軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4話 魔人国からの要求

リリスが人種女王に即位してまず手を付けたのは……関税の見直し、人種奴隷の禁止、不当な人種差別の禁止だ。

これらの内容は『巨塔の魔女』が掲げる『 人種(ヒューマン) 絶対独立主義』を参考にしているらしい。

この内容が各国へと通達される。

エルフ女王国、ドワーフ王国、獣人連合国には既に根回し済みで問題なく受け入れられた。

竜人(ドラゴニュート) 帝国は返答待ち。

そして残る1国、魔人国からの返答が届いたらしい。

執務室に顔を出した文官が簡潔に魔人国から届いた返答を口にする。

『人種王国の通達を魔人国は絶対に認めないし、リリス女王即位も承認しない。経済制裁として無期限で塩、魔石、ダンジョン産アイテム、魔物素材などの輸出完全停止をおこなう』

魔人国は、ドワーフ王国に次いでダンジョンが多数存在する国だ。

そこから採れるアイテム、魔石、魔物素材などが輸出の目玉となる。

また魔人国は大陸で最も北にある国で、寒冷地のため麦が収穫できない。

それ故、寒冷地でも育てられる作物を育てている。

麦は基本的に人種王国からの輸入に頼っていた。

『今回の経済制裁解除の条件として、魔人国側が納得するまで麦、人種奴隷、他品物を納め続けろ。もし拒否するのなら強攻策に出る』

強攻策についてはややぼかして書かれていたが……人種王国領土に入り麦の略奪、人種奴隷狩り、村の焼き討ち、見せしめによる強奪、虐殺等をおこなうと書かれているらしい。

送られてきた書類を文官男性が恐る恐るリリスへと差し出す。

彼女はあまりに一方的な内容に、『まさかそんな文章が本当に書いているはずありませんよね……』と最初は戸惑いつつ書類を確認した――が、

「なっぁ!? ま、ま、魔人国ぅううぅッ! いくらなんでも馬鹿にしすぎです! 私達は貴方達の属国でも、奴隷でも、都合の良い家畜でもないのですよぉ!」

「……リリス女王陛下、お客様の前ですよ」

文官男性から渡された書類にざっと目を通すと、本当に報告通りの内容が記されていた。

この事実に僕が正面ソファーに座っている事も忘れて、リリスがその場で立ち上がり、爆発した感情のまま大声をあげる。

その声に文官男性が怯えて、側付きメイド長となったユメ(偽)が諫めた。

ユメ(偽)の指摘に頭に血が上ってその場で立ち上がり絶叫したリリスが、ソファーに座る僕と、その背後に立つゴールドとネムムの存在を思い出し、恥ずかしそうに咳払いをしながら座り直す。

「し、失礼しました、ダーク様。お見苦しい姿をお見せしてしまって……」

「いえ、リリス様のお気持ちは痛いほど理解できますので」

建前を口にした訳ではない。

僕は本気でリリスの怒りに同調していた。

魔人国がリリスの人種女王即位を認めないのは別にいい。

経済制裁として無期限で塩、魔石、ダンジョン産アイテム、魔物素材などの完全停止をおこなうのも影響はあるがそこまで問題はなかった。

どちらもギリギリではあるが、国家が外交上おこなえるルールに一応は沿った発言、行動だからだ。

『魔人国がリリスが女王即位することを認めない、輸入輸出制限をする』ことを否定するのは、ある意味では魔人国に対する内政干渉になる。

仮に1国が認めなくても、他の国が認めていれば国家間の政治・経済上では長い目で見れば問題がない。

リリスに他国がどう振る舞うかを制限するような権限はない上、押しつければ問題が起きる可能性もある。

それだけ他国の内政や方針に干渉するのは本来ならば難しい行為だ。

にも関わらず、魔人国は内政干渉よりも遙かに酷いルール違反を声高に宣言し、人種王国に押しつけてきたのだ。

宣戦布告もせず、黙って奇襲をしかけてくる訳でもない。

ただただ一方的に上から目線で、直接的な表現を避けてぼかしてはいるが『人種王国領土に入り麦の略奪、人種奴隷狩り、村の焼き討ち、見せしめによる強奪、虐殺等をおこなう』と宣言しているのだ。

これが国家のやることか!?

これではまるで山賊ではないか! 相手の国家が自分達の力以下だと感じたならば、人を殺し、村を焼き、捕まえた人を奴隷としても良いというのか? そんなことは国家が口にすることはない!

リリスが文官男性を下げる。

執務室に再び僕達しか居なくなった。

リリスは頭が痛そうに眉根を寄せる。

「……とりあえず魔人国からの経済制裁に関しては痛くはありますが、織り込み済みのため問題はありません」

人種王国は大陸の中央にある国家だ。

平地が多く畑を作りやすいため、麦を中心に作物が作られている。

しかし、海に面しておらず、岩塩が出てくる事もないため、塩に関しては他国からの輸入に頼らざるを得なかった。

仮に他五種の根回しをせず、リリスが女王に就任し『 人種(ヒューマン) 絶対独立主義』を参考にした強行案を提出した場合、塩の供給を止められただけで立ちゆかなくなる。

だが、エルフ女王国、ドワーフ王国、獣人連合国に根回し済みのため、魔人国だけに塩を止められても怯える必要はない。

(最悪の場合、 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』から出る『N、塩』を輸出すればいいしね)

僕が『奈落』最下層にいなくても、常に 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』は押され続けカードを排出している。

そのため『N、塩』を輸出してもあまりある量が排出されているのだ。

話を戻す。

リリスが真剣な表情で告げる。

「塩は魔人国、竜人帝国以外から輸入できるので問題ありません。魔石、ダンジョン産アイテム、魔物素材なども同様です。魔人国から経済制裁をされても、他国との繋がりがあるので人種王国が干上がることはありません。ですが……問題は拒否した場合に魔人国がおこなうであろう、誇りある国家とは思えない山賊的行為です」

現在、人種王国はリリス女王即位で混乱中で、掌握に時間を取られている。

魔人国国境に近い村々を守る余裕はなく、元々人種は6種の中でも弱い。魔人国兵士を相手にするのは自殺行為だ。

自軍の兵士での防衛は不可能だった。

では、このまま大人しく魔人国の脅しに屈するのか?

リリスが僕を真っ直ぐ見つめる。

彼女の瞳に真剣な光と賛同を得られるか分からない不安に揺れていた。

リリスが喉を鳴らし、口を開く。

「ダーク様、私達に貴方様達が望む見返りを用意することは難しいです。ですが、このまま民達を生け贄に捧げるようなマネは出来ません! なのでどうかお願い致します……魔人国から理不尽に襲いかかってくる暴威を防ぐお力をお借りできないでしょうか? もちろん私に出来ることは将来に渡り、何でもさせて頂ければと思います。ですから、どうか……お願い致します……」

リリスが深々と頭を下げる。

人種王国女王からの懇願。

この問いに返答する答えは当然、決まっていた。

むしろ一つしかない。