軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27話 情報前払い

『ご主人さま、よろしいでしょうか?』

「メラ? ッ!? 『SSR ソーラーレイ』! 解放(リリース) !」

目の前の敵、ダイゴが剣を振るうのを目にして、牽制のため『SSR ソーラーレイ』を解放する。

光線がダイゴを目指し放たれるが、途中でねじ曲がり地面に小さな穴を開けて終わった。

彼はこちらの遠距離攻撃を一切気にせず、剣を振るう。

「ご主人様を傷つけさせる訳ないだろう!」

ナズナ×5人が防御を固めつつ突撃する。

振るった剣によってなぜか先頭に立つナズナの腕が千切れ飛び、肩や頭部に傷を負うが、

「摂理をねじ曲げて傷を癒せ! プロメテウス!」

ナズナの1人が大剣プロメテウスの力を振るう。

同時に傷を負ったナズナ達の傷が一瞬で『無かった』ことになり、そのまま突撃する。

仮にこの状態のナズナを倒したかったら、一瞬で全員を始末しなければ無意味だ。

ダイゴが舌打ちしつつ、近接戦闘を嫌がるように距離を取るため動く。

その間に連絡を取ってきたメラへと返答した。

「メラ、今、こちらは難しい状況にある。用件は手短に頼む」

『ケケケケケケケ! はい、あの、実はミキが一目惚れして亡命してきました……』

「無事にミキを捕らえたんだね。さすが――って、うん? 一目惚れ? 亡命?」

『はい、ミキ曰く、スズは彼女の理想以上の存在らしく……アイスヒートと戦うことなく亡命を希望してきました。スズは嫌がっているようですが、最終的に結婚して子供を産んだり、産ませたり、一生涯を共にするため側に居たくて亡命するとのことです』

「……メラ、ごめん、理解が追いつかないんだけど」

『ケケケケケケケ! 安心してください、アタシもです』

僕とメラが念話で理解がおいつかないやりとりをしている頃、近接戦闘を嫌がり距離をとってちまちまと削ってくるダイゴに、ナズナが痺れを切らす。

ナズナ×5人が声をあげた。

「ちょろちょろ逃げ回って男らしくないぞ!」

「こうなったら、さらに凄いのを出してやる!」

「あたいが、やる気になったら凄いんだからな!」

「そうだ! そうだ! 凄いんだぞ!」

「口を動かしてないで、さっさと鎧を脱ぐぞ!」

最後の1人の声かけに同意すると『鎧パージ!』と叫び、ナズナ達が身に纏っていた鎧が脱げる。

胸当て、ガントレット、足以外の部分が全て脱げて消えた。

兜も消えてしまったので、彼女の長い銀髪が風に流され揺れる。大半の鎧を脱ぎ、防御を捨て速度&攻撃特化に切り替えたナズナの本気攻撃モードだ。

ダメージを受けやすくなった所を大剣プロメテウスの力で修復し、『敵に殺される前に殺す』という速度&攻撃スタイルである。

『いくぞ! ×顔野郎!』

「!?」

ナズナ×5人の姿が消える。

ダイゴが反射的に双剣を交差し、一部攻撃をガードするが……無防備になったダイゴの足が切り落とされ、肩や首に深い傷を受ける。

双剣を交差して一部攻撃を防いだが衝撃まで吸収できず、上空から再び地上へと吹き飛ばされてしまう。

「あたいが本気を出せばこんなもんだぜ!」

「ご主人様やあたい達の仲間に手を出したから、こんな目にあうんだ!」

「調子に乗って悪口言っていないでさっさと止めを刺さないと! 反撃されたらどうするんだ!」

「殺しちゃ駄目だろ? ご主人様があいつから色々情報を抜かないとだし」

「ならさっさと取り押さえ――ッ!?」

致命傷を負わせたダイゴを取り押さえようと提案したナズナ達が、前触れも無く地上へと落下する。

さらに致命傷を負ったはずのダイゴが、切断された筈の両足で立ち、肩や首の怪我も治癒し、剣先をナズナ達に向けていたのだ。

「 己(おのれ) のレベルアップするためだけの獲物の分際で! 舐めるなよ、雌ガキがぁぁぁぁぁあッ!」

ダイゴが激昂するが、それ以上に僕は彼の回復に驚く。

(まさかあの双剣は、ナズナの大剣プロメテウスと似たような能力を持っているのか!?)

だが遠距離攻撃が逸れるのも、ナズナ達の落下もそれでは説明が付かない。

大剣プロメテウスは非常に強力な 神話級(ミトロジー・クラス) の武器だが、何でも出来る絶対無敵の剣ではない。

当然、限界がある。

他者に干渉できるが非常に難しく、下手をすれば反動が大きくやる意味があまりない。

一番干渉しやすいのが自分。

次が自身の持ち物。

次が無機物(石、鉄、地面など)や魔力が篭もった物だ。

遠距離攻撃を防いだり、遠距離に居る他者――ナズナ達を攻撃、落下させるなど大剣プロメテウスでおこなうのはほぼ不可能だ。

なのになぜダイゴはそれらが出来る?

その答えを念話先のメラが答える。

『ケケケケケ! ご主人さま、ミキの言動は理解できないですが、襲撃者の持つ 神話級(ミトロジー・クラス) の武器に関して亡命の前払いとして情報提供を受けました。奴の持つ武器の名は精霊双剣。精霊を使役する剣とのことです』

「精霊……!? そうか精霊か!」

メラの言葉に、目の前の霧がぱっと晴れたような気持ちになる。

大剣プロメテウスでさえ他者に干渉するのは難しいが、双剣の力でおこなったのではなく、精霊を従えているなら話は別だ。

精霊を従えて遠距離攻撃――炎や氷属性の精霊に防がせ、相手に傷を負わせたり、干渉するなら納得出来る。

……しかし、『精霊を従える能力を持つ』だけでミキは『ある意味最強の 神話級(ミトロジー・クラス) の武器』などと言うだろうか?

その謎は次で判明する。

『ミキ曰く、敵の持つ精霊双剣は精霊を従えるだけではなく、この世界に存在しない精霊まで創造することさえ出来るらしいです』

「……存在しない精霊を創造する?」

『例えば見るだけで敵が即死する精霊や不老不死を与える精霊、強運を与える精霊など、使用者が頭の中に描く精霊を創造できるらしいです』

「そ、それは……確かに『ある意味最強の 神話級(ミトロジー・クラス) の武器』と言えるかもしれない」

ミキやダイゴが強気な理由を理解する。

つまり彼が持つ『精霊双剣』は、自分が考える精霊を生み出すことが出来るらしい。

遠距離攻撃を防ぐのも、体を一瞬で治癒したのも、ナズナに傷を与えたり、剣先を向けただけで地上に落下させたのも精霊の力。

それが全てに通じ、全てを叶えることが出来るならば、それは確かに『最強』だ。

「……ちょっと待った。でもそれだけ強い力を持った武器なのに、僕達は誰1人やられていないよ?」

敵はレベル9000の始祖フェンリルを追いつめはしたが、殺害はできていない。

始祖フェンリルが攻勢ではなく、防御に回ったのもあるが、仮にあの双剣がそれだけ万能な武器なら、既に討ち取られているはずだ。

この疑問もメラが答える。

『ケケケケケケケ! どうやら奴は精霊双剣をまだ完璧に扱うことが出来ないらしいです。全ての物事には良い面と悪い面がある――あの双剣は強力な分、扱うのがとても難しいとか。精霊双剣の力を100%引き出すには使用者のレベルが足りていない、とダイゴは考えているらしいです」

メラの返答に僕はようやくダイゴがあれほど必死にレベルアップする理由に納得がいった。