軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25話 晒し者達

自信満々に暗殺者の恐さについて発言したネムムだったが、蓋を開けてみたら『 死剣(モルテ・スパーダ) 』はまったくたいしたことがない暗殺者達だった。

またゴールドの声マネに僕が思わず笑ってしまったのが原因で、彼女は自身の過去の発言を思い出し羞恥心からその場に蹲ってしまった。

(とりあえず、ネムムは落ち着くまでそっとしておくべきだよね)

僕はそう判断を下し、『 死剣(モルテ・スパーダ) 』を 戦略級(ストラテジー・クラス) 魔術、 茨の束縛(ドルン・フェッセルン) で拘束したエリーに話を振る。

「彼ら『 死剣(モルテ・スパーダ) 』の処遇についてだけど……エリー、彼らから必要な情報は抜き取り済みなの?」

「はい、もちろんですわ。ですがライト 神様(しんさま) の暗殺依頼をした慮外者を知る者は彼らとは管轄が違うらしく、まだ判明しておりませんの。申し訳ございません……」

「エリーが謝る必要はないよ。それにある程度、予想は付くしね」

「ですわよね、恐らくは……」

エリーも、僕が予想をつけた人物『ディアブロ』が暗殺依頼をしたと考えているようだ。

「ライト 神様(しんさま) がメラさん達に実行させている作戦がよほど効いているのでしょうね。さすがライト 神様(しんさま) ですわ! 神算鬼謀とは正にライト 神様(しんさま) のことを指すお言葉ですわ! わたくしなど足下に及びませんの!」

「あははは、ありがとうエリー、褒めてくれて」

どう考えても元貧農出の次男より、エリーの方が頭脳明晰に決まっているが、お世辞ではなく彼女は本気で『ライト 神様(しんさま) の方がわたくしより上』と考えている。

無理に否定しても、彼女が容れないので話が進まなくなる。

なのでここは大人しくお礼を言っておくのが吉だ。

「話を戻すけど、必要な情報を抜き取り済みならもう彼らには用はない。僕達や『奈落』最下層の存在を――」

「ま、待ってください! ライト様!」

僕が話の途中で『 死剣(モルテ・スパーダ) 』、マッドピエロが声をあげ遮る。

「あ、あたしは『 死剣(モルテ・スパーダ) 』の中でも上位の実力者なの! だから絶対にライト様のお役に立てるわ! 『 処刑人(ブロー) 』を辞めて、これからはライト様に忠誠を誓うからどうか命だけは!」

「ふざけるなマッドピエロ! オマエなんておでに比べたら全然たいした実力者じゃないだろが! ライト様、こんな変態よりおでをどうか麾下にお加えくださいませ!」

「ライト様! こんなむさい男達より、どうかわたしのような見目麗しい者をお側においてくださいませ!」

「貴様のような娼婦擬きの暗殺者程度が、ライトさまのお役に立つわけないだろが! ライト様、こんな無能どもよりどうか儂を傘下に加えて頂ければ! この筋肉で必ずお役にたってみせますから!」

「――黙れ3流暗殺者共が……ッ」

『 死剣(モルテ・スパーダ) 』が僕の台詞を遮り、命乞いのため自分達を売り込み始める。

ボロ布で全身を隠す男が口を開きかけたが、羞恥心から復活したネムムがその言葉を遮り怒りを露わにする。

彼女はナイフを両手にしたまま沸騰するほどの殺意を瞳に滾らせて、限界まで瞼を開き『 死剣(モルテ・スパーダ) 』を睨みつける。

「命惜しさにゴミクズのような暗殺技術を売り込もうとするだけではなく、心にもない忠誠を口にするとは……。さらには、不遜にもライト様のお話を途中で遮るなんて……ッ! 貴様達ゴミがどのような立場にいるのか、自分が直接その体、心――いや、魂そのものに刻みこんでくれる!」

「……ネムム、怒ってくれるのは嬉しいけど、彼らを今すぐに殺しちゃ駄目だよ。まだ利用価値があるんだから」

「し、失礼しました、ライト様。つい、頭に血が昇ってしまい……」

レベル5000のネムムに殺意が乗った威圧を向けられ、『 死剣(モルテ・スパーダ) 』はその重圧によって顔色を青くし、震え上がって、魂の緒を離しかけていた。

僕が声をかけたことでネムムが威圧を解除、ナイフを仕舞いつつ素直に謝罪する。

エリー、ゴールドも彼らの態度に苛立ちネムムのように行動しかけたが、僕の言葉に彼女同様に矛を収めた。

「エリー、彼らのトップはミキと一緒で魔人国ますたーの1人なんだよね?」

「はい、恐らく間違いないかと。彼らの記憶越しにレベルを確認した限り、地上では考えられないほどの実力者でしたので」

エリー曰く、レベル7000前後の実力者らしい。

まず間違いなく『ますたー』と考えていいだろう。

「魔人国ますたーには、以前、『巨塔』襲撃の借りがあるからね。彼らを使って意趣返しの一つもしておかないと」

「意趣返しですの?」

エリーが小首を傾げ問う。

僕は笑顔で彼女に尋ねる。

「彼らの僕達や『奈落』最下層などの記憶を消して、目立つ所に『暗殺結社 処刑人(ブロー) 所属です』『暗殺者です』、『こんな犯罪をしてきました』、『こんな相手を殺してきました』って看板とかと一緒に人目が触れる場所に晒したいんだ。もちろん戦闘能力・逃走能力等は全て奪って永遠に弱体化しておくから、自らがやってきたことで恐らく捕まって死刑になるだろうけどね。その時、一緒にディアブロへの嫌がらせもしておきたいんだけど、出来るかい? もし無理そうなら別に殺して死体を飾るだけでもいいんだけど」

組織が一番されて嫌なことは、『メンツを潰される』ことだ。

特に『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』のような『世界最高の暗殺者組織』なんて吹聴されその評価を利用している組織は、メンツを潰されるのを殊の外嫌う。

彼らをただ殺すより、生きていた方が『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』への嫌がらせになる。

『ダーク暗殺失敗』を大々的に伝えるのと一緒に、彼らが一番嫌がることをしてやろうというのだ。

僕の提案にエリーは難しい顔をする。

「さすがにわたくしの魔術でも一部の記憶を消すのは不可能ですわ。面倒なので彼らの記憶そのものを破壊するのがよろしいかと。記憶を確認した限り、人種だけではなく、大勢の無関係な者達を無意味に殺してきた者達ですから、ライト 神様(しんさま) の慈悲を貰える存在ではありませんの。記憶――脳の力そのものを破壊する際、最上級の苦痛を味わうことになりますが、即死ぬわけではありません。戦闘能力や逃走能力を奪い、同時に激痛を与え記憶を全て抹消し、悪事を自白する看板と共に晒し者にする。その後捕吏に捕まって死刑になるなり組織に捕まって粛正されるなり好きにすれば良いですわ」

『!?』

エリーの提案に『 死剣(モルテ・スパーダ) 』が今まで以上の命乞いを始める。

僕が五月蠅くて眉根を顰めると、エリーが気を利かせて魔術『サイレント』で彼らの音を消してくれた。

僕はお礼を告げつつエリーへ指示を出す。

「ありがとうエリー。それじゃ彼らの記憶の破壊を頼むよ。終わったら適当に記憶から引っこ抜いた犯罪等を記して、さっき言ったように人目に晒しておいてくれ。その際、ディアブロに対する嫌がらせ方法も伝えるから、外に晒す時になったら一声かけてくれ」

「畏まりました。どうぞこのエリーにお任せくださいませ!」

僕からの命令を聞いてエリーが心底嬉しそうに笑みを浮かべ、一礼する。

僕は彼女の返事を満足そうに聞いて、魔術で声は聞こえないが必死に命乞いをする『 死剣(モルテ・スパーダ) 』へと視線を向けた。

「……今までオマエ達は、暗殺対象や関係ない人達が命乞いしてきた際、どんなことを言って、どんな態度を取った? それが答えだ。大人しく現状を受け入れろ」

彼らの言葉はエリーの魔術によって聞こえないが、僕の言葉は彼らに届いたらしく一層激しく命乞いを始める。

僕はそれを無視して訓練場を後にした。

☆ ☆ ☆

――数日後、魔人国首都広場で5つの人物が晒し者にされる。

5人とも脳に障害があるのか、まともに会話できず『あー』、『うー』としか声を漏らさない。

その彼らの側にこれ見よがしに看板が立てられ晒されていた。

彼らが『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』のトップ5『 死剣(モルテ・スパーダ) 』でどれだけの罪を犯してきたのか。

『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』のトップ、ギラの耳にそのことが届くのにそれほど時間は必要なかった。