軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9話 レベルアップ作業

「キキキキッ!?」

『巨塔』 側(そば) の原生林。

エルフ女王国方面を背にして、僕達は真西方向の原生林奥地へと向かう。

高いレベルの冒険者でもおいそれとは入れない奥地へ進むと、猿型モンスターの群を見つけて捕らえる。

レベル50前後で、群の数は約30匹だ。

体長約150~180cm。赤い目に加え、なぜか顔以外の腹の部分にも大きな口がある猿型モンスターだった。

なぜお腹にまで口があるのか意味不明だが、モンスターらしいといえばらしい。

僕は『口が2つもあって消化器系統はどうなっているのだろうか』とどうでもいいことを考えつつ、リリスへとうながす。

「さぁ、リリス様、モンスター達はスズの魔弾で身動き出来ませんから、安心して止めを刺してください。ゴールドは万が一に備えてリリス様の側に。ネムムは補助を頼む」

「了解した、主よ!」

「お任せください、ライト様!」

ゴールド、ネムムが忠誠心を示すように声をあげる。

2人にリリスへのガードを頼んだのは本当に念のためだ。

つい先程、約30匹の猿型モンスターがこちらを察知するより早く、『UR、 両性具有(ダブル) ガンナー スズ レベル7777』が敵の位置を特定。

手にしている『インテリジェンスウェポン』のロックから麻痺を付与した魔弾を発砲し、猿型モンスターに気付かれる前にその体の自由を奪った。

かすっただけでもバッドステータスを与える凶悪なスズの魔弾効果を、レベル50前後のモンスターが抗う術は無いだろう。それでも万が一を考えて、2人にリリスを守るよう声を掛けたのである。

返事をした後、ゴールドは盾を手にリリスの斜め後方へ。いつでも割って入り、周囲から奇襲を受けてもガード出来る位置につく。

真珠色の簡易鎧を身につけ、頭にはティアラ、一定以上の物理・魔術攻撃を防ぐ指輪などを装備しているリリスは、場が整ったのを感じて恐る恐る猿型モンスターへと近づいていく。

ネムムは、風属性が付与されたレイピアを両手で握りどうすればいいのか戸惑っているリリスの側へと移動し、優しい声音でうながす。

「ご安心ください、リリス様。スズ様の力でモンスター達は指一本動かすことは出来ませんので、反撃を心配する必要はありません。またそのレイピアには風属性が加えられているので、直接モンスターを刺す必要はありません。心の中で念じたり、声に出してモンスターに向かってレイピアを振れば風の刃がモンスターを始末します。失敗してもライト様含め自分達がフォローするので、どうぞ軽い気持ちでやってみてください」

「わ、分かりました……こ、これも 人種(ヒューマン) の未来を掴むため……ッ」

リリスは 人種(ヒューマン) 王国の第一王女だ。

自らの手では虫一匹殺した経験も無いだろう。

にもかかわらず見た目凶悪な体長約150~180cmのモンスターをレベル上げのため殺そうとしているのだ。

心理的に辛いのは当然で、彼女の顔色も青い。にもかかわらず、 人種(ヒューマン) の未来のためモンスターを倒そうとする姿はけなげとも言える。

「か、風よ、き、斬れ!」

「キギィッ!」

リリスが、手にしている 幻想級(ファンタズマ・クラス) のレイピア『 嵐の刃(ストームエッジ) 』を振るう。

風属性の攻撃や防御、さらに付与等含め色々なことが出来る 幻想級(ファンタズマ・クラス) の武器だ。

遠距離攻撃も出来て、いざと言う時は防御にも使え、レイピアのため重量が小さく女性でも扱えるメリットがあった。

……逆に言えば風属性しか操れない上に攻撃力が 幻想級(ファンタズマ・クラス) にしてはイマイチなため、僕達的には物足りない武器とも言えたが。

『 嵐の刃(ストームエッジ) 』から出た風の刃が、猿型モンスターの胴体を真っ二つにする。

「ヒィッ!」

リリスが自身のおこなった結果を目にして、貧血を起こしたのか腰が抜けてその場に倒れそうになる。

ネムムがすぐさま手を回し、リリスの体を受け止めた。

「大丈夫ですか、リリス様? 顔色が良くないですが……」

ネムムはリリスの顔色を目にして、心配そうに声をかける。

初めてモンスター……生き物を手にかけ、大量の血、臓物、臭いに衝撃を受けたようだ。

両手にしている『 嵐の刃(ストームエッジ) 』が手の震えに合わせて揺れた。

だがリリスは弱音を吐かず、王族らしい気丈な態度を取り続ける。

「か、体を支えてくださってありがとうございます、ネムム。わ、私なら大丈夫ですから、続けましょう」

「……リリス様、一度に全部を倒す必要ありませんよ? この程度のレベルのモンスターなら、回復魔術かポーションを使わない限り麻痺は自力では解けません。なので時間を掛けて倒してもいいですし、別のもっと倒しやすいモンスターを捜してもいいのですから」

「ライト様もお気遣いありがとうございます。ですが、折角、皆様が見つけ、身動きを奪ったモンスターですから、ちゃんと倒します。それに今も苦しんでいる民の事を考えればこれぐらい何でもありません……ッ」

僕の労りに、青ざめた顔で強がった台詞と笑みを返す。

(本当にこの人は本気で 人種(ヒューマン) の未来を手に入れるために頑張っているんだな……。少し空回りというか、頑張りすぎなところはあるけれど。本来なら王女様という立場で安全な位置にもいられるだろうに)

リリスが口先ではなく、自らの手でモンスターを倒してでも進もうとするその姿に、僕だけではなく、その場に居るスズ達も幼子を見守るような気持ちを持つ。

僕は笑みを浮かべつつ、彼女を労る。

「分かりました。では続けましょう。ですが、無理をせずリリス様のペースでモンスターを倒していきましょうね、時間はまだまだあるのですから」

「ライト様のお心遣いに、本当に感謝しかありませんわ」

僕の言葉にリリスが青ざめた表情ながら感謝の笑みを浮かべた。

一方でスズに軽く視線を向け『SR、念話』で指示を出す。

(血の臭いで集まる他モンスターが居たら、彼女に気付かれないように無力化しておいてくれ)

(こくり)

スズが無言で頷く。

彼女の技量なら、リリスに気付かれる事なく、血で集まるモンスターの無力化も難しくない。

下手に気付かれて、彼女が気に病むのを防ぐための処置だ。

――こうして僕達はリリスに付き合いレベルアップをおこなう。

リリスのレベルアップは始まったばかりだが。

☆ ☆ ☆

――ライト達がリリスのレベルアップを手伝っている頃。奴隷達に混じって1人の少女が『巨塔』に保護される。

「助けてくださってありがとうございますぅ。ミキィ、とっても嬉しいな」

甘い毒のような声音で、非常に美しい少女が感謝の言葉を告げたのだった。