軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7話 悲喜交々

「…………」

「ケケケケケケ! 怖いから気配を消して、廊下の角から見てくるなよ……」

ライトから直々に対魔人国兵士殲滅&ディアブロへの圧力と嫌がらせ作戦の中核を命じられたメラが、執務室から出た。

早速、与えられた作戦を実行するため行動を起こそうと廊下を移動中に、角からメラの親友であるアイスヒートが気配を消して彼女の姿を眺めていたのだ。

それに気付いたメラが思わずツッコミを入れる。

廊下の角から見つめていたアイスヒートが、ツッコミを入れられると幽鬼のようにふらりと近付いてくる。

メラは内心で、

(ケケケケ! 滅茶苦茶怖いんだけど……)

親友相手に幽霊にでも出会ったような恐怖心を抱いてしまう。

アイスヒートが青白い顔で、恨めしそうに漏らす。

「……ライト様に呼ばれたと言うことは、何か新しい作戦を命じられたのだろう?」

「ケケケケ! まぁな」

「メラ! その作戦、是非このアイスヒートと代わってくれ! もしくは手伝わせてくれないか!」

「ケケケケケ! 気持ちは分かるがどちらも却下だ」

「なぜ!?」

役目を代わるのは内心でも無理だと理解し、駄目元で口を出したに過ぎない。ライトから直々に呼ばれて命じられたのだ。

そんな光栄ある役目を代わるなどありえないし、ライトの命を曲げるようなマネは絶対に出来ない。

とはいえ、『手伝うぐらいは問題ないだろう』と内心で高をくくっていたアイスヒートはメラの拒絶に心底驚く。

彼女は肩をすくめつつ、理由を説明する。

「ケケケケケ! 別に意地悪で断っている訳じゃないぞ? アタシ的にもアイスヒートを参加させてやりたいが……今回の作戦的にアイスヒートのような目立つ奴を連れて行く訳にはいかないんだよ。だから今回は悪いが連れていくのも無理だ。分かってくれ」

「そ、そんな……一体どんな作戦をするつもりなんだ?」

「あー……別に口止めはされてないからいいか……」

メラはアイスヒートに与えられた作戦を軽く説明する。

彼女はメラの話を聞いて、今度こそ肩を落とした。

「確かにアイスヒートでは目立ち過ぎて、今回の作戦には不適切過ぎるな……」

「ケケケケケ! 理解してくれてありがたいぜ。それじゃアタシは作戦準備をするから失礼するぞ」

メラはアイスヒートをその場に残し、袖をひらひら振りながら改めて移動を開始する。

残されたアイスヒートは、ブツブツと小さく呟きを漏らす。

「やはりアイスヒートの運が悪い気がする。ここはやはり幸運グッズを集めるべきでは? 確か蛇の抜け殻が幸運の証だと聞く。『奈落』最下層に蛇系モンスターは居たか?」

アイスヒートが首を傾げつつ、『奈落』最下層に居るモンスターの姿を思い浮かべつつ、ふらふらと歩き出したのだった。

☆ ☆ ☆

「ひゃっはぁー! ついに俺様達にも運が回ってきたぜ!」

人種王国領内にある町の宿屋一室で威勢の良い男の声が響く。

声を上げたのはモヒカン冒険者達だ。

彼らは魔人国国境を越えて入国することが出来ず、ライトから与えられた任務に失敗する。

二度も立て続けに任務を失敗したモヒカン達は、ライトから『気にしないで』と励まされていたが……。

その優しさに涙し、自分達の無能さに意気消沈してしまう――悪循環に嵌ってしまっていた。

魔人国国境から一番近い町の宿屋で待機中の彼らに、新たな指令が届く。

その内容は『メラと協力してライト発案の作戦に協力すること』だ。

立て続けの任務失敗に見捨てられるどころか、新たな、しかもモヒカン達が敬愛する『ライト発案』の作戦に参加するよう命令が届いたのだ。

落ち込んでしなびていたモヒカン(髪の毛)が、命令を聞いて鉄棒が入ったようにシャンとする。

モヒカンリーダーから命令内容を聞いた他モヒカン冒険者達が祭りを迎えたように色めき立つ。

「俺達に本当のチャンスが巡ってきたんだ!」

「ああぁ、兄弟! だからこそ、この作戦は絶対に成功させないとな!」

「しかも今回の作戦はメラ様まで参加するとか……どれだけ大規模な作戦なんだよ」

「どんな作戦でも関係ないぜ! 俺達はご命令にしたがって作戦を完遂させるだけだぜ!」

彼らの意気込みにモヒカンリーダーも深く頷く。

「俺様達は立て続けに作戦を失敗させてきたんだ。そんな俺様達に ライト様(あのお方) が再度お声をかけてくださった。この作戦は絶対に成功させるぞ! そのため、場合によってはオマエ達に『死ね』と命じることがあるだろう。もちろん、俺様もその際は躊躇いなく命を捨てる覚悟だ」

リーダーモヒカンの言葉に他モヒカン冒険者達が同意するように頷く。

冗談ではなく、今回の作戦を成功させるためには自分達が命を落としてもやり遂げる覚悟を彼らは持っていた。

モヒカンリーダーは仲間達の意気込みを確認すると、改めて彼らに詳細な作戦内容を伝えた。

☆ ☆ ☆

「おい、聞いたか? 今度、人種王国を懲罰するため我が国の軍隊が国境を越えて進軍するらしいぞ」

魔人国国境近くにある街、兵士達が昼食を摂っていると、その一席で魔人国兵士の1人が話題を口にする。

その話題に同僚が反応して声をあげた。

「聞いた聞いた。どうも上がシックス公国会議でメンツを潰されたんだって? 権力欲しさに、人種王女が魔人種以外の種を誑かして女王の座を掠め取ったらしいな。 ヒューマン(劣等種) の分際で舐めた態度を取ったから、それを罰するため国境を越えて村を襲うらしいな」

「上の思惑はともかく、マジで幸運だよな。 ヒューマン(劣等種) の村とはいえ大手を振って襲えるんだから。俺も志願して ヒューマン(劣等種) の女を嬲り犯してやるつもりなんだ」

若い魔人種が下卑た笑みを零し、スープを口にする。

「 ヒューマン(劣等種) 女を嬲り犯すのは最高に血が高ぶるよな。弱者をいたぶるってどうしてあんなに気持ちいいんだろう」

「おれは ヒューマン(劣等種) の女より、溜め込んでいる金や財産を狙うつもりだ。 ヒューマン(劣等種) 女なんて襲って、嬲って、奴隷に売ってもたいした金にはならないからな」

「ああ、確かに金を得るならそっちのほうが効率いいな……。自分はどっちにしよう」

昼食の席。

魔人国の国境を守る兵士達が、まるで害獣を駆除するような気軽さで人種の村を襲い、女を犯し、財産を掠め取る話題を楽しげに話す。

彼らに罪悪感は一切無い。

気軽な娯楽のように会話を重ねる。

悲喜交々――各陣営は活発に動き出していた。