軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20話 シックス公国会議1

「…………」

シックス公国会議当日。

各種代表者達が、中心会場へと集まる。

人種王族の護衛である僕達、そして兵士達が人種会場出入口で待機していた。

時間になると開き、内部に入る手筈になっている。

会議開催時間まで残り数分。

僕は待っている間、不機嫌そうに『SSR、道化師の仮面』の下で唇を尖らせる。

ネムムは不機嫌な僕の側でオロオロとし、ゴールドは『主の不機嫌は理解できるから、とりあえず放置するしかないな』と割り切っていた。

……別にネムム達を困らせたくて不機嫌になっている訳ではない。

(まさかこの土壇場で、ディアブロが魔人国に帰国するなんて……)

一昨日、『SSR 千里眼』でディアブロを確認すると、彼は荷物を纏めてさっさと魔人国へと帰国してしまったのだ。

あまりに突然のことに僕は驚き、ネムムに情報を探らせた。

ネムムが今朝までに集めた情報曰く――ディアブロの領内で問題が発生。当主である彼でなければ解決できない緊急事態だったため帰国するらしい。

大事な公国会議前、自領の緊急事態とはいえ帰国してしまったディアブロに対して、他若手エリート達は彼が失点したことを喜んでいた。

これでディアブロはエリートコースから一歩出遅れたと。

(元々はエリー……『巨塔の魔女』を使ってディアブロに失敗等をさせる予定だったのに。結果的には彼自身が失点を作った形になったけど……出来れば僕自身で作りたかったな。この程度じゃ生ぬるい)

奇しくも僕の狙い通り、ディアブロの評判に傷を付けたが――いまいち釈然としない。

自分の手でディアブロを苦しめることが出来なかったため、僕はずっと不機嫌になってしまったのだ。

『大人げない』と言われたらそれまでだが……失点の度合いもこれでは足りないし、相手は約三年前から因縁のある復讐相手なのだ。僕の心情も理解して欲しい。

――とはいえ、いつまでも不機嫌でいる訳にはいかない。

仮面越しでも周囲に不機嫌オーラが漏れているのか、リリス、ユメ(偽)、兵士達がちらちら視線を向けてくる。

これから大切な会議があるのだ。

しっかりと気持ちを切り替えていくべきだろう。

(僕自身の手でディアブロを苦しめたかったが、もっと前向きに考えよう。これから会議なんだ。むしろ僕が手を下さなくても望む方向には進んでいる訳だし、続きはまた後日やればいい)

そんな事を考えつつ仮面の下で軽く呼吸をして、意識を切り替える。

僕が気持ちに区切りをつけたのが伝わったのか、ネムムがあからさまに『ほっ』と表情を弛め、ゴールドも満足そうに何度も頷く。

リリス、ユメ(偽)、兵士達にも僕の雰囲気変化が伝わったのか、皆、落ち着きを取り戻す。

もうそろそろ扉が開く時間というのもあるが。

「……時間だ」

人種国王が短く告げる。

国王の言葉を合図に、兵士達が扉を開く。

各種が示し合わせて、一斉に扉が開き代表者達が立っていた。

各種代表者が互いに歩調を合わせ、中心会場へと足を踏み入れる。

会議は代表者1名ずつでおこなわれるが、その前の挨拶として他関係者、護衛も後に続き中へと入った。

今回、音頭を取った魔人国側は、170cm後半の牙が伸びた男性が先頭に立ち入場する。

やや胸元が開いた豪華な貴族服に袖を通し、軸のぶれない歩く姿から戦闘訓練をしっかりと積んだ人物だと理解できた。

リリス曰く、彼こそ魔人国第一王子ヴォロスだ。

魔人国国王は病気で床に臥しているが、後継者指名をまだしていない。

とはいえほぼヴォロスに決まっており、彼自身、次期魔人国国王として振る舞っている。今回のシックス公国会議参加も、彼の箔付け的な面があるのかもしれない。

彼の背後に若手エリートや護衛、外交官などが続く。

獣人連合国の代表者は軽く身長が2mはあるクマの獣人種だ。背丈が高いだけではなく、横にも大きい。口にくわえていた煙管を、流石に入場と同時に口から離し、背後の部下へと預ける。

体格的な威圧感はあるが、暴力的なモノではなく、どっしりとした深く重い気配を漂わせていた。

獣人連合国の場合、会議に参加する者を5部族で話し合い決めるが、今回の会議開催のきっかけにもなった『獣人種大虐殺』のせいで3部族の族長が殺害された。

急遽、族長が死亡した3部族が新しい族長を選出したが、若手で経験が浅い。そんな彼らを代表者として選出する訳にはいかなかった。

故にこのクマの獣人種――オゾが会議に出る代表者としてすぐに決まったとか。

後に続く部下や護衛もオゾの部族の者達が多い。

未だ『獣人種大虐殺』の影響が続いていると如実に伝わってくる。

ドワーフ種は3日前に顔を会わせたダガンだ。

ダガンがリリスの護衛として会場に入った僕達に気付く。

めんどくさそうな顔を一転。笑顔を向けてくるが、すぐに『不味い』と気付き引き締める。

勘の良い一部の他種から不審そうな視線を向けられるが、下手に反応するとさらに疑惑が深まるので、僕達は知らぬ存ぜぬといった態度を貫いた。

竜人種は今回、唯一代表者が国のトップ、皇帝の血族ではなく、外交官のみだった。

今回のシックス公国会議は魔人種の呼び掛けで急遽開催された。

表向きは『緊急で開かれたため、血族が代表者になるのは難しい』となっているが、本音として『自分達より下の魔人種の呼び掛けに、どうして竜人種が動かないといけないのか』というプライドの高さが伺える。

当然、魔人種側も気付いており、良い顔はしない。

最後はエルフ種だ。

女王リーフ7世が罪人のような暗い雰囲気で入場する。

美しい顔立ちは無理なダイエットをしたように痩せこけていて、見る影もない。背後に頭からフードを被った者が続き、その後にエルフ種メイド、護衛が続くが彼・彼女達の雰囲気も異様に暗い。

エルフ種だけ、『葬式会場に来ました』と言われたら納得するほどの暗さだ。

魔人国第一王子ヴォロスがエルフ種の暗さについて不審がりつつも、まずは挨拶をする。

「皆様、我々の呼び掛けにお応え頂きありがとうございます。突如あらわれた災いのような『巨塔の魔女』について、存分に語らいましょう!」

ヴォロスはまるで舞台の主役俳優が始まりを告げるように、生き生きとした表情で声を上げた。