはならなくなったが……。

ネムムが落ち込む僕を慰めてくる。

「いいえ、ただ地上の治安が悪いのとゴールドの甲冑が無駄に目立っていただけです! ライト様の判断は間違っておりません! お陰で狙い通り自然に街へ入ることが出来たではありませんか!」

「わはははははははっ! 確かにネムムの言葉通り、無事に街に入って冒険者にもなれたのだ。それで良しとしようではないか」

「……うん、そうだね。無事に冒険者になれたんだからよしとしよう」

僕が気を取り直し、笑みを零すと今度はネムムが頬を膨らませる。

「自分達はともかくライト様がA級ではなく、F級から始めなくてならないのが納得できません。受付も見る目がありませんよ」

「あははは、しょうがないよ。ゴールド達はともかく僕は建前上、12歳の 人種(ヒューマン) だからね。冒険者の一番下のF級スタートでもしかたないさ」

この世界には冒険者ギルドが存在して、冒険者を6段階にランク付けしている。

冒険者ランクは以下となる。

A級:トップ

B級:1流

C級:熟練のプロ

D級:1人前

E級:半人前

F級:駆け出し

この上にごく希にS級があるが、それは例外で、基本は以上だ。

F級は最底辺、駆け出しレベルである。

『種族の集い』に拾われる前も、僕はずっとF級だった。

故に再度作った冒険者タグがF級でも気にはしない。

「それからネムム、今の僕は地上ではライトではなく、『ダーク』だ。この部屋はカードで確認したから盗聴等の心配がないクリーンな部屋だが、地上に居る間は気を付けてくれよ」

「し、失礼しました、ら――ダーク様!」

ネムムが慌てて訂正する。

最初はライトのまま冒険者をするつもりだったが、下手に元『種族の集い』メンバーの耳に入って、警戒心を抱かれ復讐計画が失敗しては目も当てられない。

故に偽名を使い、幻影・認識妨害効果がある『SSR、道化師の仮面』を被り、地上へと上がり再度、冒険者登録をし直したのだ。

僕はソファーに座りながら、改めて目的の確認をする。

「僕達がわざわざ地上に上がってなぜ冒険者をやるのか? 改めて目的を確認したいと思う」

・『ますたー』を探す国家のガルー達のような存在の調査、接触

・強者の情報収集

・ランクを上げてより上の情報、コネを得る

・できればまだ国家が見つけていない『ますたー』の確保

・他情報収集

以上だ。

この確認にゴールドが挙手する。

「主よ、金は稼がなくても良いのか? 地上で活動するなら必要だろう」

「お金は地上で情報収集に当たっている者達が商人として稼いでくれているから心配しなくてもいいよ。足りなくなったらまた偽金を作るから。お金は大切だけど別段そこまで気にする必要はないかな」

半年前、地上で情報収集するため配下が商人などに扮して散った。

その際、商売の種銭用に 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』で出た金銀の延べ棒を偽造専門の部下に任せて各国の金貨、銀貨を製造。

偽造専門特化のため、まったく見分けの付かない金貨、銀貨を作り出す事に成功した。

偽金を作ったと聞いてゴールドが感心したように声音をあげる。

「さすが主! まさかそんな方法で資金を用意するとは! 発想が非凡だな! さらに我輩達の主を見下した他種族に対する丁度良い意趣返しにもなって一石二鳥ではないか! ……しかし偽金とバレたら、ちと厄介だぞ。その辺りは大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。作りは完璧だし、地上経済を混乱させるのが目的ではないから最小限しか持ち込んでないしね」

地上経済を潰すならともかく、僕達が使う分には影響力はほぼない。

次にネムムが手を上げる。

「地上で冒険者をやる意味は理解しております。ですがわざわざダーク様が直接お遣りになる必要はないかと。ダーク様がお強いとはいえ事故が起きる可能性は0ではありません。万が一を考えるなら安全な『奈落』で自分達にご命令をして頂けれ――」

彼女は最後まで台詞を言い切ることが出来なかった。

「……ネムムは僕から復讐を取り上げるつもりなのか?」

「ち、ちが……じ、自分は……」

「それともネムムは僕の邪魔をするのかい?」

「ヒィッ――も、申し訳、申し訳ありません! 出過ぎたマネをしました!」

ネムムは顔と言わず、全身から汗を噴き出しその場に両膝を突く。

両手を握り締め神を崇めるように祈り、ガタガタと涙を零し震え出す。

「わははははは! 男には危険と分かっていても自らの手でやらなければならぬことがあるからな! 主は他者に任せず自らの手で復讐を成し遂げようとしているのだ。男として誠に天晴れではないか! さすが我輩、黄金の騎士ゴールドの主だ! わははははははははははははっ!」

ゴールドの笑い声に僕は冷静さを取り戻す。

復讐のことになると、どうも怒りで冷静さを失ってしまう。約3年近く経っているのに復讐の炎が未だに衰えていないことを喜ぶべきか、マイナスと考えるべきか。

僕はソファーから立ち上がり、祈りを捧げ続けるネムムの銀髪をポンポンと撫でる。

「ごめん、ちょっと感情的になり過ぎた。ネムムの忠誠心を疑ってごめんね?」

「いえ、自分が出過ぎたマネをしたのが悪いのです! 改めてライト様に忠誠を捧げさせてください!」

「あー、うん、まぁ……」

再び名称が『ライト』に切り替わってしまっているが、注意する雰囲気では無いため流す。

僕は再びソファーに座り、右足の靴を脱ぎネムムへと差し出す。

「失礼します」

ネムムは上気した赤い顔で、砂糖菓子で出来た宝石を扱うかの如く僕の右足を掴むと愛おしげにそっと唇を寄せる。

右足靴下越しにネムムの熱を感じ取った。

足の甲へのキスは『隷属』を意味する。

なのでよく褒美として皆に求められるのだ。

僕としては恥ずかしいので苦手なのだが……。

僕とネムムのやりとりを見てゴールドがぼそりと呟く。

「……プレイかな?」

「貴様! ライト様に対する自分の尊き忠誠を破廉恥な呼び方するな!」

「だがどう見ても良い歳をした痴女が12、3歳男子の足に発情しているようにしか見えぬぞ? 昼間も言ったがあまり露骨に忠誠心をひけらかすようなマネは感心せぬぞ」

「ひけらかしている訳じゃない! 尊きライト様に対する忠誠心が溢れ出ているだけだ! 第一自分がは、ははは発情などす、すする訳ないだろう! 自分はただライト様に尊き忠誠を誓っているだけだ!」

「安心してネムム。僕は君の忠誠を疑うなんてしないから」

「ライト様……ッ!」

僕の言葉に感極まったネムムが頬を染めて、体を震わせる。

ゴールドは『処置なし』と言いたげに、手のひらを上に向けて肩をすくめた。

僕は2人の様子に微苦笑を漏らしつつ、話を続ける。

「とりあえず明日から冒険者ランクを上げるためダンジョンへと潜る。ただしエリーが計画している『エルフ種、サーシャの復讐準備』が終わったら、そちらを優先するからそのつもりで頼む」

「了解しました、ライト様!」

「明日のダンジョンでは、主に黄金騎士の神髄をお見せしよう!」

僕は2人の返事に満足げに頷いたのだった。