作品タイトル不明
29話 第2封印解除
ダイゴが『精霊双剣』を交差し、掲げると彼の頭上に巨大な火の玉が生み出される。
彼が激昂するように叫んだ。
「『C』や一応あの悪趣味ビッチが居るから、巨塔に影響が出ない程度に抑えていたが、もう止めだ! 全力攻撃で全部灰にして滅ぼしてやる! 残っている全てを賭けて、 己(おのれ) こそが最強だと示してやるよぉおおぉぉおぉッ!」
彼は狂気的な雄叫びをあげると、全ての力を振り絞り小型の太陽を僕達に向けて放つ!
速度は特別速く無いため回避は可能だが――僕達が回避したら『巨塔』、『 巨塔街(きょとうがい) 』共に彼の言葉通り灰になるかもしれないほどの高温だ。
このまま回避という選択肢はない!
「ご主人様、任せろ!」
「こんな火の玉、あたい達がぶった斬ってやる!」
ナズナ×4人が小型太陽に突撃。
『摂理をねじ曲げぶった斬れ! プロメテウス!』
彼女達が突撃し、大剣プロメテウスで切断しようとするが――ジュッと音を立てて大剣プロメテウスごと分身であるナズナ×4人が消滅する。
「ぎゃはははは! 無駄無駄無駄! 己(おのれ) の全てを賭けているんだ、お前らごときに敗れるかよッ! 己(おのれ) が持つ『精霊双剣』こそが最強なんだよ! 貴様達如きに消される 己(おのれ) じゃあないんだ、そのまま太陽に飲み込まれて燃え尽きろクソがぁぁぁ!」
ダイゴが『精霊双剣』を小型太陽に向けて全力を注ぎ、さらに威力を加速させているため、ナズナ×4人でも防ぐことは出来なかった。
「ご、ご主人様!」
まさか自身の分体×4人が何も出来ず燃え尽きてしまったことにナズナが浮き足立ち、動揺した声音を上げる。
「 己(おのれ) を怒らせた罪だ! 己(おのれ) の糧でしかない雑魚が、逆らった罰だッ! 死ねッ! 死ねッ! 死ねッ! 死ねッ! 死んで 己(おのれ) のレベルアップの餌となれゴミがぁあああッッ!」
ダイゴが小型太陽に全力を注ぎながらわめく。
その目と身体は赤く染まり、血管がグロテスクに浮き、奇怪な脈動を見せている。
小型太陽を膨らませるために魔人側『ますたー』である自身が生み出した精霊に全ての生命力と魔力を注ぎ、自らの命を削っているのだ。
その醜い表情は、自身の勝利を確信していた。
だが――
僕は迫り来る小型太陽を前に、切り札を切る。
「ナズナ、僕から離れて。 魂魄封絶(こんぱくふうぜつ) 第一限定解除! コード、『9999』、フォーナイン! 『 神葬(しんそう) グングニール』!」
右手で握り締めた杖――『 神葬(しんそう) グングニール』の第一封印を解除する。
普段は僕、メイ、エリー、アオユキの魂を枷に封絶処理を施し、 創世級(ジェネシス・クラス) 、『EX、神葬グングニール』をほぼただの杖状態まで押さえ込んでいる。
その第一封印を僕の権限で一つ外す。
25%の力を解放すると、杖から黒い刃が出現したシンプルな槍の姿に変化した。さらに黒い炎、煙のようなモノが生み出され、槍全体から溢れ出る。
『ジュワァッ!』という肉が焼けるような音が響く。
「グゥッ……!」
僕の口からも苦悶の声が漏れ出る。
とはいえ別に槍を握り締めている手のひらが本当に焼けている訳ではない。
火傷……というより呪術によって手のひらを浸食されているイメージに近かった。
レベル9999の僕の手のひら、そして体を、たった25%解放しただけで浸食してくるのだ。
この事実だけで『 神葬(しんそう) グングニール』がどれほどの力を持っているか分かるというものだ。
だが25%の解放だけでは、まだあの小型太陽を防ぐのには足りないと本能で理解する。
すぐさま念話でエリーへと繋ぐ。
「エリー! 『 神葬(しんそう) グングニール』の第2封印解除を頼む!」
『ら、ライト 神様(しんさま) !? あの小型の太陽を止めるため 神葬(しんそう) グングニールを使用なさるおつもりですか? ですが、そんなことをしたらライト 神様(しんさま) のお体が――』
「エリー! 時間が無い! 早く!」
『……ッ!? か、畏まりましたわ!』
僕の怒声に近い叫びに、エリーが慌てて第2封印解除手続きを開始する。
実際、もう小型太陽が目の前に迫っているのだ。
僕が避けたらもう止める手段はなく、エリー達が居る『巨塔』や人種達が住む『 巨塔街(きょとうがい) 』が飲み込まれ灰になってしまう。
この後のことなど考えている暇は無い。
念話を通してエリーの声が響いてくる。
『 魂魄封絶(こんぱくふうぜつ) 第2限定解除! コード、「 無神論(バチカル) 、 愚鈍(エーイーリー) 、 拒絶(シェリダー) 、 無感動(アディシェス) 、 残酷(アクゼリュス) 、 醜悪(カイツール) 、 色欲(ツァーカブ) 、 貪欲(ケムダー) 、 不安定(アィーアツブス) 、 物質主義(キムラヌート) 」……邪悪なる大樹よ流転を正し罪科を示せ―― 神葬(しんそう) グングニール!』
「ぐぅうぅッ――!」
エリーの封印が解放され、 神葬(しんそう) グングニールの穂先が2つに分かれ蛇のように絡み合い、そして最後に禍々しい二叉の槍の形状へと変化する。
これが『 神葬(しんそう) グングニール』の50%の力を解放した状態だ。
黒い炎、煙のようなモノが僕の腕だけではなく、肩を昇り、右顔を覆い尽くす。
右目が赤く染まり、半身がまるで自身のモノではないかのような錯覚を抱いてしまう。
この状態を長く続けていたら、僕自身の自我が持たない。
僕は迫り来る小型太陽を黒と赤目で見据えて、自身を浸食しようとする槍を投擲する。
「全てを飲み込め! 神葬(しんそう) ! グングニールゥゥゥッ!」
投擲された『 神葬(しんそう) グングニール』は槍ではなく、一つの光となり太陽へ直進する……!