軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編5 スズの怯えと喜び

『奈落』最下層、スズ自室。

スズはベッドの上に座り自作の『ライト人形』を抱き抱えガクガク、ブルブルと震えていた。

その姿を相方であるインテリジェンスウェポンであるロックが見て、木製ラックに立てかけられながら同情的に独り言を漏らす。

『相方モ、トンデモナイ奴ニ目ヲ付ケラレタモンダナ。可哀相ニ……』

『トンデモナイ奴~』とは、魔人側マスターであるミキに目を付けられた件だ。

ミキは『巨塔』2階大広間でライト達に追いつめられ、スズはメラと一緒にアイスヒートの加勢に姿を現した。

その時、ミキが戦力把握のためにスズとメラを鑑定すると……『UR、 両性具有(ダブル) ガンナー スズ レベル7777』であるスズの『 両性具有(ダブル) 』の部分に食いつく。

それだけではなく、顔立ちや体つき、瞳の色など全てがミキのドストライクだったらしく、戦うことなく巨塔への亡命を希望された。

以後、ミキは卑猥な言葉を叫びつつ、スズに対して求婚してくるのだ。

そんな大変な目に遭っているにも拘わらず、相方のロックが他人事のように独り言を漏らす様にスズが反応する。

「!」

『エ? 何デソンナニ他人事ナンダッテ? 言イタイ事ハ分カラナク無イガ、実際、おいらニハ特別影響ハ無イシナ……』

「!!!」

相方の冷たい態度に、スズは片頬を膨らませて抗議するように怒る。

彼女的には精一杯怒っているようだが、可愛らしい顔がより可愛くなっているだけで、特別恐怖感はなかった。

とはいえ相方であるロックが落ち着かせるように声をかける。

『悪カッタヨ。他人事ノヨウニ言ッテ。相方ノぴんちハ、おいらノぴんちデモアルヨナ』

「(こくこくこく)」

スズはロックの殊勝な態度に、満足そうに頷く。

だが、ロックの言葉はこれだけでは終わらない。

『トハイエ、確カニ酷イ目ニハ遭ッテイルガ、役得ガ0ッテ訳デモナイダロ?』

「?」

『あの頭ガおかしい女ヲ独房ニ入レタ後、らいと様カラ、オ声ヲ掛ケテモラッタダロウ?』

ロックの指摘にその時の事を思い出し、スズの顔が『ポッ』と赤くなる。

思い出し嬉し恥ずかしくなって、『ライト人形』に再び顔を埋めて、ベッドに転がり足をパタパタしだした。

ロックはスズが落ち着くまで生暖かい視線(もちろん目など無いが)を送り見守る。

では、スズが嬉し恥ずかしさで悶えるほど何があったのか?

――時間を少し戻す。

ミキの尋問を終えて、『奈落』最下層のさらに下の独房へとミキを護送する。

ミキを独房にぶち込む前に、交換条件として『スズの履いている黒タイツを渡す』と約束を交わした。

『マスター』に関する情報を彼女から提供されたため、今度はライト達側が誠意を見せる番だった。

独房に入れる前に、目隠しを外したミキの前でスズが羞恥心を堪えながら自身が履いているタイツを脱いでミキへと妖精メイド経由で渡した。

彼女はタイツを受け取ると、『うひょぉおおぉぉッ! スズちゃんの黒タイツ! 黒タイツ! 黒タイツ!』と狂気乱舞。

その姿を前にスズは羞恥心から涙目になり、同席していたライトはドン引きしていた。

ミキはライト達の視線など一切気にせず、再び目隠しをされて独房へと閉じこめられる。

後のことは妖精メイド達に任せて、ライト達は退散。その移動途中ライトがスズに声をかけた。

「ごめんね、スズ……迷惑をかけて」

「(ぶんぶんぶん!)」

『らいと様ノセイデハアリマセンヨ。全テ、アノ女ガオカシイセイデスカラ』

スズはライトの謝罪を否定するため首を横に振り、ロックも声をあげる。

2人の態度にライトは微苦笑を漏らし、返答した。

「ありがとうスズ、ロック。でも迷惑をかけているのは本当だから……。けどミキにも言ったけど、情報よりスズや他の皆の方が大切だから。絶対にスズ達、家族を危険に晒すようなマネはしない。僕がスズ達を守るから。だから、もし嫌だったり、我慢できなかったらすぐに言ってね。ミキからの情報収集は諦めるから」

「~~~~~~ッ!」

ライトは真っ直ぐスズに向き直り、『情報よりスズ(他仲間達)が大切』と断言したのだ。

ライトに恋するスズの乙女フィルターがかかった状態でそんな事を言われたら……その場で悶絶しゴロゴロ転がらなかった自身を褒めたいほどだった。

当時を思い返し、ロックがしみじみと語る。

『アレハ、おいらデモぐっトキタナ。普段モソリャかっこいいガ、アノ時ハまじデらいと様ガ心底かっこいいト思ッタモンダ』

「~~~~~~ッ!」

スズはロックの言葉にライトとのやりとりを思い出し、ベッドの上でさらに悶絶し、耳まで赤くしながら『バンバン』と敷き布団を叩き出す。

ミキに目を付けられ、気持ち悪い要求をされるようになったが、ライトに真剣な表情で『僕が守る』と断言されるのだ。

彼に恋する乙女スズからすれば、役得と言われても否定できない。

走ってもいないのに息切れし、髪が乱れたスズが体を起こし髪を整える。

ロックは彼女が落ち着くのを見計らって声をかける。

『ソリャ、アンナ変態女ニ目ヲ付ケラレタノハ災難ダガ、配下トシテ、らいと様ニアレダケノ事ヲ言ワセタンダ。相方ハ嫌カモシレナイガ、おいらトシテハらいと様ノ心意気ニ少シデモ答エラレルヨウニ、頑張ル……トイウヨリ、多少ノコトハ我慢スベキダト思ウゾ』

「……(こく)」

スズもロックと同じ思いらしい。

敬愛するライトにあれだけのことを言わせたのだ。

それに少しでも答えられるように奮闘するのが部下として、想い人に応えたいと思うのが人情である。

『……ケド、マァ、アノ変態女ガ気持チ悪イノニハ、変ワリナインダガ……。アレハいんてりじぇんすうぇぽんノおいらデモ、気持チ悪イシ怖イト思ウグライダカラナ。全ク、トンデモナイ奴ガ『奈落』ニヤッテキタモンダヨナ』

「(こくこくこく)!」

スズは相方ロックに同意するように激しく首を縦に振る。

いくらライトのためと言えど、怖いモノは怖いのだから。