軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21話 愚痴と待ち伏せ

僕ことダークが『世界最高の暗殺結社』のひとつ『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』、その中でも実力が高い5人、組織内部では『 死剣(モルテ・スパーダ) 』と呼ばれる者達に命を狙われているという情報を得た。

その情報を得てから、僕の命を狙う輩に激怒するメイとアオユキを大人しくさせつつ行動を開始。

行動を開始といっても、『人種王国首都に暫く滞在する』という情報をばらまいただけだ。

後は勝手に挑んでくる『 死剣(モルテ・スパーダ) 』と呼ばれる暗殺者を順次捕まえていくだけである。

また折角の機会なので、報告も兼ねてユメ(偽)を通してリリスに面会の約束を取り付けておく。

許可を求めるとすぐに連絡が付き、僕の都合の良い日で問題ないと言われる。

なので上手い具合に情報が拡散する日時を選び、面会を取り付けた。

そして僕達『黒の道化師』パーティーは、『巨塔街』からエルフ女王国を通って、人種王国首都へと向かう。

途中、例の『 死剣(モルテ・スパーダ) 』は襲ってこなかった。

特に問題もなく、人種王国首都へと辿り着き、前回も宿泊した高級宿へと宿泊。

先触れを出し、事前に決めていた人種王国女王リリスとの面会を日時を伝えて数日待機する。

その間に宿を出て僕とネムムは街を散策。

ゴールドは知り合いへの挨拶、顔出し、飲みにと僕達以上に忙しく動き回る。

これも全て暗殺者を釣るための行動なのだが……ゴールドの場合、僕達と違って毎回同じ行動をしていた。むしろ、訪れるたびに知り合いが増えて、僕達とは別行動していることが多かった。

(本当にゴールドは知り合いを作るのが上手いな……)

思わず感心せずにはいられない。

そんな僕とネムムは、明日、リリスとの面会を控え、首都の市場を見て回る。

リリスが女王に即位し、魔人種に睨まれ 竜人(ドラゴニュート) 帝国からは距離を取られているが、他ドワーフ王国、エルフ女王国、獣人連合国、巨塔とは友好的なため、以前と比べても寂れた様子はない。

むしろ、他国に有利な不平等な税率が見直されたお陰で、むしろ 人種(ヒューマン) 庶民の懐は温かそうだ。

少しずつだけど、 人種(ヒューマン) 差別が改善されているのを肌で感じる。

「……ダーク様」

「うん、分かったよ」

胸中で市場の様子を感慨深く歩いていると、側に居るネムムが声をかけてきた。

獲物がどうやら針に食いつき、腹の底まで飲み込んだらしい。

僕は『SSR、道化師の仮面』の下で、自分の作戦が上手く推移しているのを実感し酷薄に笑ってしまうのだった。

☆ ☆ ☆

翌日、僕達は約束通り、人種王国女王リリスとの面会を果たす。

前回同様、今回も執務室ソファーで向かい合う。

以前は寝不足で顔色が悪く、呂律が回っていなかったが、今回は健康そうな肌色をしていた。

(前回、死にそうな顔色をしていたからな。父である元国王を廃して、実兄を強引に押さえ込み監禁、他国間者の一斉追放などで、急ぎ足場を固める必要があったからとはいえ本当に酷かった……。『SSSR 不眠不休薬』が役に立っているようで良かったよ)

『SSSR 不眠不休薬』――瓶に収まった粒状の薬で、1粒飲めば1日寝なくても良くなる。

健康に害もないため、今現在最も彼女に必要なアイテムだ。

そんなリリスだったが、彼女は健康そうな満面の笑顔でお礼を口にする。

「ダーク様、魔人国兵士から民を守って頂きありがとうございます! 本当になんとお礼を申したらよいか」

「いえいえ、こちらにもちゃんと益があったこと。それに罪のない人種達が被害に遭うのを黙って眺める趣味はありませんから」

一応、執務室には僕とリリスがソファーで向かい、ネムム、ゴールド、ユメ(偽)が互いの主の背後に立つ形だ。

部屋には関係者しかおらず、防諜対策も取っているが念には念を入れてリリスは僕を『ダーク』と呼ぶ。

互いに会話を交わしつつ、現状の情報交換をおこなう。

当然、定期的に連絡はしているが、トップ同士直接確認しあうのも大切なことである。

『奈落』側は『暗殺結社 処刑人(ブロー) にダークが狙われている』とは伏せて、定期連絡で伝えた内容をそのまま口にした。

リリス側も目新しい情報はない。

相変わらずリリスの実兄クローは王位を諦めておらず、静かに余生を過ごすことを拒否。兄クロー派閥も諦めず影で暗躍中だ。

魔人国からの嫌がらせや攻撃も継続中である。

他には、リリスの父である元王に対しても新しい報告が一つあった。

「お父様がまた新しい女性に入れ込んでいて、その増えた女性に貢ぐ予算が欲しいと言われまして……」

寝不足から解放されたリリスの瞳から、光が消える。

リリスは人種王国女王とはいえ、まだ16歳にもなっていない少女だ。

にもかかわらず実の父親から、新しい水商売女性の関心を買うための資金を融通して欲しいと書類形式とはいえ伝えられ、げんなりした表情をしていた。

「重責から解放されて自身の欲望を解放するのは構いませんが、将来的に新しい女性と関係を結びたいから予算の増額嘆願書を出すのはおかしいですよね? こっちはもっと有意義で、民達、人種王国の将来を明るくするための重要書類が雪崩を打つほど待ち構えているのに。そんなお父様からの予算増額嘆願書を確認し、拒否の尤もらしい返信を書くのに時間を割くより、重要書類を処理したほうが絶対に有意義な時間の使い方ですよ。第一、これ以上、女性を増やすって……私はこれ以上、新しい義母とか欲しくないのですが。というか、お父様と関係を持つ女性と顔を合わせたら私はどんな顔をすればいいんですの?」

「あはははは……」

一方的な愚痴に対して、僕はただ笑うしかなかった。

彼女の発言に対してどんな慰めの台詞を口にすればいいのか分からず、誤魔化すように笑うしかなかったのだ。

追加予算を出して酒池肉林をしているならば問題だろうが、リリスはそんな許可は出さないだろうし、国政に関わらず少しの予算の範囲ならば、後は家庭の問題だ。彼女の苦悩は分かるが。

その後も彼女の愚痴を聞きつつ、情報交換を無事に終えた。

追加の『SSSR 不眠不休薬』を置いて人種王国城を後にする。

向かう先は僕達が常宿にしている高級宿屋だが――。

「ダーク様、予定通りかと」

「ありがとう、ネムム」

背後からそっと告げてくるネムムにお礼を告げつつ、僕達は歩く速度を緩めず宿へと戻る。

現在は午後。

まだ日があり、人通りもある一見するとごく普通の日常風景が存在していた。

僕達は高級宿屋一階広間へと足を踏み入れる。

いつもなら従業員がすぐに声をかけてくるのだが……代わりに髪の毛を7色に染めた奇抜な恰好をした魔人種の男が声をかけてくる。

「お帰りなさいな、『黒の道化師』パーティーちゃん達」

『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』のトップ5『 死剣(モルテ・スパーダ) 』の1人が既に宿屋で待ち構えていたのだった。